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42.

「エレノア、よく頑張ってくれたな。ゆっくり休むんだぞ」



 王都の第三騎士団に到着し、厩舎(きゅうしゃ)で愛馬を(ねぎら)いながら手入れをしてやる。

 寒い中頑張って走ってくれたおかげで、最初に出した休暇申請の間に戻って来る事ができた。



「団長、代わりますよ。夕食がまだなんじゃないですか?」



 時間を忘れて毛づくろいをしていると、厩番(うまやばん)が声をかけてきた。

 到着した時は夕暮れだったが、すっかり外は真っ暗になって、厩舎の中は魔導具の灯りが点いている。



「もう終わるから大丈夫だ、ありがとう。道具の片付けだけ頼む」



「はい!」



「おやすみ、エレノア」



 鼻面を撫でて宿舎へと向かった、そして食堂へ向かうと絶賛食事中の部下達。



「あっ、団長おかえりなさい!」



「団長が実家に戻ってる間に色々あったんだぜ~」



「実家の呼び出しの理由はなんだったの?」



 マリウス、シモン、アルノーが俺に気付くと口々に話しかけてきた。



「ちょっと待て、食事をしながら聞かせてもらおうか。俺の話も聞かせてやるから」



 厨房側へ夕食を取りに行くと、料理長が寄ってきた。



「ヴァンディエール団長おかえりなさい! 団長がいらっしゃらない間も皆さん問題も起こさずしっかりしてましたよ! これも団長がしっかり言い聞かせてくれていたおかげです、関係者一同とても感謝しているとお伝えしたくて。それに裁判ではご活躍されたとか……」



「料理長! ヴァンディエール団長は今戻ったばかりなんですから、先に食事をしてもらわないと! どうぞ、こちらに準備してありますので!」



 以前の怯えた姿からは想像ができないほど饒舌(じょうぜつ)に話しかけてくる料理長、見かねた見習いが一人前を準備して持って来てくれた。

 以前に比べて随分俺への態度も柔らかくなっている、なかなかいい傾向じゃないか?



「フッ、ありがとう、助かる」



 嬉しくて思わず笑みが漏れた。

 トレイを受け取り、部下達の待つテーブルへと移動する。



「待ってたぜ団長! いやぁ、なかなか面白い事になっててさぁ! 団長が戻ったら聞かせようと思って、ちゃぁんと情報仕入れといたんだぜ?」



「シモン、情報を主に仕入れたのは僕とマリウスなんだけど?」



 シモンにジト目を向けるアルノー。

 まぁそうだろうな、シモンだと大雑把な情報しか覚えてないだろう。



「とりあえず神殿側と王太子がどうなったか教えてくれるか?」



「王太子は今軟禁生活をしてるんだって、婚約者が酷い目にあって気が動転したんだって言い張ってるらしいよ。第二騎士団長は王太子の命令に従っただけだという一点張り。辺境伯令嬢は裁判の日軟禁されてて、数人の侍女に協力してもらって裁判所に行ったとか。侍女達の噂では、今回の件で辺境伯令嬢が王太子に愛想尽かしたとか、王様が王太子を廃嫡して第二王子を王太子にしようとしてるとか、色々噂が交錯してるらしいよ。神殿に関してはマリウスから聞いた方がいいかな」



「はい。神殿は裁判所にいた神官が全て勝手にやった事だと主張していて、本人もそれを認めているからと神官の資格を剥奪、今は投獄されているそうです。動機は神殿を軽んじる団長の名誉を傷つけるためで、辺境伯令嬢の事は傷付けるつもりはなかったとか。証人として裁判に来ていた従騎士(スクワイア)は皆のためになるからと言われて偽証したと言っているらしいですが、誰から命令されたかは言わないそうです。だから第二騎士団で更に調べを進めていると言ってました」



「ちょっと待てよ、団長を誤認で捕まえた第二騎士団が引き続き調査しているのか?」



 マリウスの言葉にガスパールが待ったをかけた。



「一応第二騎士団長は謹慎しているので、上からの命令だからと素直に従っていただけの副団長以下の人達は何のお咎めもないみたいですよ」



「甘いよなぁ。第二のやつら全員減給でもされりゃいいんだよ。その分オレらがもらってやるからさ」



「バカな事を言うんじゃない、上司の命令は絶対なのはお前達も同じだろう? 責任は上の者が取るのは当たり前だ。それで……神殿に聖女が来たという情報はなかったか?」



「あっ、それオレが知ってるぜ! 昨日飲みに行ったら、家具職人が急ぎで女性用の寝台を作らされたやつの納期がその日で、懐が温かいんだって自慢してたからな。彫刻とか入ってる高級品だから、貴族でも神殿に入るのかもって言ってたし、きっと明日にでも到着するんじゃねぇ?」



「シモンの夜遊びもたまには役に立ったな。いくら建て前を並べても、聖女という存在が明るみに出たら怪しまれると思わないのか聞いてみたいところだ」



 神殿側のお粗末さに嘲笑を浮かべる。



「あ~、やっぱ団長の笑顔はそっちの方が見慣れてて落ち着くわ」



「は? 何なんだ急に」



「このところ時々悪だくみしてるような笑い方じゃない笑顔してるだろ? さっきだって料理長達が固まってたぜ? まるで団長がさわやかな好青年みたぃたいッ」



 無意識にゲンコツをシモンの頭に落としていた、これは身体が覚えていたというやつだな。

 しかも第二関節で削るように、という地味に痛いやり方だった。

 まぁ、これぐらいしないとコイツらまともに聞かないから仕方ない。



 ブツブツ文句を言っているシモンを無視して、食事しながら今後の対応を考えた。

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