狼男は裕福な狼男に進化した!
「えっ?」
思わず口から声が漏れた。
なんで俺が選ばれたんだ?グクラスとか言う鎧男の方が強そうだし、何よりそこら辺にいる狼の生首被ったやつよりも信頼できるだろう。
「なんで僕なんですか?」
ここは素直に聞くことにした。こっちの方が今後の王様との関係性的にもいいだろう。
「おや?グクラスが言ってなかったか?」
「はい。何も聞かされてません。」
「そうか。なら私の口から直接言おう。
さっき言ったように頼むのは、モンスターの討伐だ。なぜ私に仕えている者たちではなく、其方を選んだか。それは………」
体が震える。もしかしてこれから俺は早くもこの世界の真理に気づいてしまうのではないか、とも思ったが、そんな心配は一瞬にして無になった。
「そっちの人間だからだ。そっちの人間とはこの世界に存在するモンスターを倒すために存在しているんだ。これは私の口からしか言うことはできないルールになっていてな、私はこれを今、言うべきだと思い其方に伝えている。これを踏まえて、どうだ?依頼を受けてくれるか?」
ちょっと待て。ツッコミ所が多すぎる。そっちの人間って人造人間だったってこと?
それに、王様からしか言えないルールってなんだよ。頭の中でひょいひょいとツッコミが出てくる。
しかし、俺が出した答えはもちろん……
「受けます。ラルディア様の期待に応えられるように頑張ります。」
「本当か!?分かった!いい報告が来ること楽しみにしておくぞ!」
「任せてください!ラルディア様!」
…………
……………………
……………………………………
「ではご武運を祈りしております。」
そう槍を持った鎧男に言われ、20mの扉から外に出る。外は眩しく、国語の読み取りで言うところの希望を指しているであろう。しかし、そんなことよりも………
「50万エレクゲットだー!」
こっちの方が希望に溢れている。何より借金返済の未来が見えてきたことが希望すぎる。
エレクを確認するために、トリセツを開く。すると、所持エレクが50万になっている。そしてその隣には交換と書いてあり、押してみたら100エレク吸い取られて、借金が1円減った。これで心配していたすぐに100エレクが1円に変換されることは無いと分かった。
しかし、王に口座みたいなものを教えた訳でもないのに、なぜ所持エレクが増えたのだろう?
あの鐘といい、王といいなぜ俺の口座を知っているのだろう。どうやったんだ……………?
「それは言わないお約束か。まぁそんなことより今は、貰った物を確認するか。」
王に教えてもらったことや、貰った物を整理する。まず、今までトリセツと呼んでいたものがプリカースと言うと分かった。
そして王様からレクティーと言う物を貰った。これはプリカースを拡張する物で、鍛冶屋ですることができる。何やらラルディア王によると、モンスター図鑑や、スキルポイント振り分け機能があるらしい。
「鍛冶屋と商店、先にどっち行こうかな。」
地図を開く。距離的にはどちらも同じくらいだ。王様に鍛冶屋に行けと言われたし、そっちに行くのが普通だろう。しかし、戦いで入手したドロップ品を早く売って、金持ちに……いや、エレク持ちになりたい………。
「よっしゃ!エレク持ちになってくるか!」
そう独り言で喝を入れる。しかし、その瞬間頭の中を1つの疑問が横切った。
今何時だ………?
体感時間は1時間ぐらいだが、ゲームでは体感時間と全然違うことはよくあることだ。ゲームと似たこの世界もまた同じだろう。
そう思い、トリセツ……もといプリカースを開く。
セクディアに入るまでの戦いに結構時間かかったからな。もっと過ぎてるかも……
[現在時刻…15:47]
なるほど………。猶予はあと、1時間とちょっとか。ならまだ大丈夫だな。戻るのは何もなければ、セクディアを出てからで良いだろう。
ということで、気を取り直して商店に向かって歩く。
まぁもちろん歩く道は開かれていく。これってさっきみたいに通報されんのかな?
そのまま、ルンルン気分で作られた道(というか、自分で作った道)を歩いていると、さっき声をかけてきた巨漢が隣の建物に入っていった。
その建物は2階建てのよくあるような、1階に店があるものだった。2階には衣服が干してあり、おそらく人が住んでいるのだろう。
時間的にも早く商店に行った方がいいのだろうが、優柔不断な俺には難しい選択だ。さっき急に声をかけてきた巨漢について知りたい気持ちと、早く商店に行って、エレク持ちになりたい気持ちが脳内裁判をする。
{さっき時間を確認したように、今商店に行かないと、この後が面倒だ!だから、絶対にここで惑わされずに、商店に行った方がいい!}
{いや、ここで行かなかったら、それこそもう次いつ行くんだよ!それにあの巨漢以外に優しそうだったし、そっちの人間について何か教えてくれるかもしれないだろ!}
{いやいや、絶対に商店に行った方がいい!}
{いやいやいや、絶対に巨漢の建物に行った方がいい!}
{いやいやいやいや、絶対に……
{いやいやいやいやいや、絶対に……
ドン!ドン!
裁判長がガベル(トンカチみたいなやつ)を叩いた。
判決!「エレク持ちになりたい」有罪!
脳内裁判の結果、この店に入ることになった。
ドアには『心を込めて営業中』と書いた看板があった。
「居酒屋臭いな……」
前世でもトップレベルで嫌いだった、飲み会の記憶が蘇ってくる。俺は酒が弱かったから、よく潰れて阿部先輩に家まで送ってもらったはいいものも、気持ち悪すぎて、次の日1日中吐いていた。それに、俺は会社の人達とそこまで仲良くしてなかったら、少し気まずい雰囲気だったし………
だめだ。これ以上言ってもキリがないし、何より吐き気が蘇ってくる。
「ふぅ」
息を吐き、心を落ち着かせてドアを開ける。居酒屋でないことを祈って。




