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お気に入り小説4

王女様に付き纏われて迷惑しています。ええ。迷惑しています。だから彼女とはきっぱりと離れて、ディアメリアと幸せになります。

作者: ユミヨシ

― お慕いしております。ロイド様。食堂でお昼をご一緒に。お待ちしております -


「ええ?またか?またなのか?」


ロイド・アシェル公爵令息は悩まされていた。

このカフェル王国のプリシア王女に執着されていたからだ。


ロイドには好きな人がいた。

ディアメリア・ジュテル公爵令嬢である。

ロイドもプリシア王女もディアメリアも皆、17歳。

王立学園の生徒である。


ロイドはディアメリアに恋心を告白しようとしていた。

釣書が沢山来ているというディアメリア。しかし、彼女は何故かまだ婚約者を決めてはいない。この王国では18歳までに婚約者を決めて卒業と同時に婚姻へ向かって段取りをするのが一般的だ。

だから、ロイドも婚約者を探している真っ最中である。

家と家との政略で決まる場合もあるが、ロイドは三男だ。どこかへ婿入りする必要がある。

アシェル公爵家は金持ちで事業も順調。婿入り先は自分で探して来いと言われていた。

だから比較的自由に探すことが出来たのだ。

せっかくだからアシェル公爵家の名声を利用したい。

そしてこの顔、一応、美男の部類だ。黒髪黒目だが、自分でもなかなかイケていると思っている。

だからなのか。入学早々王家のプリシア王女に粘着された。


冗談じゃない。プリシア王女は我儘なのだ。金遣いも荒い。そんな王女が付き纏ってくるのだ。


「ロイド様ぁ。プレゼントを下さらない?わたくしは可愛いのですもの。王女ですもの。愛するものにプレゼントをするのは当たり前だわ」


「いやいや、申し訳ありませんが。私と王女様は恋人でもなんでもありません」


「だったら恋人になりましょう。お父様に言えば、あっという間に婚約者にだってなれるわ」


「申し訳ございませんが。私は王女様に釣り合うような男ではないです。恐れ多い」


「まぁなんて。恥ずかしがっているのね」


「いえいえ、恥ずかしがってなどおりません。私は釣り合うような人間では」


「いえいえ、釣り合っておりますわ。わたくしに相応しい身分。美しさ。釣り合っておりますわ」


「いえいえ、釣り合ってなどおりません。私は婿入り先を探しているのです」


「婿入り先だなんて些細な事。お父様にお願いして、王宮に住むといいわ。わたくしと王宮に住んで愛を深め合いましょう」


「あ、授業が始まりますので、それでは失礼しますっ」


プリシア王女とはクラスが別だ。何で自分に執着するんだ?

