表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

第八部 制度の外側にあるもの 第一章 v16の問い

 三十一歳の夏、v16の作業が本格的に始まった。


 v15までの乖離マップは、数字だった。制度が記録した数値と、現実の人間の状態の間にある距離。それをデータとして可視化してきた。


 v16には、言葉が入る予定だった。ハシモトさんの親たちの言葉。数字にならない経験の記録。


 しかしデータを集めるうちに、レンは別の空白に気づいた。


「ソラ、乖離マップのデータで、障害を持つ人間の記録はどのくらいある」


「乖離マップv15までのデータに、障害の有無を直接示す変数は含まれていません。ただし——制度の標準認定試験のスコア分布と、他者からの評価点の分布を重ねたとき、特定の層に空白があります」


「空白がある」


「平均よりスコアが低く、かつ評価点の上昇率も低い層がある。その層の内訳を制度のデータと突き合わせると——障害を持つ人間が集中している可能性があります」


「可能性、というのは」


「制度のデータに障害の情報が直接紐付けられていないため、確定できません。ただし、別の経路から見えてくるものがあります」


「どんな経路」


「人工動作義肢具の配給記録。臓器補助医療の利用記録。AIアシスタントへの精神支援機能の付与記録。これらを重ねると、同じ層が浮かび上がります」


 レンは少しの間、画面を見た。


「乖離マップが、ずっとその層を見ていなかった」


「見えていなかったというより——見ようとする変数を設定していなかった、です」


「俺が設定しなかった」


「そうです」


 それは、ハシモトさんとの対話のときと同じ感触だった。届かなかったのではなく、向けていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