表と裏
そして、一週間後、俺は優花の家にプレゼントを持って向かっていた。
優花の家に着き、インターホンを鳴らすと二回目で優花の母親が出てきた。
「あら、勇樹くん、いらっしゃい。優花〜、勇樹くんいらしたわよ」
彼女の母親は「どうぞ上がって」と言って俺を家に上げてくれる。俺は「お邪魔します」と一言断り玄関に上がる。
俺が玄関に入り、少しすると優花が階段を降りて顔を見せた。
「おはよう、優花」
「おはよう!勇樹くん!」
俺は「では」と彼女の母親に断り、優花に連れられて優花の部屋に入った。
優花の部屋は綺麗に片付いていて、俺が付き合いたてにプレゼントした熊のぬいぐるみがベッドにちょこんと座っているのが見えた。
「優花、まずは誕生日おめでとう。あと、これプレゼント」
俺はそう言い、彼女に手渡しで渡す。
「ありがとう、勇樹くん!これ今開けてもいい?」
「ああ、もちろん」
俺がそう言うと優花は紙袋から服を包んだ袋を取り出し、その袋も開けた。
「服?」
「ああ、ペアルックだ」
俺はそう言い、俺の服を指差す。
俺が選んだペアルックは白を基調とした布に右目が「×」左目が「ー」になっている熊が描かれているパーカーだった。
「ありがとう!今から着てもいい?」
「もちろんどうぞ、…一回部屋から出た方がいい?」
「見たい?」
「いや、今は遠慮しておくよ」
俺はそう言い、部屋を出る。
普通なら健全な男子高校生に見せるみたいな危ないことをするなと言うが、俺の場合は彼女の体を見たら、彼女がNに抱かれたことを嫌でも考えさせられ、更におかしくなってしまう。
怒りやその他諸々の感情で俺が壊れてしまうかもしれない。
何かしでかしてしまうかもしれない。
俺はそんなリスクは背負いたくなかった。
俺がそんなことを考えて部屋の外に立っていると中から優花が「もういいよ」と言う声が聞こえてきて俺は再度優花の部屋に入った。
俺が部屋に入ると彼女は何故か帽子を被り、ウエストポーチのようなものも型に掛けていた。「似合ってる?」と俺に聞いてきた。
「もちろん!その熊がいい感じだね。やっぱり、優花がパーカーを着ると若干ダボダボ感があって可愛いな。その帽子とかポーチとの相性も良さそうだし。良かった、サイズとか合うか分かんなかったから」
俺がそう言うと彼女は少し恥ずかしかったのか頬を赤らめ俺から目を離した。
昔ならこの表情も楽しめたのになぁと俺は自嘲気味に気付かれないように笑う。
そして、彼女は俺が渡した紙袋を畳もうとして何か違和感に気付いたようで袋を覗き込んだ。
「あれ、まだ何か入ってる?」
彼女は紙袋の中に手を入れて俺があらかじめ入れた何かを取り出した。
「ハンカチ?」
「ああ」
俺はペアルックだけでは足りない気がしたのでYの文字が刻まれたハンカチを仕込んでおいた。
「勇樹くん、ありがとう!その…写真撮ってもいい?」
「ああ」
俺がそう言うと彼女は俺の肩に頭を乗せてくる。俺は気にしないようにしてそれを受け入れスマホを取り出し、俺と優花を撮った。
俺はその自撮りをした写真を優花にメールで送る。
何も知らない周りから見たらとてつもなく羨ましいのかもしれない、ただ俺は同じ空間に二人でいることすらきついので彼女が隣にいるのは余計に厳しかった。
しかも今回は体調が悪いわけでもない。
今までとは状況が違う。
果たして俺は乗り切れるのだろうか?