新たな悩み
亜美と俺の翼の言葉により完全に放り出された形となった俺は電気を消してベッドに潜り込み、暗闇の中で考えることにした。
ただ、俺が考えたところで何も出てこなかった。
俺は諦めて目を閉じて眠りについた。
翌日、俺はいつも通りの時間に起き、朝ご飯を食べ、家を出た。
学校に行くと、先にNが来ていて、俺が席に着くと同時にこっちにやってくる。
「なぁ、勇樹。ちょっと相談してもいいか?」
「…ああ、別にいいけど…、健汰」
「もう少しで、…といってもあと一ヶ月ないくらいだけど、それで菜月の誕生日なんだよ」
「ああ」
この奴の言葉で俺は思い出した。
あれ、優花の誕生日もうすぐじゃね。
俺は奴に「ちょっと待ってくれ」と言い、スマホを開き、カレンダーを確認する。
優花の誕生日を示す赤色の丸がちょうど一週間後に付けられていた。
俺は奴の相談に乗ってやるほどのお人好しとしての余裕は消えた。いや、元々余裕など存在していなかったが、完全に消えた。
「やべ、あと一週間じゃん」
「何が?」
「優花の誕生日」
「ああ…、忘れてたのか?」
「…」
こいつに言われるのは癪だったが、事実だったので唇を軽く噛み、頷く。
「どうすんだよ」
「どうするもこうも、今から考えるさ、…お前も頑張れよ」
俺のこと急かしている余裕があるのは今だけだぞ。もう二週間後には地獄を見るんだからな。そういう意思を込めて俺は言った。
奴は「ああ」と言い、席に戻って行き、スマホを弄り出す。
俺はそれを見届け、机に突っ伏し必死に考え始める。
突然俺の前に立ち塞がった優花の誕生日という壁をどうするか。
誕生日プレゼントとかどうするべきなんだ?
去年は俺は無難にハンドクリームを送った。
流石に被りはなしだ。
女子高生の欲しがるものってなんだ?
アクセサリーくらいしか俺は知らなかった。
俺はNの真似をして、スマホを弄り、「高校生の彼女への誕プレ」と検索をかけた。
そして、一番上に出てきたサイトを押した。
俺はそれを見て唸らされる。
「王道はやっぱりアクセサリーだよな…。ペアルックはちょっとな…」
俺はしばらくスマホと睨めっこをしていたが、決めることが出来ないまま始業の鐘が鳴った。
一限が終わると俺は自分から、認めたくはないが本当にモテる奴に話しかけに行った。
「なぁ、健汰、誕プレ何がおすすめとかあるか?」
「うーん。そうだな…。俺はお揃いのブレスレッドにする予定だけど…、去年は何にした?」
「ハンドクリーム」
「そうか…それならそいつはなしだな…。まぁ、無難にアクセサリー系統がおすすめだけどな」
「…ありがとう。もう少し考えてみるわ」
俺はこれから別れる予定の、裏切り者にわざわざあまりお金を使いたくはなかった。
そのため、あまりアクセサリーは望ましくなかったが…。
やっぱり、事情を知っている奴に相談するしかないか…。
俺は教室を出て、隣のクラスに向かった。