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俺、悪役騎士団長に転生する。  作者: 酒本アズサ


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180/218

180.

「どうした? 大丈夫か?」



 近付いて声をかけると、アリアはニンマリとした笑顔で振り返った。



「んっふっふっふ。実験は成功だわ! あなた達が騒いでも、魔物が寄って来ないでしょ? 普通あれだけ騒げば耳のいい角兎(ホーンラビット)の一体や二体姿を見せるものじゃない? 実際効果範囲の外には魔物がいるもの。ほら見てよ」



 そう言ってズイッと差し出されたノートサイズの箱のような魔導具を見ると、パネルのような画面中央に埋まっている魔石を中心に、円を描くように外側にいくつかの小さな赤い光が見える。

 こんな探索魔法みたいな魔導具見た事も聞いた事もないし、もしかしてかなり重要な秘匿案件なのではと心配になるほどすごい事なんだが。



「この魔石の近くにも三つ光っているが? これは魔物ではないのか?」



「ああ、これはあたし達よ。一番大きいのがジェスね。そしてこの一番小さいのがジュスタン」



 アリアが説明した途端、噴き出す声が聞こえた。



「ぐふっ、だ、団長がジェスより小せぇ(・・・)って……!」



「シモン、このバカっ」



 アルノーがシモンの口を塞ぐより早く、俺は無言のままシモンをヘッドロックで捕まえ、脳天に拳をグリグリ押し付けた。



「いででででで! 痛い! ごめんなさい!!」



「その光は魔力量に比例するというわけか。ドラゴンの方が魔力量が多いのは当然なんだぞ、シモン」



 シモンの悲痛な声を無視し、アリアに確認する。

 明らかにシモンの言葉には含みがあったからな。

 男としては小さいという言葉に敏感になっても仕方ないだろう。



「そうだけど……、その人すごく痛がってるわよ?」



「気にするな」



「気にして!! オレが可哀想だろ!? ジェス助けてくれ!」



 シモンが涙目になったところ解放してやった。騒いでうるさいしな。

 俺から解放されたシモンは一目散にジェスのところに駆け寄り、しゃがみこんで頭を撫でられている。



「あれ? ほんのりだけど、その四人の内の一人にも魔力があるかも。訓練しても生活魔法程度しか使えないだろうけどね」



 アリアは目を(すが)めて魔導具のパネル部分を見ている。

 恐らく可能性としてはアルノーだろう。

 部下達もアルノーに視線を向けているが、あえて何も言わない。



「気になるなら本人が魔力鑑定でも何でも受けに行けばいい。それよりもその魔導具を俺達に見せて大丈夫なのか?」



「…………あっ。でっ、でもでも見たところで同じ物を作る技術も知識もないでしょう!?」



「まぁそうだが」



「でしょうっ!? だから問題無いわ!」



 さては何も考えていなかったな?

 めちゃくちゃホッとした顔しているじゃないか。

 恐らく魔塔主はその辺もわかってるから許可を出したとは思うけどな。



 しかし、この魔導具を量産したら、魔物を誘導して向かわせたいところに魔物を追いやる事も可能……そう思うのは俺が討伐隊として動いているからだろうか。

 部下達もシモン以外がアイコンタクトを取っているから、そう思ったのは俺だけじゃないようだ。



 エルドラシア王国の周辺は山に囲まれた地形だから、よほど効果を増強しない限り他国に影響を与えるような事はないと思うが、周辺国に知られれば脅威となるだろう。

 むしろその技術を我先に手に入れようと交渉するために、使者が押し寄せても不思議じゃない。



 これは俺達ラフィオス王国の者が信用できるか、魔塔主やエルドラシア王に試されているのだろうか。

 一応この懸念をエルネストには報告して、あとはだんまりが正解だな。

 少なくとも、ラフィオス王国に対してこの魔導具を使う事は地形的にも難しいはずだ。



「それで……、今回の実験はこれで終わりでいいのか?」



「そうだけど」



「ついでに必要な素材があるなら、何体かこの森の魔物を狩ってもいいんだぞ。そのために部下達を連れて来たようなものだからな」



「本当!? だったら針熊(ニードルベア)を狩って!」



 俺の提案に、アリアはわかりやすく顔を輝かせた。

 針熊というのはラフィオス王国には生息しておらず、図鑑でしか見た事がないが、確かハリネズミとよく似た魔物だったはずだ。



「針熊? なんだそりゃ」



 当然知らないシモンが首を傾げた。



「背中に針が付いている小型の熊の魔物だ。基本的に針を飛ばして攻撃してくるから気をつけろ。腕や足くらい簡単に貫通するらしいからな」



「あっ、針熊は数が少ないからできれば殺さないで! 針だけ回収してもらいたいの!」



「えっ、それってわざと針を飛ばす攻撃をさせて、それを回収しろって事!? 腕とか貫通するんでしょ!?」



 アリアの注文に、アルノーが悲鳴のような声をあげた。

 実物を俺も見た事がないから何とも言えないが、腕や足を貫通するという事は、かなりの速度で撃ちだされるはずだ。

 しかもその針がどれくらいのサイズかもわからないから、不安になるのも仕方ない。



「たぶん小さいのが角兎で、この少し大きいのが針熊だと思うのよね」



 魔導具のパネルを見ながら、アリアは赤い光のひとつを指差す。

 確かに他のものより少し光が大きい。



「俺はアリアの護衛をしておくから、お前達はこちらを気にせずやってみろ。初見の魔物から素材を回収するなんて、なかなかできない体験だぞ。ジェスは大丈夫だとは思うが、人化していたら刺さるかもしれないからな、俺から離れるなよ」



「うん!」



 こうして珍しく緊張した面持ちの部下達が先に立ち、森の少し奥へと向かう事になった。

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