アシェル公爵家の息子だからか?他にも公爵家はあるだろうに。


ディアメリア・ジュテル公爵令嬢は美しい。

銀の髪に青い瞳の彼女をロイドは好きになった。

勉強も出来て、男女共に人気がある。素晴らしい令嬢だ。


ただ彼女の周りには、彼女に求婚している男性達が囲っていて。

ロイドは近づきたいが近づけない。


プリシア王女が乱入してきて、


「ロイド様。一緒にお勉強致しましょう」


「クラスは別でしょう。王女様。どうか自分のクラスにお戻り下さい」


「それなら、一緒に授業を受けるわ」


「そんな我儘が通るとお思いですか?」


「もう、恥ずかしがり屋さんなところが素敵ですわ」


いやいや、迷惑なだけだから。本当に毎日毎日胃が痛かった。

このプリシア王女から解放されたい。

そう思っていたロイド。


そしてディアメリアと婚約したい。ディアメリアには兄がいて彼がジュテル公爵家を継ぐことになっている。だからディアメリアは嫁入先を探しているのだろう。

それか、ジュテル公爵家の余っている爵位を得て、ジュテル伯爵家を名乗り婿を取ってもいいと思っているかもしれない。

情報戦に乗り遅れているぞ。自分。


ディアメリアを囲っている男性達は皆、貴族の次男、三男だ。

彼らに負けてなるものか。

まずは外堀を埋める。ロイドはディアメリアの兄、バリウス・ジュテル公爵令息に近づく事にした。

王立学園では一学年上のバリウス。普段、交流はない。ロイドはバリウスのクラスに行って教室を覗いてみた。


バリウスはディアメリアに似ていて、銀髪碧眼で、美しい顔立ちをしていた。

彼はロイドを見つけると、自分から近づいてきた。


「ロイドだね。アシェル公爵家の」


「何故?私の事を?」


「プリシア王女殿下に執着されている令息として有名だよ。君は」


「えええ?迷惑をしているのです。プリシア様に執着されて」


「そうなのか。それで?私に用があって来たのだろう?」


「ディアメリア嬢とお知り合いになりたいのです。凛として美しくて、公爵令嬢として素晴らしいディアメリア。私は彼女に婚約を申し込みたいと思っているのです。ただ、ライバルが多くて。ディアメリア嬢を紹介して頂けないかと」


「我が公爵家もアシェル公爵家と縁を結んで損はないはずだな。いいだろう。会えるようにディアメリアに話をつけておこう」




ジュテル公爵家に訪問する約束をすることが出来た。

当日はオシャレをして、赤の薔薇の花束を持って、馬車に乗ったら、すでに馬車にはプリシア王女が乗っていた。


「どこへ行かれますの?え?ジュテル公爵家?わたくしも行きますわ。この薔薇の花束はわたくしに?嬉しいわ」


薔薇の花束を取られた。


慌てて取り返す。



「これはディアメリア嬢に用意したんだ。って何故、馬車に?私はジュテル公爵家に行き、ディアメリア嬢と婚約を結びたいが為に彼女に面会するのです。ですから、王女様。一緒に同行されては困ります」


「何故、貴方の婚約者はわたくしのはずよ。いえ、確実にわたくしと婚約を結ぶ事になるわ」


「何でですか?私は貴方と婚約を結ぶ事はありません。私が嫌だからです」


「何故、嫌なの?本当に照れ屋さんなんだから。恥ずかしがらなくてもよくてよ。わたくしと結婚する幸せを心の底から感じなさい。いえ、まずは婚約ね。このまま行先を王家に致しましょう。わたくしに婚約を申し込みなさい。これは命令です」


「いえいえ、これからジュテル公爵家に行くのです。もう約束しているのですから」


御者に向かって、


「何故?王女様を乗せた。ともかく、ジュテル公爵家に急いで向かってくれ」


ジュテル公爵家に馬車を走らせる。

着いて来てしまった王女をどうするか?どこかに捨てる訳にもいかない。


ジュテル公爵家に着くと、プリシア王女に、


「それでは私は失礼します。御者に王宮に送るように命じましたから」


「わたくしは貴方について行きますわ」



プリシア王女が着いてきた。

これからディアメリアに婚約を申し込みたいのに。プリシア王女付きなんて、なんて言われるだろう。


客間にプリシア王女と共に通された。

ディアメリアが紫紺のドレスを着て、優雅に現れた。


プリシア王女を腕に絡めてソファに座っているロイドを見て一言。


「おめでとうございます。プリシア王女様とご婚約されたのですね?」


「違う。今日は君の兄上に頼んで、君に会いに来た。私は君との婚約を考えている。でも、王立学園ではなかなか君と話す機会を得ることが出来ない。だから今日は交流をしたくて。この薔薇の花束は君の為に」


渡そうとしたら横からプリシア王女に取られた。


「わたくしの為に用意してくれた花束ですわ。照れ屋さんなので、貴方に渡したいと言っただけです。本当にロイドったら可愛いんだから」


「えええ?違うって言っているじゃないですか。この薔薇の花はディアメリア嬢に」


ディアメリアはにっこりと微笑んで、


「わたくし、薔薇の花は好きではありませんの。プリシア王女様に差し上げて下さいませ」


あああっ。ディアメリアに嫌われてしまった。この女のせいで。この女のっ


だったら、


懐にこっそりと入れておいた、エメラルドの首飾り。この存在はプリシア王女は知らないはずだ。


「でしたら、この箱の中に入っている首飾りはディアメリアの為に用意したものです」


プリシア王女が箱ごと、横からひったくった。


「まぁ、わたくしにプレゼント。何かしら。開けてよくって?」


「だから、これはディアメリアにプレゼントする為に、私が一生懸命、選んで」


箱の包み紙を王女はびりびりと破って、中をパカっと開けた。


「素敵な首飾り。わたくしの好きなエメラルド。有難う。ロイド」


頭が痛くなった。ディアメリアはにっこりと笑って、


「エメラルドは好きではありませんの。構いませんわ」



詰んだ。マジ詰んだ。

ロイドはがっくりと肩を落とすのであった。

このまま、押し切られてこの王女と結婚する羽目になるのだろうか。

自分はこの王女の事が大嫌いなのに?


