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俺、悪役騎士団長に転生する。  作者: 酒本アズサ


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208/230

208.

 萌の後について歩いて行くと、流れる水音が遠くに聞こえた。



「ここじゃ」



 そう言われて萌の指さす方を見ると、さっきまで何もなかったはずの場所に大きな岩の床があり、その上には魔法陣のような物が描かれている。

 これも認識阻害の魔法で隠してあったのだろう。

 知っている者だけが気付けるようになっているから、万が一余所者が入り込んだとしても里までは行けないというわけか。



「言っておくが、人族程度の魔力ではこの魔方陣は使えぬからな。国に持って帰っても無意味じゃぞ。昔はこの魔方陣を使って戦争を繰り返しておったが、魔力を枯渇するまで酷使された魔術師達が大勢犠牲になったのじゃ。そのせいで魔力の多い者が減って、今の人族は全体的に魔力が少なくなっておるはずじゃ」



「そんな事があったのか……、俺達が習った歴史はすでに魔力が少なくなってからの出来事だから、人族で魔力が多い者がいたのは今初めて知ったくらいだ」



 もしかしたらジャンヌやジェスなら魔法陣を起動させられるかもしれないが、こんな物を持ち出して悪用されたらシャレにならないからな。

 一応シモンにも口止めをしておくか。



「シモン、わかっているとは思うが、この魔方陣の事は口外無用だ。人族には使えない物を教える必要はないからな」



「わかってるって! 今回みたいに探すんじゃなくて、行きたい場所が決まってるならジェスに乗せてもらって飛んで行った方が楽しいもんな!」



「ボク、シモンを落とさないで飛べるよ!」



 そういう事ではないが、口外しないのであればまぁいいか。

 そんなシモンとジェスのやり取りを、萌は微笑ましそうに見ていた。



「では行くぞ。魔法陣の上に立つがよい」



 言われて魔法陣の中に入ると、一瞬立ちくらみのような感覚に襲われた次の瞬間には周囲が明るくなっていた。

 正確に言うと、木に囲まれた場所から、陽の当たる開けた場所に立っていたのだ。

 さっきよりも水音が大きいのは、数段に渡り滝のように水が上から落ちて水路を形成しているせいだろう。

 まるで円柱形の段々畑……そんな風に見える。



「ここがエルフの里じゃ。この一番上にある大きな樹は世界樹でな、その根元から湧き出る命の水は、世界樹から離れるほどに効果が消えてしまうのじゃ。この最下層では植物の生長を助ける程度しか効果がない」



「そんな事を俺達に話していいのか? 結構重要な事だと思うが」



「ふふ、そなたらをここから帰さぬ気じゃ……と言ったらどうする?」



「シモンがさっき言ったように、ドラゴンの二人に乗せてもらって帰るだろうな」



 シレッと答えると、萌は苦笑いを浮かべた。



「ふっ、冗談じゃよ。そこなドラゴンが張った結界はおぬしらには効果がなかろうて。閉じ込める事なんぞできぬわ。邪竜でもないドラゴンと従魔契約をしておるような者ならば人柄に問題あるまい。しかも複数となんぞ聞いた事もないわ」



「ジュスタンは優しいよ!」



「うむ、坊主を見ておれば伝わって来るというものじゃ」



「ボクは坊主じゃなくてジェスだよ!」



 ジェスが名乗った事で、自分達が名乗っていない事を思い出した。



「そういえば名乗っていなかったな。俺はラフィオス王国の第三騎士団で団長をしているジュスタン・ド・ヴァンディエールという。こいつは部下のシモン、そして従魔契約しているドラゴン親子のジェスとジャンヌだ。エルドラシア王国と我が国の王女との婚姻で今回こっちに来たんだ」



「両方とも聞いた事がない国名じゃのぅ、しばらく外界とは接触しておらんから国も変わっておるか……」



 この様子だと、エルドラシア王国にコーヒーを売りに来たエルフとは別なのかもしれない。



「なぁ、この集落以外にもエルフの里というのはあるのか?」



「世界に数か所はあるはずじゃ。あとは……、この里の考えを嫌って飛び出した若者……と言うても数百歳にはなっている者達が十数人飛び出してこの山に住んでおる。詳しい話はわらわの家でしようぞ」



 萌の後をついて、ちょっとした上り坂から平地になった瞬間、俺の足は再び止まった。

 確かに期待はしていた。だが、目の前の光景に涙が出そうになって落ち着くために深呼吸をひとつ。

 まだ青いが、実を付けた稲穂が頭を垂れていたのだ。



「なんじゃ? なんぞ珍しい物でもあったか?」



 足を止めた俺に、萌が不思議そうに振り返る。



「あ、ああ……。ここに広がっているのは稲穂だよな? 米を育てているのか?」



「え? これって小麦じゃねーの? 米って何だ?」



「ほぅ、ジュスタンは米を知っておるのに、同じ国から来たシモンは知らぬのか」



 俺とシモンの反応の違いに、萌は何かを探るようにスゥッと目を細めた。



「平民のオレと違って団長は貴族だからな! オレの知らない事もいっぱい知ってるんだぜ!」



「ふむ、身分の違いで知識量も違うという事か。なるほどなるほど、それはわかる。米は後ほど食事の時に出させようぞ。あまり美味くもないゆえほとんどが家畜の餌になっておるがの」



 米が美味くない?

 命の水とやらはかなり綺麗な水に見えるし、実り具合も申し分なさそうだが。

 その理由は食事の時間になってわかった。

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