最初(優花サイド)
優花さん視点です。過去の話
ー優花サイドー
私と勇樹くんが出会ったのは中学校の時だった。
私は小学校の卒業とともに、ここに引っ越してきたので誰も知り合いがいなかった。
中学校の入学式の時、誰も知り合いがいなくて、周りが集まってワイワイしている中、一人でポツンと座っていた私に話しかけてくれたのが当時隣の席だった勇樹くんだった。
その後、教室に溶け込めた私だったが、教科書を忘れた時などは勇樹くんに見せてもらったり、たまに話し相手になってもらったりした。
その頃からだろうか、私は勇樹くんのことが気になり始めていた。
そして、その思いを秘めたまま中二になった私は勇樹くんと同じクラスにしかもまた隣の席になれたことに密かに歓喜した。
私はその時から彼に分からないところがあるから教えてくれと言ったりしてそれとなく彼に接近していた。
中二になってからからおよそ三ヶ月が経った頃、放課後に教室でクラスの女子がこうヒソヒソと陰口を叩いているのが聞こえてきた。
「ねぇねぇ、最近あの子、海川くんに近寄りすぎじゃない?」
「ねぇ〜、本当。可愛子ぶってる」
それを聞いた私はショックでしばらく学校に行けなくなった。
しばらく学校に行けなくなったある日、私に勇樹くんがプリントを持ってきてくれた。
「おい、小泉。プリント」
そう言って海川くんは私にプリントを渡して更に言った。
「なんかあったんだろ」
「えっ?」
「学校来なくなった理由。体調が悪いとかじゃなさそうだから…いj…、いやなんでもない。じゃあな」
彼はそう言って帰ろうとしたが私は彼に声をかけて引き止めた。
「ちょっと待って!」
「?」
「いや、その…」
そこで言い淀んでしまった私は自分が情けなくなって涙を溢してしまった。
「おい、大丈夫か?」
彼はそう言って綺麗に畳まれたタオルをポケットから取り出した。
「嫌だったら言ってくれよ」
彼はそのタオルで私の顔を拭いてくれた。
そして、ごめんと言って静かに私を抱擁してくれた…。
その後、泣き止んだ私は彼をリビングに一旦上げ、お茶を出し、帰るという時になり、私は玄関の外まで見送った。
そこで私は言うつもりはなかった言葉を彼に自然と吐露してしまった。
「…ねぇ、海川くん」
「ん?」
「ありがとう。…好きだよ」
「…えっ?」
後戻りできないところまできて私は正気に返った。だけど、私はもう止まれなかった。
「…海川くん、私と付き合ってください!」
「…俺なんかで良ければ」
こうして私と勇樹くんは付き合い始めた。
私は彼の手助けもあり、学校に再び通えるようになった。
彼と一緒にいれた時間は幸せだった…。
ただ、私はどこかで階段を踏み外した。