人の言葉を全く聞いてくれない。

照れてなんていない。このプレゼントはディアメリアの為に一生懸命考えて選んだものだ。

彼女に薔薇の花もエメラルドの首飾りも好きではないと言われてしまった。

そう、自分が否定された。否定されてしまったのだ。


ディアメリアに感じていた恋心が砕け散った。そう感じた。


がっくり来ていた翌日の事である。

午後、屋敷に人が訪ねてきた。


「プリシア王女だったら追い返せ」


不機嫌に使用人に言えば、使用人は、


「ディアメリア・ジュテル公爵令嬢ですが」


「客間に通せっ」


客間に行ってみれば、ディアメリアが優雅に座っていた。

白地に銀の刺繍が入ったドレスを着ていて、彼女にとても似合っている。


ディアメリアは微笑んで、


「昨日は失礼致しましたわ。わたくしも貴方の事は良く知っておりますの。一生懸命、勉学に励んでいらっしゃる姿も。わたくし、貴方の視線を感じる事が多くて。とてもドキドキしておりましたのよ。それなのに、プリシア王女様に付き纏われていると。いずれは王女様と結婚する方だと。皆が言って。昨日もプリシア王女様と一緒にいらっしゃったではありませんか」


「あれは彼女が勝手に馬車に乗り込んで。私は君と婚約を結びたいんだ。プレゼントだって。薔薇の花束もエメラルドの首飾りも、君の為に一生懸命選んだ。それなのに、彼女に取られてしまって」


「このドレス。エメラルドの首飾り、似合うとは思いません?赤の薔薇の花束も、このドレスを着て持ったら映えますわ。わたくし、悲しかったの。プレゼントをわたくしの為に持ってきてくれたのなら、王女様に取られてしまって。改めて下さいません?わたくしと婚約を結びたいと言うのなら」


「勿論だ。改めて用意する。プレゼントする。わざわざ来てくれたって事は私の事を少しは思っていてくれるとうぬぼれてもいいのかな?」


「条件がありますわ。しっかりとプリシア王女様の事をお断り出来ましたら。あのように付き纏われたり、やはりプリシア王女様と婚約をと言われたら、わたくし悲しくて」


「勿論。しっかりとけじめをつける。私は男だから王家に文句を言うよ」


「それなら、安心しましたわ。貴方がしっかりとプリシア王女様との事をけじめをつけましたら、前向きに婚約を考えてあげてもよくてよ」


嬉しかった。憧れていたディアメリア。彼女が婚約を考えてくれると言ってくれたのだ。

考えてくれる?婚約をするって話ではないのか?


だが、しっかりとプリシア王女との事をけじめをつけようと思うロイドであった。


両親であるアシェル公爵夫妻と共に王宮へ行き、国王夫妻と面会する。


そして、ロイドは国王夫妻に訴えた。


「私はプリシア王女様に付き纏われております。私はジュテル公爵令嬢に婚約を申し込みたいと思っております。それなのに、プリシア王女が妨害してきます。私はプリシア王女様と婚約を結ぶつもりはありません」


プリシア王女がドアを開けて飛び込んで来た。


「またまた、ロイド様ったら恥ずかしがり屋なのですわ。わたくしに薔薇の花束とエメラルドの首飾りをプレゼントして下さって。本当はわたくしの事を好きなのです。ですからお父様。お母様。どうかロイド様との婚約を認めて下さいませ」


何を言っているんだ?この王女は。ロイドは真っ青になった。


「違います。私は照れても恥ずかしがってもおりません。私が婚約を結びたいのは、ディアメリア・ジュテル公爵令嬢なのです。ですから、お願いです。どうか、プリシア王女様の付き纏いを無くすようにしてくださいませんか?」


