代理戦争@駅で
俺が二度とはもう会いたくないやつは俺の気持ちなどつゆ知らずに、いや流石に後夜祭であれだけ言ったのだから知っているだろうから、それなのにわざわざ嫌がらせのように俺の目の前に近づいて来ようとした。
それを一緒に帰っていた石塚と5人の女子が俺の前に立つことで防いでくれた。
ただ、それでもやつは諦めることなく壁となってくれている一緒に帰っていた女子越しに俺に話しかけてきた。
「ねぇ、勇樹くん」
「...」
「お願い。話だけでも聞いて」
「嫌だ」
俺はすげなく断った。
「っ、それでもt」
「ねぇ、小泉さん」
それでも諦めようとしない裏切者に石塚が声をかけた。
「なんでしょうか?今私が用があるのは勇樹くんだけなのですが」
やつは声をかけた石塚には俺に先程声をかけてきたときとは天と地ほどの差がある声で冷たい声で返した。
それに負けじと石塚は笑って質問を始めた。
「小泉さんって海川くんのこと裏切ったんだよね。それなのになんでまだしゃしゃり出ようとしてるの?」
「...そちらこそなぜ私と勇樹くんの個人的な問題にしゃしゃり出てこようとするのでしょうか?」
何故か二人が火花を散らし始めた気がする。
もう俺が忘れたいことで。そんな俺の気も知らず、会話は進んでいく。
「ほかの男と致した奴が何をおっしゃているのでしょうか?流石違いますね」
「...あれは勇樹くんのためだったの!あのとき、そう言ったでしょ!」
―気持ちわる...
一緒に帰っていた女子の一人がそう漏らした。本当にその通りだ。
俺は心の中で騒ぐ。
うるさい。もうやめてくれ。俺はそう言ったじゃねぇか。あそこであの時お前は逃げたのになんでまた来た?
「ねぇ、勇樹くん。お願い。許してとは言わないから。もう一回だけチャンスをちょうだい」
やつは俺から離れて石塚と話していたはずなのに俺に会話を再び投げてきた。
一度突き放しただけじゃ足りなかったのか?
俺はやつを再び突き放すべく声を出そうとした。
ただ,,,、俺の口から声は出てこなかった。出てきたのは息のみだった。
足が震える。
(まずい...。)
俺の呼吸が荒れだす。
急に様子の変わった俺を石塚と女子たちが不安げに見つめてくる。
もう耐えきれない、そう思ったときに俺は唐突に後ろから腕を誰かに掴まれた。俺の意識が持ち直す。
誰だ? 少なくとも俺の前にいる裏切り者でも一緒に帰っていた女子たちでもないことだけは分かった。
俺はゆっくりと後ろを振り向き、そして呟いた。
「菜月...」