全部知ってた
俺は風に吹かれながらも無事に自宅に着くと部屋に向かった。
部屋に入ると俺はベッドに倒れ込み、天井を向く姿勢になり腕で目を覆った。
しばらくしてお風呂に入るかと起き上がると俺の部屋のドアが叩かれる。
「お兄ちゃん、今ちょっといい?」
「ん、いいけど」
俺がそう言うと妹が少し緊張した様子で俺の部屋に入ってきた。
「どうした?」
「…お兄ちゃん、私、今までお兄ちゃんに隠してたことがあるの」
「…何を?」
「…実はヤッホー掲示板の相談相手…、私なの…」
「…えっ?」
あの、「恋愛強者」さんが、俺の翼が亜美?ん、俺は妹に相談して、救ってもらったのか?
「ごめんなさい。今まで隠してて」
「…」
亜美は俺が無言になったことで心配になったのか聞いてきた。
「怒ってる?」
「…いや、その…、なんか唖然とさせられたっていうか、なんていうか…」
「…信じてくれるの?」
「別に嘘つく意味もないし、俺がヤッホー掲示板使ってること自体言ってないからな…」
「…」
亜美との会話に一旦沈黙が訪れている間に、俺はなんとか考えをまとめて話し始めた。
「とにかく、俺を最初から支えててくれててありがとう。亜美がいなかったら今の俺はいないよ」
「ううん、全然私なんかはまだまだ、お兄ちゃんに敵わないから」
亜美の最後の言葉が分からなかったが俺はスルーして続ける。
「いや、亜美がいなかったら多分もうこの世にいなかっただろうし。人の命を、俺の命を救ってくれたんだよ。それって普通にできることではないよ」
俺はそう言って亜美の頭を無意識に撫でる。
亜美は顔を赤らめた。
「あっ、ごめん」
「お兄ちゃんならいいよ。あと、私からもいい?」
「いいけど」
「私ね、お兄ちゃんが裏切られてること知ってたんだ。お兄ちゃんが知る前から」
「…」
俺は何も言わずに亜美に続きを促す。
「中山くんが優花さんと付き合っているのも知ってたの。それなのに私は付き合ってた。ごめんなさい」
「…俺のためだったんだろ」
「…」
「結局、助けてくれたんだ。終わりよければ全て良しだ。ありがとう」
俺はあまり暗い話をしたくなかったので話を切り上げた。
「…うん。…休んでるところ、邪魔しちゃってごめんね」
そう言って亜美は俺に部屋を出て行った。
「今度こそ風呂入るか」
俺は俺しかいない部屋でそう呟き、お風呂の準備をし、風呂場に向かい、シャワーを浴びていた。
俺は知らなかった。
俺がお風呂に入っている間に亜美が部屋に入り、何やらマイクとカメラらしきものを回収していくのを…。
恋愛強者とかいう厨二病丸出しの名前だけになった理由は元々振っていた名前の「イマ」が何故か消えていたためです。本来ならこれも後ろから読むと本名というトリックを仕掛けていたのに…。僕の15話の暗号の意味が…。
16話投稿してから気付いたので改稿で後から付けるのも憚られて付け加えられなかった現実…。
明日、改稿をさせていただきます。(65話も明日改稿させていただきます。)
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