アシェル公爵が慌てたように、


「数々の無礼な発言。申し訳ございません。息子は王女様の付き纏いに迷惑をしているのです。どうか、国王陛下。王妃陛下。プリシア王女様の付き纏いを無くすようにお願い致します」



国王はため息をついて。


「甘やかしたのが悪かったのか。王太子、第二王子、第三王子、その下に生まれた唯一の王女だから。迷惑をかけて悪かった。ロイドよ。本当にプリシアの事を好きではないのか?わしが言うのもなんだが、顔も良い。美しい娘だ」


ロイドははっきりと、


「人の話を聞かない妻なんて、先行き、苦労しかありません。誠に申し訳ありませんが、私はプリシア王女様に付き纏われて迷惑をしています」


プリシア王女は父である国王に、


「違うわ。わたくしはロイド様に愛されているの。愛されているのよ。彼は照れているだけなのっ」


王妃がプリシア王女に、


「プリシア。お前の思い込みは、ロイドに迷惑に思われるだけよ。しばらく、離宮に閉じ込めます。そこでしっかり反省なさい」


「違うのっ。ロイド様はっーーー」


プリシア王女は離宮に近衛兵達によって連れて行かれた。

ロイドは話の解る国王夫妻で安堵した。

もう、プリシア王女に付き纏われる事はないだろう。




ディアメリアに改めて、薔薇の花束と、エメラルドの首飾りを持って会いに行った。

ディアメリアはこの間と同じ、白地に銀のドレスを着て、客間で出迎えてくれた。


「赤の薔薇もわたくし大好きよ。エメラルドの首飾りも。わたくしの首に着けて下さらない?」


喜んで、ディアメリアの首に、エメラルドの首飾りを着けてあげた。


華奢な白い首に、白と銀のドレスに、その首飾りはとても似合っていて。

ディアメリアの手の甲に口づけを落とし、


「私とどうか婚約をして下さい。これから、私の事を沢山、知って下さいませんか?」


ディアメリアは微笑んで、


「ええ、喜んで」


天にも昇る心地でとても嬉しかった。



ディアメリアの事を知れば知る程、素晴らしい女性だと、惹かれていった。

話をすればする程、彼女の知識は素晴らしく、美しさだけではない女性だとロイドは彼女の事が大好きになった。


交流を深めて行き、卒業間近になったとある日、衝撃の事実を聞いた。

ディアメリアの兄、バリウスが、ロイドに向かって、


「私はプリシア王女と結婚することになった」


「えええ?あのプリシア王女様とですか?」


「王家に頼まれてな。まぁ、あの女に公爵夫人は無理だから、適度な所に閉じ込めて」


言葉を濁したが、バリウスの、ジュテル公爵家の恐ろしさを感じた。

王家の血を取り込む子だけ産ませたら、後は病死か‥‥‥

そして、今の王国の国王夫妻は頼りない。王太子や王子達もいまいち、出来が悪いのだ。


いずれ王国が荒れるのではないのか?

そんな不安を感じるロイド。




でも、今は‥‥‥


もうすぐ結婚するディアメリアとの幸せな結婚生活を夢見て。

結婚式の支度の為に、ディアメリアに会いに馬車に乗るロイドであった。


とある変…辺境騎士団

「今回は屑の美男はいないのか?」

「屑の美女はいたようだけどな」

「喉を潰されて、屋敷に閉じ込められて、いずれは病死か?」

「貴族社会は恐ろしい。さぁ、我らは屑の美男を探しに行くぞ」


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― 新着の感想 ―
あぁ~、たまにいますよね、捨てても捨てても戻ってくる呪いの人形みたいに、言葉は通じても会話が成立しない粘着なヒトって……どちらも撃退したことあるけど、面倒臭いんですよね……  (同じ人間だと思いたくな…
プリシア王女~汗 ジュテル公爵家もこわ~汗 終わり方に含みがあって面白かったです! (ははは、辺境騎士団様、今回は獲物はいなかったようですね笑)
またユミヨシ様と気づかず最後まで読み進めてしまいましたが、まさかこんなところにも変…辺境の方々がお見えになっていたとは…(笑)
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