転機
俺は相馬に「屋上に行こう」と言い、屋上へ一緒にいった。
そこで俺はさっきのチャイムと重なってしまっていたセリフの内容を尋ねた。
「相馬、さっきなんて言ってたんだ?」
「いつの話?」
「チャイムが鳴った時」
「ああ、君は甘すぎるって言ったんだ。…この際だ。言わせてもらうぞ。普通ここまでヘタれるか?NTRれたら本能で動くだろ。なんでそこまで冷静なんだ?」
「…」
そうか、俺は甘いのか…。確かに少し俺は行動が曖昧で行動力もない方かもしれない。ただ、そこまで言われると俺も少し堪えた。
俺はいつもより近くに感じられる雲一つない空に手を伸ばし、目で影を作り空を仰ぎ、息を吐き出す。
俺のその様子を見て相馬は慌てたように付け加えてくる。
「すまない。少し言い過ぎた。ただ僕視点でも君は少しもどかしいというのは分かってくれ」
「…ああ、分かったよ。やってやるよ」
「…?」
「俺もやるときはやるってところを見せてやるよ。誕生日プレゼントは相馬の案のペアルックを採用する。とことんやってやる」
「…なんか申し訳ないな…」
「気にするな。こうしてもらえなければ永遠に続けるところだった。ありがとう」
「…どういたしまして?」
「わざわざ時間とらせてごめん。後は自分でなんとかする」
本来はこの後亜美と俺の翼からもたらされた悩みについて相馬に聞こうと思っていたが、自分でもう少し考えてみることにした。
少しでも、自分でやっていけるように。
そして放課後、俺は家に帰ると優花にメールを送るためにスマホを取り出した。
来週の優花の誕生日を祝うためのデートを取り付けるためだ。
ちょうど来週の今日が祝日なので俺は「来週の今日、暇?」と打ち込み送ると、すぐに返信が返ってきた。
優花の返信には「暇だよ」と打たれていた。
俺はそこに「来週デートしない」と打ち込み送った。
すると、こちらもまたすぐに返信が返ってきて「いいよ」と言われたので俺は家を出てペアルックを買いに、ちょうどこの前優花と本を買いに行った書店の入っているショッピングモールまで歩いて行った。
ただ、今回は優花にも菜月にも会わなくてすみ、無事に到着することが出来た。
俺がお目当てのお店に入ると、俺は少し唖然とさせられた。
そこには和田と和田の隣によく分からない身長の高い大学生っぽい男がいたからだ。
俺は少し離れてスマホを取り出し、写真を撮ると最悪見つかってもよかったが、見つかると面倒臭くなるし、どうせ話しかけてこないだろうと俺は判断し素知らぬ振りをしながら服を選びにかかり、優花に合いそうなものを選び、会計をしに行こうかと思ったところで話しかけられた。
「あれ、海川くん?」
「…ああ、そうだけど、…和田さん」
「海川くんもこういうところ来るんだ!」
「…ああ」
俺はそう言い、早く逃げるために話を逸らす。
「彼氏、待たせてるんじゃないのか?」
「ああ、そうだった、ごめんね。話しかけちゃって。…私と彼が付き合ってるってことは秘密でお願い」
彼女はそう手を合わせて店の外で待っている男の下に走っていった。
「女って怖えな」
俺は更に「どいつもこいつも浮気してんのか」と冗談半分に呟き、俺の分と優花の分のペアルックを今度こそ買いに会計をしにいった。