確定事項
俺はぼやける視界の中、リビングまで行き、蛇口を捻り、コップに水を汲みカラカラの喉を潤す。
冷たい水が喉を通るが、腹に落ちる時にはもう生温くなってしまう。
俺は蛇口から出る水を止めリビングの椅子に腰掛けながら頭痛の痛みと戦いながら目を瞑り、昨日のことを思い返す。
「はあ、クソッタレ…」
昨日のことを思い返すだけで頭がさらに痛くなる。
さらに苦しくなって俺が机に突っ伏していると、妹に声をかけられる。
「何やってるの、お兄ちゃん。」
「ん、ああ、亜美か…。あんまり近寄るな、感染るぞ風邪…」
俺は顔をあげ、虚ろな目をしながら亜美に言う。
「昨日、何があったの…まぁ、いいけど。とりあえず、はいはい部屋に入って。」
亜美はそういい、俺を自分の部屋に追い立てる。
「いや、薬だけでも取らせてくれ」
「何の薬?取ってくるから。」
「はぁ…頭痛薬と風邪薬だけ頼む」
「分かった。取ってくるから待っててね。」
俺は自分の部屋のベッドに寝かせられ薬を持ってきてもらった。
「してほしいことあったら呼んでね。部屋にいるから。」
「ああ、ありがとう…」
俺はベッドに再び入り、上を向く。
白い壁紙に灯りの付いていない蛍光灯が俺の目に映る。
俺が眺めながらボォーっとしていると着信音が鳴る。
しばらく無視していたが、6回なったところで俺は枕元にあるスマホを手に取り、電話をしてきている相手の名前を確認する。
「…優花かよ…」
俺は一瞬悩んだが電話に出る。
「もしもし」
「あっ、優花だけど、今日って暇?」
意外と大きな声が俺の耳に響く。
「すまない。風邪引いちゃって…」
「えっ…。」
「ごめん。今度で頼む」
「そうだ、それなら今から家に行くね。」
「いや…、感染ると大変だし大丈夫だよ…」
「ううん。行かせて、これは私のせいだから。昨日連れ回しっちゃたせいでしょ。」
「別にそんなことはないから大丈夫…」
「遠慮しなくていいから、今から行くね。」
「えっ、大丈夫だっt」
電話が切れる。
「嘘だろ…」
俺は優花に裏切られたと気付いた時の夢を思い出す。
「これもきっと夢だよな…」
頬を引っ張ってみたり腕をつねったりするも何も変化は起きない。
「マジかよ…」
それからしばらくすると、家のインターフォンが鳴る。
亜美が出る声がする。
俺はここまでかと断念し、重い体を起こす。
「お兄ちゃん、優花さん来たけど…。」
「ああ、通してくれ…」
亜美は俺の耳元に口を寄せて尋ねる。
「なんで優花さん来たの?」
「風邪だって送ったら…」
「はぁ、お兄ちゃん…。気を付けてよね…。」
亜美はため息を吐き部屋を出て、玄関まで優花を迎えに行き、俺の部屋に戻ってくる。
「それじゃあ、なんかあったら呼んでください。」
亜美はそう言い残すと、優花を俺の部屋に置いて部屋に戻ってしまう。
部屋には俺と優花だけになる。
俺から話しかける。
「すまない…。何ももてなせないけど…」
「ううん。大丈夫?」
誰かさんたちの所為で大丈夫ではないけどな、と思いつつ、返事を返す。
「…ああ、生きてるから大丈夫」
「…。」
会話が続かない、気まずい…。