決着!N
俺の手が奴の頬を捉えたと言っても本気で殴ったわけではないので、奴は漫画みたいにふっ飛んでいくことはなく、よろけただけだった。
ただ奴の目は驚愕と怒りに染まり、またこっちに突っ込んでこようとしたので俺は構えた、しかしそれは不発に終わった。
「ちょっ、放せって!」
野中先輩が再びNを羽交締めにした。
「海川、下村さん、すまん。大丈夫か?」
「ええ、勇樹くんのおかげで」
「海川、もうこいつ危ないから退場させるぞ」
「先輩、最後に一つだけ聞きたいんです。こいつに。だからもう少しだけお願いします」
どうせ答えてもらえないだろうが。俺はそう思いながら捕まえられている奴に聞いた。
「なぁ、なんで俺の彼女を寝取ろうと思ったんだ?苦しめたかったのか?それともお前も飢えてたのか?」
「…」
「言わないんだったらいいさ」
「あの女が自分から寄ってきたからさ。お前がヘタレて手を出してくれないって。馬鹿な女さ」
何故か急に話しだした奴はそう言ってカラカラと笑った。
「あの女、自分から腰振ってきてさ、ハハハ」
俺はこの言葉を聞いてなんで奴が急に話しだしたのか理解した。俺のことを苦しめたいんだな。俺は奴の言葉にこう返答をした。
「そんなこと言っても、もう変わらないぞ」
「あっ?」
「もう苦しまないんだって言ってるんだ。もうどうでもいい」
「…」
奴は図星だったのか黙りこくった。
「俺から聞いといてなんだけどそれだけか?」
「…」
「じゃあ、先輩、もうこいつ追い出し…あっ、そういえば忘れるとこだった」
俺は右手で拳を握りしめて、腹に一発ぶち込んだ。
「グッ…」
奴は呻き声をあげた。
「亜美の分」
「…そういえばそうか。お前妹にも裏切られてたんだもんな」
奴の言葉を聞いた俺は笑って奴の頬を掴んだ。
「いい加減にしろよ。ゴミが」
「お前の妹も大概だよなw自分の兄を苦しめた元凶と付き合ってたんだからな。どうだった。妹にも裏切られてたと知った時は?」
「黙れ」
「おい、どうなんだよ」
「黙れと言っているのがわからないみたいだな」
俺は今度は左手を握りしめて奴の腹に叩き込んだ。
「ウッ…、どうだっt!!!…」
俺が利き手で腹パンを入れてもまだ口を閉じれなかった男の急所を俺は思い切り蹴った。
奴は口を開けたまま、首をガックリ落とした。
「先輩、ありがとうございました」
「じゃあ、こいつ連れて行くぞ」
そう言って先輩は奴を引き摺っていった。
相馬が寄ってきて俺に何か感慨深そうに話しかけてきた。
「これで終幕か…」
「いや、まだ残ってる」
「?」
「菜月と和田にも決着をつけさせる」
「ああ…」
俺はあくまでも俺は何も言わないと言っただけだ。
俺以外が何もしないとは言っていない。
「菜月、どうする?」
「…私も聞きたいことがあるからお願い」
「じゃあ、行くか」
そうして俺と菜月は和田の下に向かった…。