計画変更
菜月は返答してくる。
「その質問はさっきの彼が私を手放さないで解決してるんじゃないかしら。」
それは菜月が奴のことを好きではないということでいいのか?
なんで一緒にいるんだ?本当に分からない。
「困った顔をしているわね。…私は彼を他人から避けるために使ってたの。彼氏がいればむやみやたらに手を出そうとしてくる人も居ないしね。」
まぁ、面倒くさいのは嫌だからねと彼女が小さく呟くのを俺は納得させられた。
筋が通っているし、何より安心させられてしまった。
そして、俺は聞く。
「それで…協力してくれるのか?」
「…私のメリットは?」
「えっ?裏切った中山に復讐できることじゃ…。」
「私は面倒くさいことは嫌いなの。それなりの対価が欲しいわ。」
…予想してない展開になってしまった。
「それじゃあこうしましょう。」
「…」
俺は唾を飲む。
「私があなたに協力して彼を倒すことができたら私のお願いを一つ聞いて。」
安請け合いするのは良くないが俺には選択肢が実際ないようなものなので俺は首を縦に振る。
「…わかった、聞く。」
「それなら話が早いわ。それでどうするの?」
「えっ?何を?」
「どうやって復讐をするの?」
「ああ、それは…。」
俺は中山の浮気事情や妹のこと、相馬のこと、証拠を集めて皆の前で奴のやっていたことを暴露することなどを話した。
それら全てを聞き終わった彼女の反応は芳しくなかった。
「うーん。ちょっと問題があるわね…。」
「えっ?どこらへんが?」
「まず、あなたは音楽部の発表の日に決行すると言ったわね。それはちょっと無理があるんじゃないかしら?」
なんでだ?人は集まるし、音楽部だからやりやすいんじゃないかと思ったのだが。
「優花さんがいないじゃない。」
「連れてくれば…。」
優花とは学校自体が違うが呼べば問題はないのでは?
俺がそういうとスルーされて二つ目と言われる。
「二つ目、先生の目があるじゃない。」
「…。」
これもあまり問題なさそうだが…。
「先生はあなたのことを止めると思うわよ。基本、事勿れ主義だし。」
「思い通りに行かない可能性はあると…、でもその日以外ないんじゃ…。」
「いいえ、一つだけあるわ。後夜祭よ。先生もいなくて優花さんもいるでしょ。」
後夜祭とは文化祭の後、学校の生徒と関係者のみで大講堂で行う祭りで毎年ジャグリングや奇術部などが技を披露して盛り上がるもので、音楽部がそこで出し物を行う予定もある。
ただ、それは一ヶ月後で俺が元々計画していた発表の日は二ヶ月半後なのである。
つまり大幅な時間の縮小が入ってしまう。
俺はそう思い、彼女に話す。
そうすると、彼女は答える。
「早い方がいいじゃない。早く決着がついて。それに二ヶ月半も何をするの?」
「…。」
俺は返す言葉もなく外を見る。
すっかり観覧車は周り、四分の三を過ぎていた。
奴らのゴンドラは俺らのゴンドラの下に見える。
俺は奴らを見ると菜月に言う。
「その計画で頼む。」
「…ええ。…それで彼らは何をしているの?」
「彼らって?」
「彼と優花さんよ。キスとか、…その…行為とかをしてる?」
「…いいや、別に。」
「…そう。流石にしないのね。」
「…。」
俺は無言を保った…。