神ゲーにしてクソゲー
◆
「よし!サラダも作り終わったし、玲哉呼ぶか。」
ゲームしてるだろうし、部屋入んない方がいいか。
スマホで管理アプリを開くと、RPG:闇と光の幻想曲をしていると出てきた。
「あれやってんだ。めずらし。メッセージ送ろ。
差出人はお母さんにして……ご飯の…準備できたわよ!っと。」
ハンバーグレンチンしとくか。
◇
「まじか………」
目の前に出てきた文字を見て思わず声が溢れる。
今からがいいとこなのに。
ちょっとだけ戦ってくか。
メッセージに返信しようとしていると気づいたらムービーが終わっていた。
「えっ───────────
城の前に戻った。
あれ?俺死んだ?
まだ敵の見た目すら見てないんだけど。
なるほどね。このボスそんな強ぇんだ。
ぜってぇ倒してやる。
ログアウトをし、VRゴーグルを外す。
ベッドから起き上がり、感覚を取り戻しながらドアを開ける。
リビングに行き、椅子に座る。
「もう食べていいよー、この前病院行った時に作ってたハンバーグをレンチンしたから硬いかもしれんけど。」
「大丈夫、見た目からしておいしそうだから」
そう言い、箸を取って手を合わせる。
「いただきます。」
箸でハンバーグを口に入れる。
あと7時間ってことは大体6時半ぐらいに行けばいいのか。ってことはまだ時間に余裕あるな。
とりあえず飯食い終わったら不協和音の続きするか。
ハンバーグとサラダを食べ終え、お茶を飲み、部屋に戻る。
ベッドに飛び込み、ベッドの上に置いてあるVRゴーグルを寝っ転がってつける。
さっきの感覚を取り戻しつつ、いったんこける。
「あっぶねぇ」
ある程度既に体が慣れていたから、手を出すことができたのだろう。
ゆっくりと慎重に歩き、本丸に入る。
さっきと同じようなムービーが流れ、体があまり動かせなくなった。
来る!
次こそしっかりと目の前に降ってきた物体を凝視する。
すると、グロい肉がでっかいカマキリの形になった。
「うわっきもっ!」
頭がデカく、色が赤黒い。そして、そいつの体の周りに紫と黒を混ぜたみたいな色のオーラが纏わりついている。
目の前に大きく文字が現れ、それと同時に体が動かせるようになった。
[終光を喰らう者 ノクス・デヴォラ]
「えっ………………絶望…………」
RPG:闇と光の幻想曲はクソゲーである。
これは数多くのプレイヤーが辿り着く最終的な答えだ。
RPG:闇と光の幻想曲は神ゲーである。
システム面だけ見ればそれは満場一致だろう。
このゲームはフルダイブ型VRゲームだ。
それは日本では初のものであり、10年以上の時をかけて作られた。
現在、フルダイブ型VRゲームはただこの一つであり、このただ一つのゲームのためにこのVRゴーグルを買うことになるのだが、それでも高いのに多くの人が発売当初は手に取っていた。
しかし、今では
「ファミコンの方が面白い」
「感覚だけリアルでゲームバランスがカス」
「このゲームを最初に考えた奴の顔面50回は殴る権利あると思う」
とかネットで探せばいくらでも出てくる。
だが、だからこそこのクソ強ボスを倒したくなるのがゲーマーのサガってものだ。
その結果一部のコアなファンによって攻略法が探されているが、今では「プレイヤー次第」ってことに落ち着いた。
つまり、クソゲーの頭おかしい強さのクソボスにフルダイブ型VRゲームに慣れてない俺が挑むと…………
「クソッ!」
また死んだ。
これで6回目?毎回この本丸前のセーブに戻されて、そして入ってすぐ殺されて戻っての繰り返しだ。
1回目は攻撃をしようとした瞬間に首チョンパ。
2回目はとりあえず攻撃しようとして向かったらサイコロステーキに。
3回目は一旦相手の攻撃を見ようとして盾を構えた瞬間盾ごと胴体チョンパ。
4回目は…………(以下略)
「クソボスじゃねえか。」
このボス戦前までは結構頭おかしい強さのボスがいたけど、倒せなくはなかった。
けど、今回は倒せる未来が見えない。まずどうやって攻撃を当てればいいんだ?
とりあえず本丸に入り、ムービーをスキップしてすぐさまノクス・デヴォラに突っ込む。
「ここだ!」
こいつはおそらく攻撃をする直前に一瞬、ほんと1フレームぐらいだけ体がガクつかんだよな。
そこを攻め──────
「あーっクソッ!行けそうだったのに!」
多分この弱点は間違ってないと思うけどな………
果たしてそれは真実であった。
確かにノクス・デヴォラは何の攻撃でもその直前に1フレームだけ固まる。
それはわざとそう作られているのではなく、リアルな動きしかないゲームの中にありえない速度と、ありえない強さ、完全に物理法則を無視した動きを入れることによってできたいわゆる弱点なのだ。
実際このことは調べたら出てくる。不協和音をプレイしている人にとっては有名な話だ。
どうしたらあいつを倒せるんだ?
攻略サイトを見るか?
いや、それは負けだな。一発攻撃を入れれたら攻略サイトを見るか。
そう決め、城に飛び込む。ムービーをスキップして、武器を構える。
「ここ!」
ノクス・デヴォラが固まった瞬間を見て、斜め上へと高く飛ぶ。
今履いてるズボンの効果で約10m飛んだ。
「ブチョン!」
「イッテーッ!!!!けっど………!右腕が斬られただけだ!まだ左腕が残ってるんだっ…………よ!」
スカッ!
「あっ………!」
「ブチャーン!」
「クソッ!」
また死んだ。
今回どうなったかというと、ノクス・デヴォラのカクつきを見てすぐさま避けた。その時に右腕が斬られたけど左腕に持ってた盾を捨て、新しくインベントリから剣を取り出してそれで攻撃しようとした。
ノクス・デヴォラに向かってその剣を振りかざしたら綺麗に避けられて、そのまま微塵切り。
「あーあいつクソボスだろ。今日中に終わるか?」
時間を確認する。
「まだ2時か………一発気合いで入れるか。」
城へ再び飛び込む。
【終光を喰らう者 ノクス・デヴォラ】
空より生み出された悪の感情の塊。
それは何よりも大きく、ただ何よりも強い。
ちなみに不協和音でボスを倒したことがあるのは世界で3人だけです。(プレイヤー総数現在約534万人)
玲哉がぶっ倒れたことを機にゲームしてるかアプリで見て、してなかったら部屋に行くって感じになりました。




