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68.

 王都を出て一週間後、ほとんどの部下達は森沿いにある各領地に配属され、最後に立ち寄ったここポリニャック子爵領には、副団長のオレールの隊が残ることになっている。



 万が一の時に増援の判断をするためと、全滅した時にまとめ役がいないと第三騎士団が崩壊してしまうからだ。

 ポリニャック子爵領は、タレーラン辺境伯領から小さい領地を二つ挟んだ南東に位置する。

 


『ねぇねぇ、今日から森の中に入るんだよね?』



「ああ、この領地から森に入るのが目的地に一番効率よく行けるからな」



 ジェスは昨日から再び俺の背中にいる。

 なぜなら聖女の手持ちの菓子が尽きたからだ。

 あとは一緒にいると、ずっと話しかけてくるのがウザかったらしい。

 普段俺の部屋では話す時は話すが、お互いあまり干渉しない。



 ジェスがメスだったら気が合ったかもしれない、だがもしかしたら性別関係無くおしゃべりなタイプじゃない可能性もある。

 ドラゴンは無口なキャラが多いイメージだしな。



「では団長、我々はここで」



「ああ、もしも大気が震えるほどの衝撃があったら、後日俺達の骨を拾いに来てくれ」



 確かドラゴンとの戦闘描写に大気が震えたという描写があったはず、何かカッコイイと思って記憶に残っていた。

 心配そうにしているオレールに冗談めかして言うと、キッと眉を吊り上げた。



「縁起でもない! 冗談でもそんな事は口にしないでください! 私ではあの悪ガキ共を制御する自信はありませんからね!?」



「やだなぁ、僕達副団長に悪ガキって思われてたのかぁ」



「酷くねぇ? 最近オレ達結構いい子だったよな?」



 オレールの言葉を聞いたアルノーとシモンがニヤニヤしながら、わざとこちらに聞こえるように会話している。



「ンンッ、ともかく、無事に戻る事を信じて待っていますので!」



 オレールは誤魔化すように咳払いをしてから、仕切り直して見送りの言葉を言った。



「ククッ、わかった。お前たちもオレールに心労かけないようにいい子にしていろよ。戻ってから各隊長から報告を受けるからな?」



 オレールの後ろに控えているオレール隊の部下達に視線を向けると、あからさまに背筋が伸びた。

 こいつら……、俺がいなくなった途端に気を抜く気満々だったんじゃないか?

 今更ながら他の領地に残してきた部下達が心配になる。



「ジュスタン団長、お待たせしました!」



 そう言って現れたのは、聖騎士団長の馬に相乗りしている聖女。

 道中何度か話し合いの結果、機動力が落ちるという事で馬車はポリニャック子爵に預かってもらうことになった。

 馬に乗れない聖女は、聖騎士団長に乗せてもらう事になったようだ。



『あっ、エレノアが来たよ! 出発する?』



 ちょっと前までジェスも聖女と呼んでいたのに、馬車で餌付けされている間に名前を教え込まれたらしい。



「ああ、早くジェスの母親に会えるといいな」



『うん!』



「ではこれより森に入る! 陣形を崩すな! 何かあればすぐ報告するように!」



 森に入ったばかりは小型の魔物しか出ず、この先の食料として一応持って行く事にした。

 そう、これまでは領地の中を通ってきた。

 先触れがあった事もあり、食事は各領地で問題無く食べられたのだ。



 つまりは野営はここから。

 俺達第三騎士団と聖騎士団の食事は各々準備する事になっている。

 あいつら料理できるんだろうか。



 聖女が作るなら心配無いとは思うが、問題は聖騎士達が聖女に料理という雑用をさせるかどうかという点だ。

 あいつら聖女を必要以上に神聖視しているからな、手料理なんて恐れ多いとか言ったりして。



 それでマズイ料理食べさせたりしたら、本末転倒なんだけどな。

 そんな心配が現実となったその日の夕方。



「陽が傾いてきたな、そろそろ野営の拠点を決めた方がいいだろう。ちょうどその先が開けているようだし、そこにするか」



 人数が少なくなった分、俺と聖騎士団長のアクセルとの距離は近い、少し声を張るだけで十分会話が可能だ。

 俺の声が聞こえたアクセルは頷き、後方の聖騎士達へと伝達した。



「エリオット隊はテントの準備、ジュスタン隊は食事の準備をするぞ」



 第三騎士団にとって野営は日常と言っても過言ではない、だが聖騎士達にとっては慣れない事だろう。

 もしかすると、野営をした事がない者もいるんじゃないだろうか。

 火起こしは俺の魔法ですぐにできる事もあり、サクサクと準備を進める。



 そして予想通り、明らかに聖騎士達の手際が悪い。

 すでに俺達はテントを張り終え、調理も終わろうとしているのに、向こうの工程は半分も進んでないように見える。



「エリオット、こっちの調理はもう少しかかる。それまでの間、向こうのやつらの手伝いをしてやってくれ。さすがに聖女におあずけさせたまま、俺達だけ食事するのはどうかと思うからな」



「ああ……、まぁ確かに。おい、行くぞ」



 少々不満げな返事をする部下達を連れて、エリオットは聖騎士達を手伝いに行った。

 それを見送っていたら、俺の隣にそっとシモンが近付く。



「団長団長、もう森に入ったし、ジェスが食べたお菓子、食後に俺達も食べられるんだよな?」



『ボクも食べたい!』



 こいつ、ジェスが聞いてるのわかってて言ったな!?

 しかし実際約束していた事だった事もあり、食後にチーズケーキを提供することを了承した。

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