どうしたものか
その後、俺はトイレを出て、優花を優花の家まで送った。
帰りに先程の俺と菜月が話していたところを横切ったが、そこにはもう菜月はいなかった。
「ごめんね。勇樹くん、わざわざ送らせちゃって」
「いや、もうだいぶ暗くなってきたしさ、不安だから」
「ありがとうね。バイバイ」
彼女はそう言い、俺に抱きつき頬に軽く唇を当てて、顔を朱色に染めながら手を振り家に入っていった。
俺はそれに手を振り返し、彼女が家に入るのを確認すると座り込みそうになった。
ただ、俺はなんとか堪え、すっかり暗くなった空の下を歩いて、家まで帰った。
家に着き、部屋まで入ると俺はカーペットの上にぶっ倒れた。
色んな意味で疲れていた。
しかし、やらなければいけないことが俺にはあるので起き上がる。
俺はスマホで菜月に電話をかけた。
なかなか出なくて心配になっていたところ、五回目の着信音が鳴ったところで彼女は出た。
「はい、もしもし」
「ああ、もしもし、菜月?」
「そうだけど…、勇樹くん、何かあった?」
俺はいつも通りの声で話しているつもりだったのに、俺の今日の出来事に一瞬気付かれたかと思ったが、すぐに違うことだなと判断して言う。
「いや、そうじゃなくて…、今日はごめん」
俺は今日は謝りっぱなしだなと思いながら言った。
「もう気にしてないから謝らないで。…今言うべきことは違うでしょ」
「…ありがとう」
「どういたしまして」
「…それで…、この空気でこの話するの間違えてるかもしれないけど、あの後の話を聞かせてもらってもいいか?」
「…特に話すこともないけど…、あの後ちょっとしたら帰ったから」
「そうか…それならいいや」
「じゃあ、バイバイ。切るね」
彼女がそう言うのと同時に俺は一番重要なことを思い出した。
「ちょっと待ってくれ。…もう一つ話したいことがある」
「何かしら?」
「和田への対応だ」
「…」
「菜月はどうしたい?」
俺は菜月に尋ねる。
「…逆に勇樹くんはどうしたいの?」
俺の言葉を聞いた彼女は少し考えて、俺に返してくる。
「俺は…正直言って和田と関わりがないから分からないんだ…。だから、菜月に聞いてる」
「…少し考えさせて」
「…ああ、分かった。…じゃあな」
「ええ、切るわよ」
彼女はそう言って電話を切った。
「はぁ…」
俺は軽くため息を吐く。
俺は彼女の声が少し弱かったのに気付いていた。ただ、最後になっても俺には言葉が見つからなかった。彼女には助けてもらったのに俺は何もできなかった。
俺はスマホを置き、シャワーを浴びにいく。
何か正解が見つかるのを祈って。