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今回は更新が遅れてしまい、申し訳ありません。
本当なら昨日情報公開されたので更新したかったのですが……。
そう、情報公開です!
まずはコミカライズ連載開始は来週木曜日!
2月27日木曜日のお昼はカドコミをチェック!
そして【俺転】2巻の発売日が4月10日に決まりました!
テンポよく進めるために端折ったエピソードがかきおろしで挟んでありますのでお楽しみに!!
俺達は王城の敷地内にある迎賓館へと案内された。
一般的な貴族の屋敷より広く、騎士団も全員同じ建物で過ごせるようになっている。
これはラフィオス王国の迎賓館も同じだが、その国の者達をひとまとめにして世話や監視が可能なようにだ。
「考えてみりゃ、団長と同室ってのは初めてだな」
ジュスタン隊が案内された三階の部屋に到着すると、シモンが俺をチラチラ見ながら呟く。
今回は事前にクラリスに同行する者の名簿が提出されていたからか、騎士団の小隊ごとに部屋が分かれていた。
「よかったな。今回お前達以外の騎士は全員貴族だから、貴族扱いになっているぞ。ベッドも質がいいだろう」
「確かに! 見てください、シーツがシルクですよ! 実家でも来客用の部屋にしか使われてないから、自分が寝るのは初めてです」
実家がそれなりの商家とはいえ、マリウスでもシルクのシーツは初めてらしい。
嬉しそうにシーツに頬擦りしている。
「団長、今日は謁見しなくていんだろう? 夕飯食ったら、遊びに行っていいか?」
ガスパールは早々に騎士の正装から普段の訓練服へと着替え、今にも出かけようとしていた。
ラフィオス王国では訓練服であれば騎士だとわかってもらえるからだろうが、今回はそれ以前の問題だ。
「いいわけないだろう。他国の騎士が到着後すぐに王都を徘徊していたらどう思われるか考えろ。夜の街なんぞ情報収集の定番だろうが」
「そうだよ。ただでさえラフィオス王国の商人や使者以外来た事がない国なんだよ? 警戒されるような行動してどうするのさ」
「ガスパールの軽率な行動でラフィオス王国全体が警戒されたらシャレになりませんよ」
「オレでさえそのくらいわかるぜ? 女を口説く時と同じで、まずは警戒を解いてからじゃねぇと」
全員に呆れた目を向けられ、最後にシモンにまで説教されてガスパールは愕然としている。
「シモンにまで言われるなんて……。俺は終わった……」
「どういう意味だよ!?」
「そういう意味だよ!!」
くだらない事で言い合いを始める二人。
そんな二人を放置して、俺とアルノーとマリウスは荷物を片付けて私服に着替えた。
平民ではあるが、第三騎士団の宿舎の場所的に貴族街を歩く事が多いため、部下達の私服はそれなりの品質だ。
「早く準備しないと置いて行くぞ。さっきメイドが言っていただろう、すぐに夕食の準備ができると。王族の二人や大臣は晩餐会になるだろうが、騎士の俺達は普段の食堂と同じ形式のはずだから、なくなっても知らないぞ」
「あわわっ、待ってくれ! すぐに支度するから!」
「ガスパールが変な事言ったせいだぞ!」
文句を言い合いながらも支度を急ぐガスパールとシモン。
本当は遅く行こうが、エルドラシア王国の威信にかけて俺達の食事が足りないなんて事はありえないんだがな。
放置したらいつまで喧嘩しているかわからないから、方便として言っただけだ。
一階の食堂に入ると、すでに第一騎士団の半数ほどが食事をしていた。
会話しながらの食事だから、声が聞こえてくるのは当然だが、第三騎士団の宿舎での食事風景とはマナーのよさが違う。
まず食器の音がほとんどしない上、姿勢がいい。
「なんか……僕達ここで食べて大丈夫かな?」
アルノーが周囲を見回して不安そうに囁いた。
「ククッ、せいぜいお行儀よく食べるんだな。晩餐会と違って正式なマナーを求められているわけでもないんだ、大人しく食べていればいいさ」
ビュッフェ形式で見た目も鮮やかな料理が中央のテーブルに並んでおり、その両隣には四列に食事のためのテーブルが並んでいる。
エルドラシア王国内はすでに初夏の陽気なためか、みずみずしい果物も豊富だ。
「うわっ、なんだこれ!? これも食べ物なのか!?」
「うるさいぞ、何を騒いでいる」
料理を皿に載せていたら、シモンが果物エリアで大声を出したせいで、食堂内の視線が集中している。
「いや、これ見てくれよ。トゲトゲしてるし、こんなの食べられるのか? こっちなんて毛が生えてるぜ!?」
シモンが凝視していたのはこの世界で初めて見る、ドラゴンフルーツとキウイだった。
見栄えのためか、ドラゴンフルーツは櫛形に皮付きで切られていて、キウイは上下半分だ。
「そのトゲが付いているのは皮だから食べられないぞ。お前なら食べても平気かもしれんがな。そっちの毛が生えているやつは中身をスプーンで食べるんだ」
「へぇ~。美味いのか?」
「毛が生えているやつは甘酸っぱくて、トゲ付きのやつはそれのとても薄い味だと思うぞ」
「よくご存知ですね。この国でも珍しい果物ですのに」
シモンに説明していたら、料理の追加を持って来た給仕のメイドが話しかけてきた。
衣装がアラビアンなヘソ出しなため、少々目のやり場に困る。
気持ちを切り替えて、海やプールに来ていると思おう。ビキニに比べたら露出は少ないからな。
「婚約者への土産のために、色々と調べたんだ」
「まぁ、お優しいのですね。婚約者の方が羨ましいですわ」
嘘だけどな。
なぜこんな嘘を言ったかというと、結婚相手を探す令嬢達と同じ目をしていたからだ。
恐らくこの国でも珍しい果物を知っているイコール、そういう物を手に入れられる伝手があるくらいの家柄だと思われたのだろう。
婚約者と言った途端に、俺への興味が失せたかのような顔になったのが証拠だ。
国外に嫁ぐ事に抵抗がないのか、それとも国交のために国際結婚を推奨されているのか。
南国の明るい雰囲気に騙されそうになるが、しっかり裏の顔も持ち合わせていると認識させられ、明日の謁見に向けて改めて気を引き締めつつ食事を楽しむ事にした。