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153.

 状態異常を起こした部下達も、邪神の討伐完了を確認できたからと順番に治してもらっている。

 途中からは余裕がなくて、安全な場所に移動させられたものの、状態異常を解除するのは後回しにされていたからな。



「ジュスタ~ン!」



 剣を鞘に納めていたら、ジェスが駆け寄って来た。



「ジェス、怪我はないか? 痛いところは?」



「大丈夫! お母さんも怪我してないよ!」



「そうか、よく頑張ってくれたな。……ジャンヌもありがとう、魔法の援護のおかげで部下達に大きな被害を出さずに済んだ」



 ジェスの頭を撫でながら、ジェスの後から歩いて来たジャンヌにもお礼を言う。



「ふふ、妾達は主殿の従魔だからの、協力するのは当然というもの……。それに黒を助けられたのは主殿のおかげでもある」



「…………そういえば、ジャンヌも前は『青の』と呼ばれていたし、ジェスの父親は『黒』だろう? ジェスも名前がなかったし、ドラゴンには名前をつける習慣がないのか?」



「ふむ……、正確には名前をつける必要があるほど多くないと言ったところかの。それに全く同じ色の鱗をしたドラゴンを見た事がないというのもあるか……」



 そういえばドラゴンがこの世界に全部で何体いるのか考えた事もなかった。

 もしかして十体もいないのだろうか。



「ジャンヌは今いるドラゴンの数を知っているのか?」



「ふむ……、飛竜(ワイバーン)などの亜竜を入れぬのであれば古竜を含めて二十もおらぬはず。ドラゴンはそう簡単に卵を産まぬゆえ」



「へぇ、やはり長命種だからか? おっと、今はこんな話をしている場合じゃないな。状態異常や怪我は治したようだし、地上へ戻るようだ。第三騎士団、第一騎士団の後方に整列!」



 指示を出すと、邪神が消滅した場所を警戒していた部下達が一斉に走り出した。

 俺がジャンヌ達と話している間に息くらいは整えられただろう。

 第一騎士団や聖騎士達も隊列を整え始めているので、俺達も隊列に戻る。



「おっと……」



 歩き出すと足がもつれてたたらを踏んだ。

 そして自分の足が震えている事に気付く、どうやら今になって緊張の糸が切れてしまったらしい。

 ただの魔物討伐であれば何も思わないが、今回は物語である小説のラスボスで、俺の死亡フラグがこれでなくなったと考えてもいいだろう。



「ジュスタン大丈夫?」



 隣を歩いていたジェスが心配そうに見上げている。



「ああ、足場が悪いからジェスも気を付けて歩くんだぞ」



「うん!」



 元気な返事をして自然に俺と手を繋ぐと、引っ張るように歩き出すジェス。

 俺の状態に気付いていたかはわからないが、おかげで震えも止まり再び歩き出した。

 一行が地上に出ると、陽が傾きかけて薄暗い。今日はこのままここで野営となった。



「いや~、お貴族様が多いと灯り魔法で随分と明るいな!」



「そんなの聖女様がいるからに決まってるでしょ! こんな暗い森の中で男ばかりに囲まれていたら気が滅入っちゃうだろうし。ジャンヌがいるから女性が一人だけよりかなりマシだけど……。あれ? ジャンヌは?」



「さっきから見てないな。そういやジェスもどこ行った?」



 野営の準備が終わり、辺りには調理中の美味しそうな匂いが漂っているが、ドラゴン親子の姿がない事にアルノーとシモンが気付いた。

 さきほど少し今後の事を話すと言ってこの場を離れて行ったから、まだ話が終わっていないのだろう。



「ジェスの父親とは久々の再会のようだからな、積もる話もあるだろう。食事はいらないから移動までに戻って来るなら問題はない」



「あれ~? もしかして団長ジェスとジャンヌがいなくなるかもと思って寂しがって……なんでもないです」



 ニヤニヤと話しかけてきたシモンを睨みつけると、まるで野生動物に遭遇したかのように目を合わせずゆっくり後退(あとずさ)って視界から消えた。

 正直ジェスの父親に再会した事によって、ジェスとジャンヌが従魔契約を解除すると言い出してもおかしくない。



 …………うん、その時は快く送り出してやろう。

 親子が一緒にいられるなら、その方がいい。

 さっきの様子を見る限り、あの古竜が俺と従魔契約するとは思えないし、かと言って従魔契約していないドラゴンを王都に入れるわけにもいかないからな。



 食事が終わり、就寝時間になってようやくジャンヌとジェスが戻って来た。

 だがどうやらまだ話は終わっていないようで、言い争うというか、ジャンヌが古竜を叱っているような声が聞こえてくる。



「妾はできるところまで譲歩したではないか! これ以上はそなたの我儘でしかないわ! 数十年とはいえ子が産まれた時にも姿を見せなかったそなたにこれ以上口出しされる覚えはない!」



「それは我の不覚ではあるが……、行かなかったのではなく行けなかったのだ! あやつらに捕まったせいで!」



 どうやら痴話喧嘩の真っ最中のようだ。

 両親の喧嘩する姿は子供に悪影響だと言うが、ジェスは大丈夫だろうか。

 そう思って心配していたら、ジェスが笑顔で駆け寄って来た。



「ジェス、話は終わったのか?」



「うん! あのねぇ、お父さんが一緒にいたいって言ったんだけど、ボクはジュスタンとも一緒にいたいって言ったらお父さんがいい事教えてくれたんだ!」



「いい事?」



「えへへ、お母さんが驚かせたいからまだ秘密にするんだって」



 秘密か……。予想されるのは召喚魔法のアーティファクトがあるとか……?

 何にせよ、ジャンヌに聞こうにも今は無理なようだ。

 明日から王都に戻るためにまた移動が続くため、早々にジェスと二人で眠りについた。

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