贈り物
俺は教室を出て相馬に会いに行った。
隣の教室に入り、相馬の席まで行く。
「相馬。ちょっといいか」
「ん、いいけど、どうかしたの?」
「ああ、ちょっと…」
俺は相馬が聞き取れるギリギリの声量「ここでは話せない、屋上」と言い、教室を出た。
俺が階段を登りきり、屋上につながるドアを開けたところで相馬が追いついてきた。
「時間がないから手短に頼む」
「すまない。もう二限が始まるって時に。…あと一週間で優花の誕生日なんだけど、何あげればいいと思う?」
「…随分といきなりだね…。うーん、あと一週間なのか、惜しいなぁ」
「…何がだ?」
「いや、あと二週間で復讐なんだから、もう一週間遅ければよかったなぁと。復讐の道具の証拠動画とかをUSBとかに入れてラッピングして渡せば最高の誕生日になったんじゃないかと」
「…」
俺には相馬の言い方がいつもよりきつい気がしたが、俺がそれについてツッコむ前に相馬は続きを話し出す。
「まぁ、いいや。それでプレゼントの選択肢としては何があるんだい?」
「一応、調べたらアクセサリーとかペアルックとかが人気だったんだけど…、なんかな…。アクセサリーは高いから勿体無い気がするし、ペアルックはちょっとな…」
「…手切れ金だと思えばいいのに…」
「ん、なんだって?」
俺はボソボソと相馬が呟いた言葉を聞き取れず聞き返した。
「いや、なんでもない。…うーん、ペアルックとか渡すと愛とかが感じれて復讐の前にいいんじゃないか?どうせ地獄に堕とすなら上げてから落とした方がいいし」
「…」
大分怖いな。言ってることが。
「なんだい?その目は。まるで、なんだろうな…、魔王…を見ているような顔かな」
俺は相馬の例え方にツッコミは入れずに、俺って顔に感情が表れやすいのか?そんなことを一瞬考え、とりあえず相馬のセリフに対して返答をする。
「よく分かったな…。いや、ちょっと怖いなと」
「…多分これくらいが普通だよ。NTRはゴミなんだから。むしろなんで本人がなんでそんなに冷静なのかが気になるよ」
「…俺は甘いのか?」
「それは正直に答えてもよくて?」
「…ああ、頼む」
「…君はもの…」
相馬がそう言いかけた瞬間に二限の始まりを告げるチャイムが鳴り、相馬の言葉を聞き取ることが出来なかった。
「まぁ、また後で」
チャイムが鳴り終わると相馬はそう言い、俺が止める暇もなく屋上から出て行ってしまう。
「…ああ、どうしよ」
俺は頭を悩ませながら階段を駆け下り、教室に駆け込む。
幸運にも教師がまだ来ていなかったので遅刻はしなかったが、授業にあまり集中できなかった。
運悪く教師に当てられて俺は答えることが出来ずに、「珍しいな、体調でも悪いのか?」と軽く心配された。
そんな感じで二限を乗り切ると、俺は再度相馬の教室に行こうとしたが、思わぬ妨害が入った。
健汰が俺が教室を出る前に寄ってきて話しかけてきたのだ。
「なぁ、勇樹。菜月のプレゼント、今度一緒に選びにいってくんね」
「…いつ?」
「次翌々週くらいかな。来週はお前どうせ誕生日祝うだろ、それで再来週は一年に一度のビッグイベントがあるからな」
お前に翌々週はないけどな。俺はそう思いながらこんなことをしている時間はないので適当に返事を返す。
「多分、予定が入らなければ大丈夫だと思う」
「じゃあ、頼むわ」
奴はそう言い自分の席に戻っていく。
俺はそれを見て足早に教室を出て、再度相馬の教室に向かっていく。