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裏切りと恋の協奏曲  作者: 磯城(シキ)
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幸せの形

そして、長かったようで短かった観覧車は一周し、下に着き、俺らはゴンドラから降りた。

奴らが先に降りて待っている。

二人の間にはくっついているわけでも離れているわけでもない絶妙な空間があった。

中山はこちらを向き、俺ら二人に聞いてくる。


 「この後どうする?」


俺は空を見上げる。

空は雲が薄くかかった夕焼け空だった。

俺はNに答える。


 「俺らはもう帰ろうかな。遅くなったし。」


俺はわざと優花を巻き込んだ。


 「うん、そうだね。じゃあお先に。」


優花のその発言に俺は内心驚かされた。

もう少し愛しい奴といたいのではないかと思っていたのだが。

中山を見ると少し残念そうであった。


 「そうか、帰るのか、じゃあな勇樹、小泉さんも気をつけて。」

 「ああ。…じゃあな。」

 「バイバイ。今日は楽しかったよ。」


俺は内心気をつけるのはお前だろと思ったが突っ込まないでおく。


 「私たちも帰らない?」

 「うーん、俺はもう少し君といたいんだけどなー。」


なんて菜月と奴が話しているのを背中で聞き、寒くなりながら俺らは帰る。


二人で同じ電車に乗る。

俺の隣に彼女は座り、疲れたのか首をもたれかけさせて寝てしまう。

現実を知らなかったらどれだけ幸せだったであろうか?

彼女がこうしてもたれかかってくると勘違いしてしまいそうだ。

俺らの目の前に座っている男が俺らのことを羨ましそうに見る。

俺はそれで思う。そうか。俺は幸せを満喫していたのか。少なくとも周りから羨ましがられるくらいには。

俺は虚しくなる。

当たり前の日常、平和を守り静かに仲良く一緒に暮らす、今は叶わない夢を俺は見ていた。

辺りを見回す。スマホをいじる人、本を読む人、寝ている人など様々な人がいる。

幸せは人による。

彼女の行動の原因は満たされない幸せを埋めるためだったのだろうか…。

唐突に俺は彼女を起こして聞きたくなった。

俺が起こそうとした時電車が急ブレーキをかけて揺れる。

大きく揺れて彼女は目を覚ます。


 「何?」

 「緊急停止じゃない?」


電車のアナウンスによるとおばあさんが渡りきれなかったようで緊急停止ボタンが押されて停止したそうだった。

俺は意を決して聞こうとした。


 「あのさ…。」

 「うん?どうしたの?」

 「いや、やっぱりなんでもないや」

 「そう?」


俺に口に出す勇気はなかった。


そのあと発車し電車が駅に着いた時には暗くなってしまっていた。

同じ駅で俺らは降りて手を繋ぎながら、家まで彼女を送る。


 「今日は楽しかったよ、ありがとう。」


彼女はそういって俺に抱きつき、頬に唇を当ててくる。

彼女は恥ずかしそうに顔を赤らめながら家に手を振りながら入る。


俺は彼女が家に入るとしゃがみ込んでしまった…。

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