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17.推しの甘さが加速中

皆さまごきげんよう。

推しとのファーストキスから数日。

未だ夢から覚めない、モブことリリベルです。



気を抜くと、夢のようなアレン様とのひと時を思い出してしまう。

シミ一つないきめ細かな肌。

甘く蕩けるような金色の瞳。

すっと通った鼻筋。

形のよい薄めの唇。

それがとても柔らかいことを私は知ってしまった。

柔らかくて温かい…。




現実逃避しかけたところで我に返る。

ここにきて少し状況が変わったので気を引き締めないといけないのだ。


まず学園を休学されていたギルバート様だが、ここで隣国に留学へ行かれたという発表があった。

そしてそんな留学へ行かれたギルバート様に代わって、フィリップ殿下の後ろに立つのは赤い髪の騎士服を着た男性。


なんとオリバー様だ。


アレン様から聞いたのだが、あの成人の儀の舞踏会からフィリップ殿下がオリバー様を気に入り側近に抜擢されたらしい。

ゲームの内容にあったかな?と不思議に思ったが、ここはもうゲームとは別世界だと割り切った私は気にすることをやめた。

現実世界として私が生きていく世界なのだ。



舞踏会のとき、マリア様はオリバー様にエスコートされていたけど二人はすぐに別行動していた。

ファーストダンスも踊ってはいないから特にお二人が恋仲ということもないのだろうか…。

マリア様の真意は私にはわからない。

誰か心に決めた方がいるのかどうか。



あの日、アナスタシア様がマリア様に婚約者のいる方への態度を注意したときからマリア様は目に見えて大人しくなった。

アナスタシア様からもあれから婚約者同士の諍いも減ったと聞いている。


あの後にフィリップ殿下たちと一緒にどこかに行ってしまったが、その時に何か殿下からも苦言を呈されたのかもしれない。

そこらへんはアレン様も仕事が絡んでいるのかあまり教えてはくれなかった。




そしてそんな私の最推しアレン様はと言うと、なんだか前よりもスキンシップがバージョンアップしたような気がする。


前々からスキンシップは多い方だが、なんとあの日以降そこにキスが加わったのだ。

触れるたびに、どこかしらにキスを交わしてくるのだ。

手の甲や指、頬や額や瞼。

そそそそれに唇にも……。

ファーストキスから数日、私何度もアレン様のあの形の良い唇と…………。

だめだ。

思い出すと鼻血が出そう…。


自慢じゃないが、前世でも恋愛のれの字もないのだ。

あるのは本の中の知識だけ。


私はもうアレン様のスキンシップを受けるだけでアップアップだ。

そんな私の様子すら楽し気に嬉し気にするアレン様……。


はぁ………、尊すぎてしんどい。







成人を迎えた私は学校が休みの日はアレン様のご実家に泊まるようになった。

成人を迎えれば一人前と認められ結婚も可能な年齢であることから、婚約者であれば異性の家に泊まりにいくことが許されている。


これは殿下の側近として毎日忙しくされているアレン様たってのお願いなのだ。

学校でも私との時間が取れないから、せめて休みの日は1日一緒にいたいと言ってくださったのだ。

私としても推しからそんなお願いをされたら断る理由もない。

アレン様のご両親も歓迎してくれているので私もそれに甘えて毎週のようにお泊りにきている。


あ、お泊りといってもそんな、あれですよ。

ああああいう大人なことは何もない。

寝るのは私は客室でアレン様は自室ですからね。

貴族たるもの結婚までは清い関係です。



まあ、とは言え明るいうちは私もアレン様の自室に招かれることはある。

こ、婚約者ですから。

多少のいちゃいちゃは……。




そう何を隠そう今も私はアレン様の膝の上。

広いアレン様の自室のこれまた大きいソファにぴったりと密着して座っている。

アレン様はがっちりと私の腰をホールドして逃してはくれないのだ。


目の前の机には美味しそうなお菓子が並べられているけど、私はそれよりも至近距離のご尊顔に釘付け。





「リリ、好きだ」

少し掠れた声がセクシー……。

身体から力が抜けそうになるも、腹筋に力を入れて耐える。


「わ、私もすす好きです……」

私がどもりながらも精一杯伝えると、ふわりと笑ってくださる。


「この気持ちに偽りはないから。ずっと信じていて……」

笑った顔が少し不安げに揺れて、そのまま額を合わせてくるアレン様。


「…アレン様?」

普段とは違う様子を感じてアレン様の顔を見ると、困ったような顔をしてなんでもないというように顔を振った。

そして両手で私の頬を挟むと、優しく唇を合わせてきた。


そうなると私はそれ以上何も言えず……。

優しいキスを受けるのにいっぱいいっぱいになっていった。




幸せなのに、この時はなぜか落ち着かない気持ちに胸を締め付けられるという奇妙な感覚に囚われた。





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