決着Final
俺が電話をかけ終わったのを見計らったように隣の部屋のドアが開き、俺の部屋のドアが叩かれる。
「はぁい」
「私。なんかすごい声と音したけど大丈夫?」
「ああごめん。もう大丈夫」
「そう。それならいいけど」
亜美はそう言って俺の部屋の前から離れて部屋に戻っていった。
俺はスマホを投げ出し、明日の学校での対応と今日の出来事について頭をまわす。
翌日、俺はいつも通り学校に行く。
一部の生徒が俺の周りに集まって尋ねてくる。
「なぁ、その…彼女さん、死んだって本当なのか?」
「…すまない。俺の口からは何も言えない。まだ整理もついていないから」
俺は昨日のうちに模範解答を考えておいた。それが功を奏した形となった。
そして、授業が始まる前に教室に担任の先生が入ってきて、俺を呼ぶ。
「海川。警察の方がいらしてる」
「…はい。今行きます」
俺は先生に連れられて面談室に行く。
そこにいたのは警察だった。
「警察の方が昨日のことでお前に話を聞きたいそうだ」
「はい」
「じゃあ、私はこれで」
そう言って担任は出て行く。
「海川君だね」
「ええ」
「まだ心の整理はついていないと思うけど、何個か質問させてもらってもいいかな?」
刑事さんのその言葉に俺は軽く頷く。
「えっと、まず君と彼女、小泉優花さんは交際関係にあったと言うのは本当ですか?」
「ええ」
「では、心当たりは?」
「いいえ、あの…自殺って本当ですか?」
「…ええ」
「そうですか…」
俺は下を俯く。
俺のその反応を見ると刑事さんは驚きの事実を述べてくる。
「小泉さんは妊娠されていました」
「!」
「その反応は知らなかったようですね」
「…ええ」
「これに心当たりは?」
「…いいえ。僕と彼女は関係を持ったことがないので」
「…」
俺がそう伝えている間に授業の開始を告げるチャイムが鳴る。
刑事さんは何かを考え込み始めた。
「もう、授業に行ってもいいでしょうか?」
「いや、ちょっと待ってください。渡さないといけないものがあるので」
「?」
俺は少し身構える。
「どうぞ」
俺が手渡さたのは、…優花が俺宛てに書いた手紙だった。
「これは?」
「小泉さんの…おそらく遺書です」
「…開けてもいいですか?」
「どうぞ」
俺は刑事の前で開けて読む。
そこに書かれていたのは…
俺はそれを読むと上を向き、少しペンキの剥げかけている壁を見る。
「ああ…」
「…」
俺が軽く呟くも刑事さんは黙ったままだった。
しばらくして俺が前を向くと刑事さんは聞いてくる。
「その遺書…わたしにも見せてもらっても構いませんでしょうか?」
俺は一瞬迷ったが、真剣な顔で渡して言う。
「これはまだ見ないでください。一日だけ待ってください」
刑事さんは俺の真剣な顔を見て頷く。
俺はそれを確認すると刑事さんに一声かける。
「それではこれから授業なので失礼します」
「…ご協力ありがとうございます」
俺は部屋を出て教室に向かう途中でため息を吐きながら悪態を吐く。
「はぁ…なんなんだよ…」
ーーーーー
俺が教室に入ると担任が軽くホームルームをやっていた。
「すみません」
「いや…、大変だったな…」
「…」
「ちょうどホームルームは終わったから」
そう言って担任は出て行く。
俺は普通に席に戻ろうとしたが、Nと目が合う。
その目はとても怯えたものだった。
俺は笑う。
変な目で周りが見てくるが俺は構わずNのほうに俺は向かう。
「そうだ、借りを返すの忘れてた」
「?」
俺はNにそういうと思いっきりNの頬に平手打ちをする。
「!」
「よくも寝取ってくれたな。さぁ、ツケを払ってもらおうか」
もう俺は止まれなかった。
心の中で菜月に謝りながら俺はスマホを取り出し、クラスラインに一斉に送信する。
こいつと優花が会って、手を繋ぎ、恋人同士のするようなこと、キスと多目的トイレ内での出来事を撮った動画を。
クラス中にざわめきが広がる。
そのざわめきを聞いて隣のクラスの教師がのぞいてくる。
「おい、海川何やってるんだ!」
教師が声をかけてくるが俺はNを見つめながら言う。
「こいつに借りを返してるだけです」
そして、俺は黙りこくっているNに一言声をかける。
「何か言い訳はあるか?」
「…こんなの違う。嘘だ!」
「何がだ?」
「この動画が!」
「そうか」
俺はもう一個爆弾を投げ込む。
こいつが和田希とラブホに入っていく動画を。
「これも嘘と言うつもりか?中山」
「…ああ、加工だ」
「そうか…この動画はもう一人証人がいるぞ、相馬」
隣のクラスのホームルームも終わったようで、後ろのドアから覗いていた相馬に声をかける。
相馬は頷いて言う。
「僕も見たよ」
「おい、どういうことだよ、中山!」
クラスのある男子が声を上げると多くのクラスメイトがそれに続く。
「ちゃんと答えろ!」
「お前がやったことの重さが分かってるのか?」
もう誰も止められなかった。このクラスの空気と俺を。
Nはそれに耐えかね、教室を飛び出す。
俺はそれを見て笑う。
クラスはさらに荒れる。それは隣のクラスも巻き込む。先生は途方に暮れた顔で立ち尽くしている。
ああ、何やってるんだろ。気持ちよくなれるわけじゃないのかよ。解放されるんじゃないのかよ。
ーーーーー
「こんな状態になるんだったら、我々にあらかじめ相談してもらいたかったな」
「…」
沈黙を保つ俺を見ながら刑事さんは言う。
刑事さんはため息を吐きながら、「中山健汰は自殺して、和田希は転校に…」と事実を淡々と俺に告げてくる。
それでも俺が無言でいると、刑事さんは手紙に俺の目の前で開き目を落とす。
『拝啓 親愛なる海川勇樹様
このような形での謝罪となり申し訳ありません。
私は中山健汰さんと体の関係を持ち、妊娠してしまいました。
彼にそれを伝えましたが、責任を取ってもらえませんでした。
私にもう選択肢はありませんでした。
私には謝ることしかできません。
ごめんなさい。
これで許してもらえるとは思いません。
それでも、愛しています。
敬具 小泉優花』
これでざまぁ編没案は完結です。
一応この続きがあるので(小泉さんの親宛ての手紙、海川君の今後等)好評だった場合は投稿しようと思います。あまり好評ではないならば、次回からは正規ルートです。