第0話 ~プロローグ~
________2160年
人類は、危機に瀕していた。
増えすぎた人口による、食料問題・土地不足・環境汚染・ゴミ問題etc...
当時の人々は、打開策を見つけるべく、数々の研究を行っていたが、なんの成果も得ることはできなかった。
だがしかし、「神のイタズラ」なのか、それとも増えすぎた人類に対する「天罰」なのか。
それは、私の知るところではないが、あることが起きる。
どこからともなく、自然発生的に、謎のウィルスが発生したのである。
これが後にCウィルスと呼ばれるウィルスである。
そのウィルスは瞬く間に全人類に感染。およそ9割が死亡した。
___否、死亡したというのは些か語弊がある。
ウィルスに感染した人々は、その時点で3択に絞られる。
そのまま死亡するか、若しくは『合成獣』と呼ばれる化け物に変異するか、『能力者』として覚醒するか、のどれかである。
現段階の研究結果において、一度『合成獣』になったものは二度と、人間に戻ることはない。
この『合成獣』は文字通り、色々な動物が合体したような姿をしている。
その種類は多種多様で、動きが早いモノ・遅いモノ・海を泳ぐモノ・空を飛ぶモノ...いろいろな『合成獣』が居る。
だが、姿形・運動能力の差異がある『合成獣』もある一定の共通した行動を示す。
それは、『合成獣』になっていない人間に対して、捕食およびウィルスを感染させ、自らの仲間を増やすことだ。
この行動が餌を求め、その餌がウィルスに感染し、結果的に『合成獣』となって、彼らにとって「繁殖」という行為になっているのか。
それとも、「繁殖」という目的が先で、捕食行為を行っているのか。
それは少なくとも現時点では、定かではない。
...そのことについては置いておくとして、人間としての体を保っている人類にとっては、これほど恐ろしいことはない。
さしずめ、ゾンビ映画の出演者にになったような気分である。
だが、その人類にとって新たな希望となりうる事が起きる。
それは『能力者』の出現である。
『能力者』の発現の原因もウィルスによるものだと考えられている。
そして『能力者』も又、その者によって能力は多岐に渡る。
だが、共通して言えることは今まで人類が「魔法」と呼んでいた出来事もその『能力者』は、たやすく行ってしまう、という点である。
この『能力者』の登場によって、人類は希望をを取り戻し、結束し、安寧の地を築いた。
それが『ポリス』と呼ばれる、壁と薄い膜の天井で覆われた城塞都市である。
現時点での『ポリス』は旧東京・旧モスクワ・旧ニューヨーク・旧上海・旧パリ※1の計五か所にあり、それらを統括・管理しているのが『中央政府』という所謂、国際的な政府である。
各『ポリス』においても、その『ポリス』毎に取り仕切る組織は存在するが、『中央政府』の支部のような扱いを受けている。
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人類が最初の『ポリス』を築いてから30年余り。
土地を拡張し、外部からの『合成獣』を制し、各地で独自の発展を築いてきた、そして人類の再びの繁栄の拠点となる『ポリス』。
人類の平和と安寧と勝利を願いつつ、その未来を『ポリス』に託すことにしたいと思う。
※1 各地名は変わる可能性が高いため、分かりやすさを重視し、旧式の地名で翻訳しています。
ー【Cウィルスが及ぼした人類の歩みと、行く末】 著:オラクス・ウェルマー 翻訳:坂上隆二 から抜粋ー