おやすみ狼
ちょっとだけ短いよ
彼女の名はメツネと言う。両親を早くに無くし、親戚もおらず、セクディアの町中で野宿していたところを宿屋の店主に拾われた。毎日セクディアの宿屋の心優しい店主と一緒に共に働いて、一緒に暮らしている。
仕事自体はそんなに難しいものではなく、マキナーレという機械が受付などはしてくれるため、主に接客や部屋の清掃などである。そんな生活をしていたある日───
狼の頭をした男であろう人が入ってきた。
「イらっしゃいマセ!」
マキナーレが挨拶をする。すると、その狼男がマキナーレに近づき宿泊プランを見始めた。すると狼男はしばらくフリーズして、
「金ね゛ぇ゛─────!」
急に叫んだ。店中の人達の体がビクッてなり、全員がその狼男を見る。もちろんメツネも例外ではない。
店中がザワザワしだす。めんどくせぇと思いながら店主と目配せをする。
{どっちが対応しますか?}
{こっち距離あるし、今から清掃だからメツネ行ってよ}
{えー了解です}
目配せの結果メツネが行くことになった。恐る恐る近づき、声をかける。
「あの……お客様。フロントで大声で叫ぶのはご遠慮いただけますでしょうか。あと可能でありましたら、可能だったらでいいのでその狼の頭は取っていただけないでしょうか。」
ビビってはいたが、しっかりと店員として注意をした。
「すいません。ちょっとお金がなくてですね……つい。あと、この狼頭は一回つけたら取れなくなっちゃって。」
「あっ、そうなんですね。」
取れなくなったということは装備ということだろう。それに今空中を指で押している。おそらくホログラムを使っているのだろう。ということは……
「もしかしてそっちの人間ですか?」
「はい。そうみたいです……。」
「もしリスポーン地点を変更するだけなら無料で大丈夫ですよ。」
そう言いながらメツネは右側にあるソファみたいなベッドを指差し、驚いた顔をしている(実際には頭は見えてないが、雰囲気と見た目からして驚いている)狼男に続けて言う。
「あちらのソファのようなベッドはスティーレと言いまして、あちらでそっちの人間が寝ると、10秒ほどでリスポーン地点をあちらにあります待合室に変更することができます。」
「リスポーン地点ってなんですか?」
「そっちの人間が亡くなった場合、最後のリスポーン地点に戻ります。」
「じゃあ…それでお願いします。」
「はい。かしこまりました。」
そう言い、狼男をスティーレへ案内する。
「すいませんね。この狼頭一回つけると取れない設定になってるらしくて。」
「いえいえ、大丈夫です。」
会話をしているとすぐにスティーレについた。
「ここに横になってください。」
「はい。」
狼頭は靴を脱ぎ、ベッドに上がった。
「靴は脱がなくていいです。」
「あっ、はい。」
もう一回靴を履き、今度こそ横になり、
「おやすみなさい。」
と言ってきた。
「えっ……?寝るようなものではないですよ。」
ベッドから起き上がると
[リスポーン地点をセクディアに変更しました。このベッドが破壊された場合、リスポーン地点は前の場所に戻ります。]
と目の前に出てきた。
「某マイ◯ラと同じ設定だな……。」
「どうかしましたか?」
「いえ、何もありません。」
これで宿屋のやることは終わったし次はどこに行こうか。
「この後どこに行ったらいいと思いますか?」
「商店とかどうですか?お金がないならそこで物を売るといいと思います。」
「ありがとうございます。」
そう言い、出口に向かう。そして、
「ありがとうございました!失礼します」
と言って宿屋を出る。
「さて、商店はどこだ?」
マップを見ると、町の反対側にあった。そこに行くまでにどこか行けるところがあるかを探していると、
「中央施設か……。」
なるほど。ラノベとかにあるギルド的な感じか?一旦そこやってから商店に行くか。そう心に決めマップを見ながら中央施設に向かう。
さっきから感じてはいたが、なぜか俺が通る道が作られている気がする。
「あの……すみませ…
「キャ───!」
「いや……あの…
「不審者だ!騎士様を呼べ!」
は?なんで?………暗黒の人狼頭か!クソッ!あの狼一生呪ってやる。
どうするか?逃げるか?とりあえず【俊敏体】を起動するか?いや、ここで逃げる姿勢をとるのは凶だろう。じゃあどうしたらいいんだ?
「動くな!」
上から声がした。状況からして一瞬でその言葉が俺に向けられたものだと分かった。
上からバカでかい銀色の鎧を着た人間が降ってきた。剣を片手に持ち、もう片方の手で盾を持っている。
「お前は何者だ?名を名乗れ!」
銀色の騎士に問いかけられた。
言うべきか?だが、もし言ったらどうなるのかが想像もつかない……
そう考えている間に
「お前、もしかしてそっちの人間か?」
「あっ……はい。」
さっきからずっとそっちの人間が出てくるが、そんなに重要なことなのか?
「皆の衆、よく聞け!そっちの人間ということだ!」
えっ?何?もしかして取り押さえられる?俺の異世界人生これにて完……?
「すみません。先程通報がありまして、来たんですけど、まさかそっちの人間だったとは。今から中央施設に案内します。」
騎士が腰を曲げて申し訳なさそうに言ってきた。
えっ!?俺、そっちの人間で良かった…………のか?
まぁ生きているんだし丁度行きたかった中央施設に案内してくれるんだ。このまま着いていこう。




