表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/26

4.推しの説明

整理しよう。


伯父の邸に戻った私は寝る準備を整え、ベッドに腰掛けてすっかり頭の隅に追いやってしまったゲームの記憶を呼び戻す。



まずこの世界は乙女ゲーム『薔薇の乙女は君と恋をする』通称バラ君の世界で間違いがない。


ゲームはヒロインが王立ローズ学園に入学するところから始まる。

ローズ学園は伯爵以上の爵位を持つご子息ご令嬢が通える学校だ。

攻略対象者は5人。

王太子であるフィリップ殿下、王国騎士団長の息子アレン様、宰相の嫡男ギルバード様、ヒロインの幼馴染のオリバー様、そして臨時教師の王弟フレデリック様。

どのルートでも当て馬的な令嬢はいる。

殿下とギルバード様は婚約者が当て馬になり、他は婚約者はいないので同じ学園の女子生徒とか王女様がでてきたりする。

イベントごとをこなして会話を選択して好感度を上げていく簡単な乙女ゲームだ。

私がアレン様の声に陥落してからどれだけやりこんだか。



アレン様は元々表情の変わらない影のある人物として描かれている。

心に傷を持つため最初はヒロインにも不愛想だ。

それが天真爛漫なヒロインの明るさや優しさに触れていくうちに徐々に傷が癒え、ヒロインだけに見せる表情が増えてくる。

鋭い視線で睨みつけるお顔も素敵だが、それがどんどん甘さを帯びて最終は蜂蜜色の目をとろけさせるようにヒロインに微笑むのだ。


アレン様ルートの好感度百パーセントで見られるトゥルーエンドは甘い!

とにかく甘いのだ!

顔もセリフも極甘になっていく。

あの声であんなセリフ言われりゃ、そりゃあんた!

腰も砕けるってもんだい!


おっとつい言葉が江戸っ子に…。


だから本来はあの笑顔はヒロインのもの。

私はアレン様の笑顔を思い出し悶える。


ダメダメ!

今はゲームの内容だ。



姿勢を正し公式プロフィールをもう一度思い出す。

アレン様は心の傷を受けてから表情がなくなった。

確かお母様とお兄様を流行病で亡くして、その日を境に跡取りとして父親から厳しい教育をされて、とかだった…。


それは確かアレン様が13歳の誕生日を迎えてすぐ……。

あれ?もうすぐじゃん!


アレン様は私と同じ12歳。

プロフィールでは12月5日が誕生日だ。

今は4月。

流行病が王都で流行するのは来年に入ってすぐだ!

昔流行った病がこの国を襲って、確かかなりの人が亡くなっている。


そしてその流行病には特効薬がある。

それはこの国を襲った数か月後に判明するのだ。

男爵令嬢であるヒロインの領地で咲くベビーローズ。

何を隠そうこのゲームの名前の由来でもある薔薇の乙女はそこから来ている。


ベビーローズから抽出されたものが病の特効薬となり、その大量のベビーローズを王宮に献上した功績でヒロインの家は特別待遇で、伯爵位以上しか入学できない王立ローズ学園に入学してくるのだ。


でも待てよ。

ベビーローズ……。


普通の薔薇より二回りほど小さな可愛らしい薔薇。

色はふわっとしたベビーピンクで中心に行くほど濃くなる綺麗なグラデーションの薔薇だ。

ゲームのパッケージにも描かれているその薔薇を頭で思いだす。


ある……。

うちの領地にあるよ!ベビーローズ。

というか、そうとは知らずなんとなく可愛いなと思って植えた…。

結構繁殖力が高くて庭の端っこに植えたのにどんどん増えて行ったあれじゃない?


どっかで見覚えがあるな、とか思ったけど記憶の端に追いやっていたこのゲームのことだと気づかなかった。

苗木をくれた人が良く増えるからもらったって言ってた…。

そうだ南の方のダントスとか……。

ヒロインの名前は自分で変えられるからこの世界のヒロインの名前はわからない。

けど、男爵令嬢で貴族名はダントスだった……。


なんでそれでピンとこなかったのか。

自分の鈍感さが憎い……。



でもそんなことよりも!

ベビーローズがあるんだから、うちの領地も特効薬が作れる…?

そしたらアレン様のお母様もお兄様も死ななくても済む…。

さらにはもっとたくさんの命だって救えるかも!


そこまで考えてはっとする。

これってゲームの中を変えることになるのか、と。


でも、私はここで生きている。

決してこれはゲームの中じゃない。

私だって家族がその流行病にかかったら迷わず薬を使う。

知っている知識を使って何が悪い。

生死がかかっているのだ。

ゲームの強制力とかもラノベでよく見たけど、知ったことではない。

やれることはやる。

この世界の人たちは人形でもなんでもない。

ちゃんと生きて生活をしている人間なんだ。


ふんっと私は拳を握る。

だけどもその拳はすぐに力なくマットに降ろされる。


「でも、わからないんだよね……」



決意したはいいけど………。

ベビーローズがどうやって特効薬になるかは全く情報がなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