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俺、悪役騎士団長に転生する。  作者: 酒本アズサ


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249/272

249.

 幸い妊婦はすぐに落ち着き、馬車はすぐに出発し、夫婦は途中の農家の集落で降りた。

 さすがに出産は立ち会った事もないし、何事もなくてよかった。

 立ち去る際に妊婦は嬉しそうに礼を言ったが、夫の方は不機嫌そうで会釈すらしていない。

 再び馬車が動き出すと、シモンが笑い出す。



「ククッ、あの旦那、嫁さんが団長と藍に見とれてたからすっかり不機嫌になってやんの」



 そういう事か。

 俺としては久々に黒髪黒目に囲まれて妙な気持ちでいたが、向こうからすれば見慣れない髪と瞳の色で落ち着かないのかと思っていた。

 笑顔を向けても怖がられるから普段は忘れているが、そういえば美形だったな、この顔。

 妊婦のために敷いた寝袋と毛布の上にさりげなく移動すると、シモンもちゃっかり隣に座る。



「それにしても団長さんは上に立つだけあって、面倒見がいいんだねぇ」



 (フォン)がシモンに便乗して会話に加わる。

 シモンが俺を団長と呼んでから、『団長さん』と呼ぶようになってしまった。

 藍が俺を呼ぶ時は『主様』だからさすがにマネはできないと思ったのだろう。



「ふっ、この程度でそんな事を言ってちゃあ、ジェスと一緒のところを見たら更に驚くせ」



「シモン、余計な事を言うな」



「ヒッ! もう言いません!」



 普通に言ったつもりだが、少々顔が険しくなっていたようだ。

 シモンが怯えて口を噤む。



「別にけなしたわけでもないのに怒る事ないでしょ、ジェスって誰ですか? シモンさんと同じ部下とか?」



「怒ってはいない。(フォン)はジェスに会う事もないだろうから、聞いても無駄だろう」



 何と言うか、(フォン)と話していると探られているようで、神経がピリつく。



「さっきの妊婦さんには親切だったのに、何だ俺には冷たいなぁ」



 適当に答えながらものらりくらりと質問を躱し、やっと中央の市壁まで到着した。

 これで(フォン)の質問責めから解放されると、内心ホッと胸を撫で下す。

 外の市壁と同じように、中央の市壁を囲むように家が碁盤目状に建てられている。

 門に近いほど立派な家……と言っても庭もない家だが、裕福なのが見てわかった。



「ああ、結局団長さんのお名前も聞けなかったかぁ。だけど……」



 門の真下で馬車が止まると、(フォン)は意味ありげににっこりと微笑む。

 同時に門番と思われる男が人の減った馬車に乗り込んで来た。



「通行許可証を確認する!」



 他の乗客は慣れた様子で通行証を見せ、そのたびに名前を読み上げていく。

 コイツ! だから笑っていたのか! 名前を教えなかった意味がないじゃないか!

 舌打ちをしたい気持ちで門番に通行証を見せる。



「賈斯坦、よし」



 ん? 何だか発音がおかしい。

 無理やり漢字表記にしたからか?



「西蒙、よし」



 シモンはそのままだ。藍もそのままだった。

 全員の通行証を確認した門番が馬車を降りると、再び馬車が動き出した。



「へぇ、団長さんは賈斯坦って名前なのか」



 微妙な発音が気持ち悪い。



「正確にはジュスタンと発音する。だが名前を呼ぶ許可を与えていないぞ」



 イラついて言ったが、すぐにしまったと思った時には遅かった。

 (フォン)はしてやったりという笑みを浮かべている。



「なるほど、名前を呼ぶのに許可が必要って事は、団長さんはどこかの国の貴族なんだね」



「二度と会う事がないのにそんな事を聞いてどうする」



「いやいや、何だか団長さんとは縁がある気がするんだ。俺の勘って結構当たるんだよ?」



「そうか」



 できればもう会いたくない。

 座っていた寝袋と毛布を掴むと、ひと言だけ返事して馬車を降りた。



「陽が沈むまでもう少しあるな。馬車で中央の反対側へ移動したいところだが、またあの振動に耐えるのは厳しいか。歩くぞ」



「賛成! 途中で毛布の上に座ったから耐えられたけどよ、ケツが割れるかと思ったぜ!」



「安心しろ、お前のケツはもう割れているぞ」



「えっ、マジ!? って、これは最初からのやつじゃ~ん、わははは」



 シモンが振り返って自分のお尻を確認している間に、俺は手にした寝袋と毛布に清浄魔法をかける。

 土足の馬車に敷いたから、それなりに汚れたからな。

 ちなみにこのやり取りをしている間、藍はピクリとも笑っていない。

 綺麗になった毛布を魔法鞄に収納した。



「わぁ~、それエルドラシア王国製の魔法鞄だ! しかも魔法まで使えるなんて、やっぱり貴族なんだねぇ」



 不意に後ろから(フォン)の声がした。

 さっき馬車を降りた乗客達は、バラバラにどこかへ行ったはずだ。

 もしかして、本当はよそ者を見張る役目でもしているのか?



「……どうしてまだここにいる」



「いやぁ。あと一時間もすれば暗くなるし、貴族の団長さん達が泊まるなら、この大通りにある宿屋がいいよって教えようと思って。路地にある安宿は耐えられないと思うんだ、さっきの汚れで魔法使うくらい綺麗好きな団長さんは特に。それだけだよ、またね~」



 (フォン)はそれだけ言うと、今度こそ立ち去った。

 そういえばエルフの里からはあの村以外野営だったから、黄鱗帝国の衛生基準がわからない。

 最悪清浄魔法を使ってから部屋に入るつもりでいた方がいいという事だろうか。

 歩くと何時間かかるかわからない大通りを歩きながら、今夜の宿を探した。

明日はとうとうコミックス発売日です!

自由賢者共々よろしくお願いします♡

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