内心
ドアが開く音とともに優花は戻ってくる。
「あれ?勇樹くん寝ちゃった?」
彼女が俺の顔を覗き込んできているのが俺の顔にかかる影で分かる。
彼女の少し長い髪が俺に当たり、くすぐったいような痛いような感覚を得た。
彼女のまとう熱が、息が感じられる。
俺、一応風邪なんだが…。それ以上近づくと、もう手遅れかもしれないが風邪をうつしそうな気が…。
俺は起きるか迷った。ただ、このまま放置しておけば尻尾を出す気もした。寝ていた俺は悪くない。そう俺は結論付けて寝たふりを継続することにした。
俺がそう決めた後、彼女の影が俺から離れスマホの写真を撮った音がした。
「勇樹くんの寝顔ゲット〜。えへへ。」
好きでもない男の顔を撮って何が楽しいのやら。
「ホーム画面にしとこ。」
何も知らない人からしたら平和な世界だろう。
知らない方が平和だったとはもう思わない。
俺の知らない裏でしけこまれている方が嫌だった。
もはや、早く、いや早くはないが、この年齢で知れて良かったかもしれない。
そんなことを考えながら目を閉じていると本当に眠くなってくる。
危険かもしれないけど…、俺はそう思ったが眠気には抗えず、暗闇の中に沈んでいく…。
次に俺が目覚めたのは黄昏時というには少し早い通常なら小腹の空く3時。俺が布団を見ると俺の掛け布団に彼女は頬杖を突き、俺の方に頭を向けながら寝ていた。
彼女はとても呑気に寛いでいるような幸せそうな顔をしていた。
二股がそんなに幸せなのだろうか?
俺は気付いたら虚空に向かって口にしてしまったいた。
「なぁ、どうなんだよ?この生活は楽しいのか?」
厳しい口調になってしまったのというのとまさか起きてはいないだろうなという心配で俺は彼女の顔を見つめる。
「寝てるか…」
俺は安堵のため息を吐き、彼女の頭を揺らす。
「おーい、起きてくれ」
「…ん。」
「ちょっとそこどいてもらってもいいか?」
「ん。」
彼女はどき、カーペットの上に座る。
「幸せそうな顔してたけど、なんの夢見てたんだ?」
「んー。秘密。」
彼女は悪戯っ子ぽく笑った。
昔だったら可愛いなぁとか思えたのになぁなんて考えている俺はあることに気付く。
《《そんなに》》悲しくなっていない。
一方”ある男“の同日の出来事…
ー“ある男”サイドー
「クソ。あの女どもが。勇樹が?友達が?俺を優先しろよ。好きなら俺を優先しろよ。女どもが!勇樹!あいつだけは許さん。俺のものになったはずなのに、奴らは俺のものにしたはずなのに!結局は菜月だけか…。」
“ある男”は歯軋りをしながらそう言った…。