その後
正規ルートの予定でしたが、筆者の勝手な都合で没案回の続きになりました。申し訳ありません。
「はぁ…まぁ、いい。帰っていいぞ」
「…」
俺は刑事さんにそう言われると無言で面談室を出ようとした。
「ああそうだ、思い出した。小泉さんのご両親が会いたいそうだ」
「…」
「帰りにでも寄ってみてくれ」
「…」
俺は面談室を今度こそ出た。
もう、俺が爆弾を投下した日から二週間が経った。俺は久しぶりに学校に来た。
二週間経ってもまだどこかモヤモヤしている俺がいる。
教室に俺が戻ると、クラスメイトは憐れみ、興味の目と、どこか怯えているような目で見てきた。
俺はその視線を無視して自分の席に座り、今は誰も座っていない白い花の飾ってある席を見る。
少しスッキリするのではないかと思い、俺は学校に来たが、間違いだったかもしれない。
俺がそう思っていると最近よく聞く声で呼ばれた。
「勇樹」
「…ああ、相馬か」
「久しぶり、まぁ二週間だけど」
「そうだな…どうだった」
「それはクラスのこと?それとも彼らのこと?」
「どっちもだ」
「そうだね…とにかく大変だったよ。君がいないから僕のところに来る人も一定数いたからね…。というよりなんで連絡取れなかったの?電話も出てくれないし」
「それはごめん。ただ、まぁ、ちょっと考えたくてな」
俺はスマホの電源を切り、しばらく一人で塞ぎ込み考え込んでいた。
答えは結局見つからなかった。先に進まなければいけないのは分かっているので俺は学校に来た。
俺と相馬が話しているのを見て、一部のクラスメイトが寄ってくる。
「あの、海川君、大丈夫?」
「あいつら許せないよな」
「何があったのか詳しく教えてくれない?」
「…」
欲しいのはその言葉じゃない。
俺の気持ちも知らずに騒ぎ立てているクラスメイトを見てるのもアホらしくなり、俺は相馬に一言「じゃあな」と声をかけて教室を出る。
家に帰る途中、「優花の家に行ってみてくれ」と刑事さんに言われたのを俺は思い出し、俺は一瞬迷うも優花の家の方に足を向ける。
優花の家の前に着き、インターホンを押す。
ピンポーンピンポーンという今の気分とは少し異なる軽快な音が鳴る。
中々反応がなく、いないのかな?と俺が思ったところでドアが開く。
出てきたのは何回か会ったことのある優花の母親だった。
「…あら、勇樹君…いらっしゃい…」
「お久しぶりです」
「…話したいことがあるから上がっていって頂戴…」
「お邪魔します」
そう言って俺は家に上がり、リビングに通される。
そこには優花の父親もいた。
「久しぶり、勇樹君」
「…お久しぶりです」
優花の父親も母親もこの二週間で一気に痩せ細り、顔色も悪くなっていた。
「…いくつか聞きたいことがあるんだ。聞いてもいいかい?」
優花の父親の声に俺は頷く。
「いや、まずはこれを見てもらった方がいいな」
そう言って優花の父親は机の上にあった手紙を俺に渡してくる。
俺はそれを開き無言で読む。
『お父さん、お母さん、親不孝を許してください。
私にはこうすることしかできません。
今まで育ててくれてありがとう。
さようなら。
優花』
俺に書いたものとは違って非常にシンプルだった。
「何個か質問をしようと思ったが君のことを見たら気が変わったよ。一つだけ質問をさせてもらってもいいかな?」
「ええ」
「…娘は…、優花は君のことが好きだったのか?」
「…さぁ…、それは僕には分かりません。彼女が墓まで持っていってしまったので…」
「…一つと言ったけど、もう一つだけ。君は娘のことを愛していたのかい?」
「…難しいですね…。ただ…、間違いなくあんなことをされる前は好きでしたね…」
「そうか…ありがとう。それと…、すまなかった」
「…」
俺は無言で立ち上がり、「お邪魔しました」と言い、優花の家を出た。
ハナズオウの木を見て、彼女との出会いを思い出す。
中二のとき、優花に家に呼ばれたときにこの木の下で付き合ってくれと言われたことを。
「お前は全部見てたのかな?」
俺は軽く呟き、ポケットからここに来るまでで摘んだ一輪の緑色の花を取り出し、その木の下に置いておく。
「じゃあな」
俺はまた口から言葉を吐き出し、背を向け、家に歩き出す。
ーーーーー
俺の家の前には何故か菜月がいた。
「何やってんの?」
「あっ、勇樹くん。話したいことがあって」
「…まぁ、上がって」
家には誰もいなかった。
平日の昼間だから当たり前かと思ったが、ここで俺はふと疑問に思った。
なんでここに菜月はいるんだ?今は学校で授業中のはずなのに。
俺は靴を脱ぎながら彼女に尋ねる。
「なぁ、菜月。なんでここにいるんだ?学校あるだろ」
「クラスのみんなが噂してたからよ。あなたが学校に来てすぐに帰ったって」
「ごめん」
「別に謝る事じゃないわ。それより大丈夫?」
「えっ、何が?」
俺は自分の部屋に入りながら言う。
「テキトーに座ってて、お茶持ってくる」
俺はそう言って部屋を出てお茶を入れてくる。
「ほい、何もないけど」
「わざわざお気遣いありがとうございます。…そうじゃなくて大丈夫?」
「だから何が?」
「顔色悪いわよ」
「はっ?んなわけ」
彼女はスマホを取り出し、内カメラにして俺の顔を写す。
そこに写っていたのは、青白い顔の俺だった。
「これ、俺?」
「そうよ」
「まぁ、大丈夫だから」
そう俺が言うと彼女は俺に詰め寄ってくる。
「あの、菜月さん?」
「そういえば、復讐したら私のお願い一つ聞いてくれるのよね」
「ああ」
「じゃあ、今使ってもいいわね」
「…どうぞ」
俺は若干彼女に気圧される形となりながらも返答する。
「あなたを見守らせて」
これでざまぁ編の没案回は完結です。
この後は正規ルートにも繋がるので今は描きません。
次回からは正規ルートです。