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146.

「王太子! ジャンヌが邪神の居場所に近付いたというので、斥候の許可をいただきたい! ジャンヌとジェスに乗って私と部下一人が行きます!」



 第一騎士団の横を走り抜けてエルネストに追いつき進言すると、エルネストは驚いて振り向き、第一騎士団が騒がしくなった。

 予想はしていたが、ちらほら『竜騎士』という言葉が聞こえてくる。

 中には礼儀正しい俺に驚いている奴もいるようだが、この討伐ではエルネストの立場は俺の上司だからな。



「ヴァンディエール、それは危険ではないのか? 物語の竜騎士は鞍があったと思うのだが……。今そんな物はないのだろう?」



 心から心配そうに聞かれ、抱いていた一抹の不安が大きくなってしまった。



「提案してくれたのがジャンヌなので大丈夫でしょう。落とされる事はない……はず」



「ちょっと待て」



 エルネストが手を挙げて隊列を止めた。



「危険なのであれば許可はできないぞ!? 貴殿が我々にとって大きな戦力だという自覚はあるだろう!?」



「だからこそ先行しても、何かあった時に対処できると自負しております。どうか許可を」



 許可が出なかったせいで、ジェスの父親を助けるのに間に合わなかったらシャレにならない。

 どう説得しようかと悩んでいたら、隊列が止まったせいか馬に乗ったジェスとジャンヌが後方から現れた。



「主殿、どうした? 行かぬのか?」



「ジャンヌ……、王太子は俺がジャンヌに乗った時に振り落とされたりしないか心配なようだ」



 エルネストの懸念をそのまま伝えると、ジャンヌはおかしそうに笑い出した。



「ほほほ、妾が主殿を落とすわけなかろう。風魔法で落ちぬようにするゆえ問題はない」



「ボク上手にできるかなぁ……」



「大丈夫。ジェスが万が一シモンを落としても、この母が拾ってやろう。王太子、行っても構わぬな? なに、妾が飛んだ方に向かってもよいし、来なければそなたらが休憩している場所を上空から探して合流すれば問題なかろう」



 余裕のジャンヌとは対照的にジェスから不安になるひと言が出た。

 ジャンヌがフォローしてくれるようだが、シモンが聞いていなかった事に内心胸を撫で下ろす。



「安全なのであれば……許可しよう。だが無茶をしないように」



「わかりました。では馬を部下達に預けたら出発します。ジャンヌ、ジェス、後方に戻るぞ」



「うむ」



「はぁい」



 第三騎士団のところに戻り、馬をそれぞれ預けると、ジャンヌとジェスは開けた場所に移動して同時に鳴き声のような呪文を唱えた。

 その声は小さめだったが、近くにいた馬達は(いなな)いて動揺している。

 理由は呪文の声のせいではなく、突然建物のように大きなドラゴンが出現したせいだろう。



 久々に見たが、ジェスですらちょっとした二階建ての家くらいあるのだ。

 ジャンヌに至っては小さめの体育館くらいあるんじゃないだろうか。

 二体は地面に身体を伏せた。



『主殿、腕から登るか? 尻尾に乗ったところを背中に飛ばしてもよいが』



『ジュスタン! 尻尾で飛ばしてもらうの楽しいよ! シモン! 早く乗って!』



「待て待て! 飛べるジェスや身体強化できる俺ならともかく、シモンを飛ばすのは危ないだろう!」



 ジェスの言葉は聞こえていなかったが、俺の言葉を聞いてシモンがギョッとする。



「えっ!? どういう事だ!? オレって乗せてもらえるんじゃなく、飛ばされんの!?」



「いや、そうじゃなくて。ジャンヌが乗る時に腕を登るか、尻尾に乗ったところを背中に飛ばすと言ったんだが、ジェスが飛ばしてもらうのが楽しいから尻尾に乗れとお前に言ったんだ」



「ジェスの尻尾から背中に……? 面白そう! ジャンヌだったら捻挫か骨折くらいしそうだけど、ジェスの大きさならいけるだろ! ジェス~! 頼んだぜ~!」



 俺の心配をよそに、ジェスの尻尾の先に向かうシモン。

 尻尾の上に乗ると、しなるように動いた尻尾により二階の屋根ほどの高さに飛ばされたが、上空でくるりと一回転して背中に着地した。



 …………が、本来の大きさになったジェスの鱗は硬く、ツルリとしているせいで足を滑らせ、盛り上がっているジェスの背骨の部分に股間を強打したようだ。

 膝から崩れ落ち、両手で股間を押さえたまま顔からジェスの背中に突っ伏している。



 周りの第三の仲間達もその瞬間を目撃し、何人もが内股になっていた。

 仕方ないので身体強化でジェスの腕を踏み台にして背中に移動し、シモンの腰を拳でトントンと叩く。



「だから危ないと言っただろう。言う事を聞かないからこういう事になるんだぞ」



「ダメだ……、潰れた……。もうお婿に行けない……」



「血も出てないようだし、大丈夫だろう。今は体力温存のためにやめておいた方がいいが、どうしてもダメなら戻ってきてから治癒魔法でもかけてもらえ。風魔法で落ちないようにしてくれるらしいが、一応首のところの棘に掴まっておけよ」



 ドラゴン姿のジェス達には、頭から首の付け根にかけて棘のような突起がある。もしもジェスの風魔法がつたなくても、掴まっていればそう簡単に落ちる事もないだろう。

 シモンの復活を待って俺もジャンヌの背中に移動し、この世界で初めて大空へと飛び立った。

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