恋は判断をも
かき氷からは不思議な味がした。
俺はその不思議な味をじゃれあう二人を見ながら無言で食べた。
冷たかった。
「おいしいね。」
「ああ、そっちのチョコ味の方頂戴。」
「いいよ。そっちもちょうだい。」
「もちろん。」
後ろで二人の声がする。
堂々としたものだ、まったく。
俺は菜月の顔を見た。
彼女の顔は少しも笑っていなかった。ただ表情も暗くもなかった。
その顔で俺は昔のことを思い出した。
俺と菜月が初めて会った幼稚園の初日の朝、菜月が親に幼稚園に置いて行かれたときの顔だった。
彼女は寂しそうな顔でも悲しい顔をするのでもなかった。
無表情に近い顔をしていた…。
なぜ、そのような顔をしているのか当時は分からなかった。
だが、今なら分かる。
“彼女は感情が少し欠如している。”
もしくは
”他人と感覚が違う。”
そのような俺の脳内での思考を妨げるように優花は話しかけてくる。
「ねぇねぇ、この後どうする?」
反応するのも面倒くさかったが、無視もまずいのでテキトーに受け答えする。
「どこに行ってない?」
「ええっとねー。…観覧車かな。」
「…。」
反応の仕方が分からない。
どういう風に乗るんだ?優花と一緒になったらどうすればいいんだ?
まずい。最初に浮気されたと気づいた時ほどではないが、俺を動揺が襲う。
俺がそんな感じで無言でいると代わりに菜月が口を挟む。
「別にいいけど、どう乗るの?」
「うーん。どうしようかな?中山君なんか案ある?」
俺は心の中で静かに突っ込む。
俺と乗る前提でいかないんだなと。
「なんでもいいと思うけど、どうせならいつもと違うペアにしようぜ。」
「じゃあ、私と中山君、勇樹君と下村さんで。」
「…。」
俺は無言を保ちながらこいつら馬鹿なのかと思った。
そんなことしたらバレやすくなるんじゃないかと。少なくとも怪しまれそうだなとか思わないのか?
考えてて頭が痛くなってきた。
俺、気づいてなかったじゃん。