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139.

 リュカが来た事により、騎士団の編成を組みなおす事になった。

 それに加えて新しい宿舎が完成し、見習い達が引っ越しも決まって俺の忙しさに拍車がかかる事が決定している。

 そんなわけでリュカが到着した翌日、今後の事を話し合うべくオレールとリュカには団長室に集まってもらった。



「まずは王命である邪神討伐からだな。一般教養に関してはリュカは俺と一緒に家庭教師に習っていたから知っているだろう? その邪神復活が近い上に、ジャンヌ……母親ドラゴンのおかげで大体の場所が判明したから討伐準備を内密に進めよとの事だ」



「ちょ、ちょっと待ってくれ! 情報が多い!!」



 俺の説明にリュカが待ったをかけた。



「団長、まず邪神討伐自体が極秘扱いでしょうから、リュカは全く情報がないのでは?」



「そう! なんだよ邪神復活って! 邪神って御伽噺じゃないのか!?」



 そういえばそうか。ここのところ普通に邪神に関した話をしていたせいで、リュカも認識している前提で話してしまった。



「最近の話から始めた方がよさそうだな。とりあえず第三騎士団(俺達)がタレーラン辺境伯領のスタンピードを防いだのは知っているな?」



「ああ、それは領主様から……ヴァンディエール侯爵様から聞いたよ。あとはドラゴンと従魔契約して、その母親を探しに行って従魔契約した事だろ。同時期に王都での魔物騒ぎがあってから、東の領地へ支援要請で遠征に行ってたんだろ?」



「なんだ。ほとんど知ってるじゃないか」



 全て説明が必要だと思って身構えたが、どうやら思った以上に色々知っているらしい。



「それじゃあ聖女が聖国に行った話も知っているな?」



「聖女が現れた事は知っていたけど、それは初耳だ」



「…………どうして東の領地(フラレス)に支援に行った事を知っているのに、聖女が聖国に行った事を知らないんだ?」



 どうも情報が偏ってないか?

 首を傾げていると、オレールがクスクスと笑いながら口を開いた。



「ふふふ、もしかしてヴァンディエール侯爵は息子の活躍だけ話していたんじゃないんですか? 団長は自分に興味を持ってないと言っていましたが、案外親バカなのかもしれませんね」



「いや、そんな事あるはず……ない」



 実家に戻った時に、母上が俺に関する情報を仕入れていたと父上から聞かされた事を思い出し、一瞬言葉に詰まる。

 だが親バカというのはあの両親からかけ離れた言葉だと思う。



「親バカかどうかはともかく、ジュスタンが思っているよりはお前の事を大切に思ってるのは間違いないけどな。お前が支援要請を受けて功績をあげるたびに、それとなく俺達の耳に入るように話していたし」



「なんだ。やっぱり息子の活躍を自慢する立派な親バカじゃないですか」



「ゴホンッ、そんな事より話を進めるぞ」



 あの両親から愛されているなんて信じられないし、二人が囃し立てるせいで妙に気恥ずかしくなって咳払いをして誤魔化した。



「あ~、似てる似てる! 今の誤魔化し方、侯爵様にそっくりだった! 侯爵様がジュスタンの事を話して、周りが褒めるとそうやって咳払いして話を逸らすんだよな。そっか、あれは息子を褒められて照れていたのか。今のジュスタンを見て確信したよ」



「いいから! 話を進めるぞ!!」



「はいはい」



「わかりました」



 ニヤニヤする二人のせいで進みそうにない話を強引に進める。

 俺はおもむろにテーブルの上にこの国の地図を広げた。



「それで、だ。聖女が聖国に行った時に神託を受けて、邪神の復活が近い事を知ったんだが、昨日ジャンヌが妙な感じがすると大体の場所を教えてくれたんだ。それがここだ。陛下に報告したら内密に討伐準備を進めよと王命を受けた」



 二人の視線は俺が指差した場所に集中している。



「こんな場所に……。確かここってどこの領地にも属してないよな?」



「ええ、海に出る事もできない地形なせいで、開拓されずに放置されている場所ですね」



「討伐に関して部隊編成の組み直しを考えている。集団行動が基本になるだろうから、スタンピードの時と同じく攻撃重視の隊と、後方支援に集中してもらう隊と区別した方が戦局が安定すると思う。それに伴ってオレール隊は今後リュカ隊とし、オレールは普段は事務系の仕事を多めにやってもらう。邪神討伐時は聖騎士団との連携のために、聖女の護衛だな」



「え……っ」



 オレールから驚きの声が上がった。

 実働を減らして事務仕事を増やす事に関しては以前から言っていたが、聖女の護衛に関しては初めて口にしたからな。



「聖女は邪神討伐に同行するんだ。どうせ離れていたら心配で戦いに集中できないんじゃないか? そんな奴を前線に連れて行くほど俺は無能じゃない。それだったら聖女と一緒にいて、不測の事態になった時に第三騎士団の行動が読めるオレールが聖騎士団と一緒にいたらお互い邪魔になる行動を取る事も防げるだろう?」



「確かに……。お気遣いありがとうございます」



 オレールはソファに座ったまま膝に両手を置いて、深々と頭を下げた。



「…………なぁ、どうしてオレール副団長は聖女と離れていたら戦いに集中できないんだ?」



「それはな、このオレールと十七歳の(・・・・)聖女が恋人同士だからだ」



「ええぇぇぇぇ~~~~~!!?」



 驚くだろうと思って聖女の年齢を強調してやったら、案の定リュカは驚きの声をあげた。

 その声に驚いて、隣室にいた文官達がなだれ込んで来たのはご愛敬である。

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