熱い男(物理)の調理!
ドアを開けると、高級レストランが広がっていた。
右側には高そうなワインが大きな棚にずらりと大量に置いてあった。奥の方の厨房でさっきの巨漢らしき人が調理人の見た目で、料理をしている。
丸いテーブルが5つぐらいあり、前世では行くという選択肢すら出てこないような場所だった。
「あっ!さっき会ったそっちの人間の方ですよね?」
奥の厨房にいる巨漢が声をかけてきた。
「はい。そうですけど……。覚えてるんですか?」
「もちろんですよ!そんな狼男の人なんてあなたぐらいですから。」
「そうですね。」
苦笑いをする。もちろん相手も苦笑い返しをしてくる。俺は前世の経験から、苦笑い返ししてくる人は全員いい人と知っている。この巨漢は恐らく、というか話していて分かったが、確実に優しい。
「結構噂になってるんですよ。ここら辺で二足歩行の狼が出た!って。」
なぜか望んでもないのに、多くの人から認知されているような…………。
暗黒の人狼頭のおかげか………
「あっそれに、今ネットで急上昇ランキングにのってますよ!」
「えっ!?」
今の驚きは、全国……いや、全テアレの人達にも認知されてんの?っていうのと、このテアレの世界にネットってあんの?というのだ。
これも暗黒の人狼頭のおかげか………。
「あのクソ狼がよ。まじで一生呪ってやる。」
「なんか言いました?」
「なんでもないです。」
この感じ恐らく聞こえたな。けど俺は悪くないし?1回つけたら取れなくなるっていうのが悪いんだし?
「説明を読まなかったお前にも非がある」という考えは受け付けてないから。
「いやー、ネットで取り上げられるなんて有名人ですね。」
見てみたくなった。
プリカースでネットって見れたっけ?と思い、確認する。
「あっホントだ」
検索サイトの急上昇ランキングみたいなところがあった。そして、そこには
[3 セクディアに狼の頭をした男が出没したが、グクラス様にセクディア城に連れて行かれる。]
と書いてあった。
「3位なんですね。」
「なんでそんなに嬉しそうなんですか?」
「いや、注目されるってなんか良くないですか?」
「そうですかね?」
そんな感じで気づいたら談笑をしていた。
しばらく話をしていたがふと、「入ったなら何か食べないといけない」と思い、1番近く席に座った。
「何か食べていくんですか?」
「はい。」
「メニューならそちらの番号をホログラムに打ち込めば、そこから見れますよ。」
そう言われて指差された方を見ると、Wi-Fiのパスワードみたいな文字が書いてあり、そっちの人間のお客様専用とあった。
それを打ち込むと、メニューがでてきた。
[そっちの人間のお客様限定メニュー]
と大きく出てきた。他にも色々と見たが、それが一番気になったので、限定メニューにすることにした。
「すみません。このそっちの人間のお客様限定メニューをください。」
そうプリカースを指差して言った。
「はい。限定メニューですね。あと、ホログラムは他の人には見えないので、私からしたらあなたは今、何もない空間を指している人に見えるんですよ。」
「そうでした。すみません。」
やっぱり、見た目に反してと言ったら悪いが、この人、めっちゃいい人なんだよな。
そう思っていたら、あの巨漢が厨房に行った。
この待ち時間に現在時刻を確認することに。
「現在時刻…16:14」
あと45分か。まだ大丈夫だな。この後商店に行って、鍛冶屋に行くけど、そこまで間に合うだろうか……?
最悪時間が来たら、さっき王からもらった貰ったお金を使って、宿屋で泊まって、その中で現世に戻るか……。
そうやって、どうしようか。と頭を悩ませていると、後ろから熱を感じた。
振り返るとそこには、炎に包まれた巨漢がいた。
「大丈夫ですか?」
そう声をかけ、心配になり、席を立って近づくと、
「あー大丈夫ですよ。落ち着いてださい。」
「はい……。わかりました。」
厨房から離れて再び席に座った。それと同時に巨漢は、炎の元であろうフライパンの下のコンロに、油を1Lぐらい入れた。すると、炎はもっと大きくなり、もう厨房のほとんどが炎に包まれた。
「本当に大丈夫ですか?」
心配になり、再び声をかける。
「大丈夫なんで。座っといてください。」
「はい……」
正直見てて、確実に灰すらも残らないだろうと思うほどの炎に包まれた巨漢が生きていてビビり散らかしている。
すると、巨漢が何かをぶつぶつ言い出した。
「これに………サ………去る……なら……伝えし……を………たまえ!」
「何言ってるんですか────
ブォン!
厨房を包んでいた炎が消えた。というか、どこかに行った。
「大丈夫ですか?!」
返事は無かった………
厨房にはポツンと立つ巨漢がいた。焦げていないとおかしい服が真っ白のまま無傷だった。
「どうしたんですか?!返事してください!」
時間にして20秒ほど沈黙が続いた。
この20秒の間、巨漢はフライパンの中身を皿に盛り付け、「フゥー」と大きく息を吐いた。
そして巨漢はこの時間を進めた。
「お待たせしました。そっちの人間のお客様限定メニューでごさいます。」
「あ……ありがとうございます……」
静かな時間が流れる。
俺はこの沈黙を止めるために、そして、この疑問を解決するために声を発する。
「ゴクン」と息を呑み、深呼吸をする。そして───




