繋がる世界
深い森の中、タツミは太い大きな木の下で目を覚ました。
ここは日本なのだろうか?それどころか地球なのか?
何故こんな場所で寝ていたのか。目を覚ます以前の記憶が無い。
今覚えていることは、雨宮タツミ、18歳、ごく普通の高校生、それぐらいだ。
一体何故こんな場所で眠っていたのか。何度考えても答えは出せなかった。
「あの〜?」
ピピピッピピピッピピピッ
部屋の中に携帯のアラーム音が鳴り響く。
タツミはまだ眠気が取れない上半身をのっそりと起きあがらせるとそこは先程の深い森の中とは違う情景、夏休みを利用して遊びに来ていた姉のアパートのリビングだった。
「…そうか、寝る部屋無いからって昨日はリビングのソファーで寝させられたんだ。」
タツミは寝起きの半身を起こし、先程の夢を思い出した。
「さっきのは夢だったのか。やけにリアルな夢だったけどな。まあ、あそこまで深い森がこんなビルの並んだ街にあるはず無いか…」
そう言いタツミは、ソファーから起き上がり背伸びをすると台所へ向かった。
「うわ、何もないか…。姉ちゃんも仕事だし、仕方ない…せっかく都会に来たんだし散歩しながら何か調達してこよう」
タツミには両親がいなかった。まだタツミが小さな頃、とある事故に巻き込まれそのまま2人の子供を置いて他界してしまった。
その後は剣の道場を営む祖父母の家に引き取られたが、今は通っている高校が夏休みで一人暮らししている姉のアパートに遊びに来ていた。
「さて、ビルの森への冒険といきますか」
しかし、アパートの玄関を開け太陽の日差しを浴びたタツミは思わず意志が揺らぎそうになる。
「熱い…予想以上だな。都会め…。でも、家に居たってする事もないか。仕方ない…」
タツミは食料を求め、都会独特の熱を持ったアスファルトの道を歩いていった。
タツミがそれを見つけたのはそんな道を進んでいる時だった。
昼日中の太陽光がギラギラと街を照らしているのに、奥へ奥へと並んだビルに光を遮断されて、薄暗く人を寄せ付けない力を持つ裏道をタツミは見つけた。
「なんだここは。いかにも出そうな場所だな…。」
そう言いながらも怖さよりも好奇心が勝ってしまい、立ち止まったタツミはその路地の奥に目をやってしまう。
よく見るとそのビル群は、今は使用されていない廃ビルのようだ…。
タツミの足はその闇に吸い込まれるよう奥へ進んでいった。
「涼しい場所だけど暗すぎるし、道も結構奥まで続いてるんだな…。携帯も圏外だし、ここは本当にさっきまで歩いていた都会なのか?」
闇は思ったよりも深く、これ以上進むのは危険だと直感したタツミは踵を返そうとした。
だが、踵を返そうとしたタツミの視界に2つの影が写った。
「今のは…人影?足音も聞こえたし、幽霊…では無いよな?」
関わるのは危険と分かっていてもタツミの足は一歩ずつ進んでく。
「何か、女の人が追いかけられていたような。こんな場所で何を?…ただ事では無さそうだ。仕方ない、大声でも出せば変質者だって逃げていくだろう…」
携帯は使用出来ない、助けを呼びに行く時間もない。そう判断したタツミは2つの影が向かった方向へと走り出した。