表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏切りと恋の協奏曲  作者: 磯城(シキ)
44/73

重なり

俺が家に帰り、しばらくすると電話がかかってきた。


 「もしもし」

 「もしもし、勇樹くん、今どこ?」


菜月からの電話だった。


 「今は家だけど」

 「ちょっと出られる?今駅前にいるんだけど…」

 「ああ、いいけど。今から行く」

 「なるべく急いでね…」

 「ああ、じゃあ一回切るぞ」


俺はそう言って電話を切る。

少し菜月の声は震えていた気がしたが、気のせいだろうと俺は頭を振りその考えを捨てる。


俺は駅まで走り、駅に到着する。

ただ、彼女の姿は見当たらなかったので電話をかける。


 「もしもし、菜月?今どこ?」

 「…南口の方の商店街の奥」

 「了解、今、北口だからもう着く」

 「分かったわ」


そう言い、彼女が電話を切る。


俺には悪寒が走った。南口の商店街の奥には大型ショッピングモールなどがあるが、それ以外に…Nと和田が快楽を貪っていたであろう建物もある。


俺は学校を出る前に奴が急いで教室を出て行くところを見ていただけに余計に悪い方向へ考えてしまっていた。


俺はそれを振り払うためにもそこに急ぐ。


俺が菜月の言ったところに着くと彼女が電柱の横に立っている姿が見えた。


 「菜月!」

 「来てくれたのね、勇樹くん」


俺は菜月の少し暗い声、いつもより本当に少し暗い声を聞き、尋ねる。


 「…何があった?」

 「…彼と一緒に和田さんがいた…」

 「…またかよ…」


俺がさりげなく呟いてしまったこの言葉、正しく言えば失言だが、それに対して彼女は反応してきた。


 「またってどういうこと?」

 「…」


俺は反応に困った。

嘘を吐くのは罪悪感があったが、真実を俺が述べたら彼女はなぜ俺が伝えなかったのか尋ねてくるだろう。


ただ、俺が言い淀んだ時点で彼女は察したようで、どこか寂しそうな顔で軽く嘲笑する。

俺はそれを見て反射的に彼女の肩に手を置き言った。


 「言えなかったのはごめん。巻き込んだ挙句に、君を傷つけたくなかったんだ。巻き込んだ時点で傷つけてるから、これ以上っていうのが正解だけど」

 「…知ってるわよ。あなたの行動が優しさからきているのは知ってるわよ。…分かっていても、隠されていたのは…ちょっと悲しいのよ」

 「…本当にごめん」


俺は馬鹿だな…。優花にもトラウマを隠してて同じことをしたのに、また同じことをしたのか?

俺は彼女の肩から手を離し、「ああ」と呻く。

俺が自分自身のことで煩悶はんもんしていると予想外の声が俺に降ってくる。


 「あれ、勇樹くん?何やってるの?」

 「!」


…なんでここに優花がいるんだ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