靄に埋もれる真実
久しぶり
白いもやに包まれている。
転生の時に来たことがある場所だ。
「俺は死んだのか……?」
「死んでないよー!」
「うわっ?!」
顔の前に急に上からあの時の鐘が来た。
「じゃあなんでここにいるんですか?」
「ここがどこか分かるの?」
「そりゃ分かりますよ!あなたが勝手に落とした後に勝手に連れてきたんでしょ!」
「あっ………そうでしたね。」
「なんか雰囲気変わりました?」
明らかに前世の時と雰囲気が違う。
なんか前はもっと面倒くさいエリートみたいだったのに、今はただのバカみたいになってる。
「君の思い違いじゃない?僕達の寿命は君達よりもうんと長いんだよ。多少の性格の変化ぐらいあるでしょ。」
「僕達って鐘っていっぱいいるんですか?」
「そうですよ。僕だって兄弟がいますし、妻もいますよ。基本的には皆、僕と同じような仕事をしてます。」
「へぇ………で、俺はなんでここにいるんですか?早く答えてください。」
「まぁまぁまぁ、落ち着いて。」
こいつ何言ってんだ?今俺は死んでないとはいえ、ここにいるんだろ?
だったら早く戻る方法とか何か言ってくれんかな?
「まず、君は今、天と現世の間にいるんだよ。体は死んでないけど、君が死のうと思うならすぐに死ねる感じかな。」
「じゃあ早く現世に戻してくれないですか?」
「あれ?君が望んだんじゃん。もう死んだ方がいいって思ったんでしょう?だから戻さなくていいと思ったんだけど………違った?」
確かに…………じゃあこれは俺が望んでいるものなのか………?
「まぁ戻りたかったら戻ってもいいよー。別に転生させてすぐに殺す趣味なんてないから。」
別に戻ってもいいか。これから目標を見つけるためにテアレに行くのも悪くないし、何よりあんときはちょっと体調が悪くて頭おかしくなってただけだからな。
「あっそうだ!今回みたいなことがまたあったらいけないから、小学生の間は、学校がある日はテアレに行っちゃだめだよ。」
「そういや俺の体はどうなってるんですか?」
「血管神経性失神……?血管迷走神経失神だったかな?なんかよく分かんないけど、そんな感じの名前のやつになってぶっ倒れたよ。けど、なんか全然大丈夫らしい。」
「血管迷走神経性失神だろ。」
「そう!それ!なんで知ってんの?」
「前世で親父が一回それで倒れてんの。俺が病院に連れて行って一緒に診察聞いたから覚えてんの。」
「なるほどね」
「で、話戻しますけど、なんで休みの日以外行っちゃダメなんですか?」
「ぶっ倒れたからだよ。片方の世界に行ってる間はもう片方では体は休まってるけど、脳はフル稼働なんだよね。だから負荷がかかりすぎて倒れたってわけ。」
「よく寝かせて、倒れないようにするために行かせないってことですか?」
「そうそう。現実世界の方を中心とした生活の方がしっかりと寝れるでしょ。」
「つまり俺からテアレを奪うんですか?」
「うん!その異世界のことをテアレって言うの?」
「えっ…………あっ……はい………。」
え?嘘だろ?俺からテアレを奪うなんて、生き甲斐を奪うようなもんだろ。
やっぱ死んだ方がいいのかな………?
「一ついいこと教えてあげる。あのテアレ?異世界には5体のソーラカモンスターっていう唯一無二の最強モンスターがいるんだよね。そのモンスターってどうやったら戦えるかとか何も分かってないんだよ。だから、そいつらを倒すのを目標にしたらいいよ。」
「なんで俺が目標がないのを知ってるんですか?」
「まぁそういう職業だからねー」
「やっぱこの前と言い方変わりましたね。」
「だから気のせいだって。」
「まぁこの話は一旦置いといて、そのソーラカモンスターってなんですか?」
「何者かもよく分かってないんだよね。だからこそ目標にはもってこいでしょ。」
なんかよく分かんないけどソーラカモンスター?
何それかっこよ!
「鐘さん。俺、目標できたわ。
そいつを5体とも倒す。そしたら、俺の人生はハッピーエンドだ。」
「いいねぇ、その意気込み。じゃあ頑張ってー!」
「ちょっと待った!小学生の間、学校がある日は何すればいいんだ?」
「フツーに小学生らしく遊んだり、ゲームしたりしたら?僕が異世界に行っていいときになったら、報告しに行くからそれまでフツーの生活頑張ってー!」
「ちょっと……!勝手に会話終わらせるんじゃねー!」
「バイバーイ!」
目の前が白いもやに包まれ、光が強くなった。そして、下に落ちて行くような感覚になった。
「話を聞けや!このクソやろ──────
白い天井が見えた。
「ハッ!?」
ここは?と思い、勢いよく上体を起こした。
「息子さん、起きました!」
「よかったー起きたのね!」
「玲哉!心配したぞ!」
声のする方を見ると、そこには両親と白衣を着た人が2人いた。
周りと自分の状況からして、ここは病院だと言うことはすぐに分かった。
「ここって病院?」
「そうよ。玲哉がベッドで倒れてて、救急車で運ばれたのよ。」
「ああ、知って…………そうだったの………?」
危ねぇ………
思わず鐘との会話の内容をこっちに打っ込むとこだったわ…………。
「もう大丈夫なんですか?」
お父さんがそう医者らしき人に聞くと、その人は俺の近くに来て、顔を見つめた。
「おそらく大丈夫ですね。そこまで大変な症状でもないので、明日には退院できると思います。」
親は「明日か……」とか「ほんとに大丈夫なの?」って言うような感じでざわついているが、俺としてはもう早く夏休みになってほしい。
ただ、それだけだ。
もし、あの鐘の言ってることが本当だとしたら、夏休みの内にあのソーラカモンスター?を探しに行かないと、他の土日じゃ倒すまでいけないだろう。
それに、テアレとこっちの時間は連動していると思うから、ゲームみたいに途中で放置とかもできないだろう。
とりあえず今日は金曜だし、明日と明後日でテアレを進めないといけないんだが、もしかしたら学校がある日も行けるかもしれないから、そこは要確認だな。一旦、このまま病院はやり過ごすか。
「また検査するので連れて行きますけどいいですか?」
「はい。ついて行っていいですか?」
「どうぞ。」
お母さんと医者がそう話していたが、しばらくして医者がこっちに来た。
「歩ける?ぼうや。」
「歩けると思います。」
「じゃあ、手持ってあげるからゆっくりベッドから降りようか。」
なめとんのか、この野郎。それぐらい1人でできるわ。
なめくさってるクソ野郎を見返すために、1人でヒョイっとベッドから軽々と飛び降りた。
「大丈夫?!」
その声が聞こえるよりも先に、俺は膝から崩れ落ちた。
「まだ起きてちょっとしか経ってないんだからそんなことしたらまた倒れちゃうでしょ。」
そう言いながら、医者は俺の体を支えていた。




