陰の支援者(妹サイド)
妹視点です。
ー妹サイドー
私が中山くんがお兄ちゃんを裏切っていると気付いたのは大体ニヶ月半前、たまたまそこら辺で中山くんと会ったことがきっかけだった。
「ねぇ、亜美ちゃん、俺と付き合わない?」
「えっ?…先輩、彼女いますよね」
「ううん、まぁ、そうなんだけどね〜、ちょっと飽きちゃって」
「はぁ…」
その時、私は裏切られている菜月お姉ちゃんを可哀想と思い、その夜電話をかけた。
「お姉ちゃん、お姉ちゃんの彼氏さん、私のことナンパしてきたんですが…」
「またやったの?」
「またってことは…やらかしたことがあるんですか?」
「…あんまり話しても気分のいいものじゃないし、傷付くかもしれないけど聞く?」
ただの好奇心で私は聞いた。
ただ、その後に菜月お姉ちゃんが話してくれたことは到底許せるものではなかった。
「お姉ちゃんの彼氏がお兄ちゃんの彼女とも付き合ってる!?」
「…ええ」
「お姉ちゃんは何か言ったんですか?」
「いいえ。面倒臭いもの。…あと、下手に突っ込んで勇樹くんに迷惑をかけたくないしね…」
私も菜月お姉ちゃんも過去にお兄ちゃんに助けてもらったことがあった。
「お姉ちゃんどうするんですか?このまま放っておくんですか?」
「…一応、案自体はあるわ…協力してくれる?」
「お兄ちゃんが関わってるんだからもちろん!」
「私の案はこうよ…」
そして私はお姉ちゃんの案にのり、彼と付き合い始めた。
この計画はお兄ちゃんが主体で動く必要があった。
私と菜月お姉ちゃんはあくまでもサポートする側、私はお兄ちゃんの行動の把握のためにマイクという名の盗聴器、カメラという名の盗撮機を仕掛けた。
私はそれでお兄ちゃんが裏切りを知ったことを知り、ヤッホー掲示板のことも知った。
そこで私は陰ながら支える妹になった。
そしてさらに、ここまでする必要あるか?とお姉ちゃんからも言われたが、自分の身も危険に晒してお兄ちゃんを救う計画と運命共同体になることで自分を追い詰めるために私は自分を中山くんに売った。
この言い方は語弊があるかもしれない、私側からすると形だけ付き合い始めた。
その時はまずまずお兄ちゃんに見つからなければ大丈夫だと、安全に中山くんの意図を、菜月お姉ちゃんだけでは把握しきれない、浮気という行為を犯している相手だけに伝える情報を、心境を探り出せると思っていた。
ただ、もちろんそのうち彼に体を求められた。一応、それについても策をもらっていた。
「私、まだ12歳なんですよ…。13歳になるまで待ってくれませんか?」
13歳という年齢が性的同意年齢なので、それまでは例え私が彼に身体を許したとしても違法行為だった。
彼は13歳まで我慢すると言ってくれた。ちょうどその日お兄ちゃんに見つかった。
お兄ちゃんの前では頑張って彼氏を一途に愛する女を演じたが、正直苦しんでいるところを見たくなかった。ただ、これはお兄ちゃんを強くするため。そう私は割り切ろうとしたが、どうしてもお兄ちゃんの顔がよぎった。
しかも私はその日の夜、お兄ちゃんが死ぬ夢を見た。
そこで私は決めた。中山くんと会うのはやめようと。
それ以降私は中山くんに会っていない。会いたいと言われても、13歳まで待ってと言い続けた。
また、私はその夢で怖くなり、お兄ちゃんを少しでも目に見える形で救うことにした。
私がお兄ちゃんを支えてることを仄めかすために、私はわざわざその法則を利用した暗号を作った。
その日の午後、お兄ちゃんが男の子を連れてきた。そこで屈して事情を私は話すわけにはいかなかった。
だから私は泣いて誤魔化した。
その後、何度かお兄ちゃんが挫折しかけた。
私はお姉ちゃんと情報を共有しながら、一緒にお兄ちゃんを支えて、強くした。
お兄ちゃんのことを慰めたり、添い寝をして安心感を与えた。
正直、制裁が終わった今でも正しかったのかは分からない。
お兄ちゃんを最初から綺麗に支えていれば、そもそも中山くんと付き合い始めなければ、お兄ちゃんがここまで苦しみことはなかったかもしれない。
でも、私は夢で見たような展開にならなくて良かった。
そう思っている。