誤魔化し
37話の続きです。久しぶりの正規ルートです。
俺は優花がいなくなった部屋で菜月に電話をかける。
「もしもし」
「もしもし。どうしたの?勇樹くん」
「いや、ちょっと昨日雨に濡れさせちゃったから、風邪引いてないかと思って」
「引いてないわよ。ひょっとして勇樹くん引いたの?」
「いや。ただ昨日のせいで風邪引いてたら申し訳なかったから」
俺はなるべく元気な声を出しながら答える。
それが功を奏したのか彼女は「そう」と言っただけだった。
「まぁ、元気ならいいや。じゃあな」
「ええ、また明日」
翌日、俺は起きると体調は良くなっていた。
優花にメールを送ると優花も体調はいいらしい。
それを確認した俺は学校に行く。
学校に行き、いつも通り授業を受けて、部活に行く。
久しぶりに奴も部活に来ていた。
奴は奴で先輩にぐちゃぐちゃ言われていたようで俺に絡んでくる。
その奴の絡みに対してテキトーに対応していると、奴に言われる。
「どうした。なんかあったか?」
「別に」
「そうか?」
「どうした?」
「なんか少し、何て言うんだろう、ちょっとよそよそしいというか…」
俺は内心の動揺、心臓の動悸を隠しながら答える。
「…そうか?いつも通りだけど」
「…それならいいけど…、なんか違う気がすんだよな…」
「おーい、海川、中山、レイアップサボるな!」
「「はぁい」」
先輩にそう言われると、俺はこれを好機とばかりに練習に打ち込み、奴から逃げる。
ただレイアップの練習中にこれからの対処を考えていたため、あまり入らず、部長に「体調悪いのか?」と心配をされ、「ちょっと疲れているだけです」と誤魔化す羽目にはなった。
そうして、部活に打ち込むこと一時間、部長が俺らに声をかける。
「よーし、今日はこれで終わりだ。お疲れ」
「「お疲れさまでした」」
俺はそう言い、タオルで汗を拭い、水を飲んでいると奴がくる。
「久しぶりに途中まで一緒に帰ろうぜ」
「…ああ、別にいいけど」
俺は嫌だったが、ここで断るのもおかしいので、了承し、一緒に体育館から出る。
「疲れたな」
「ああ」
俺は奴の言葉にそう返し、空を見上げる。
俺が生まれてから初めてみた色の空が広がっていた。
夕焼けの綺麗な黄金色に薄らと雲がかかっているため、淡い薄紫色になっていた。
「不思議な空だな」
俺は思わずそう呟いてしまった。
奴はそれに頷いて肯定してくるのみだった。
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そうして歩いている内に俺の家に行く道とNの家に行く道との交差点に着いた。
俺は奴に声をかける。
「じゃあな」
「ああ、じゃあな、勇樹」
奴はそう俺に返すと手をひらひらと振って奴の家の方へ歩き出した。
俺は一人で家への道を歩き出す。
そうして、家に着くと俺はシャワーを浴びて夕飯を食べ、部活中に考えていたことを行動に起こす。
スマホを取り、電話をする。
一回二回と着信音が鳴り、三回目の音で相手が出る。
「もしもし」
「ああ、もしもし、菜月。今ちょっといい?」