見えない気持ちと残った願い 1
翌日に控えた文化祭のため学校中がせわしなく動いていた。
テントを設営する教師、机を組み合わせ屋台を立てる生徒、体育館でリハーサルをする軽音楽部と吹奏楽部。それらをしり目に一か月弱で作り上げた大道具小道具を運ぶ俺たち。
学校全体が早くもお祭りムード。授業をすべてすっ飛ばして一日を設営に充てていることもあってか、もはや誰一人として堅苦しい授業のことなど頭の隅にも存在しない。
イベントの一番の盛り上がりは、実はその最中ではなく準備とその後という声もあるくらいだ。準備をしているときが一番楽しい、終わった後の打ち上げが一番楽しい。そんな声をよく聞くが、本番の最中が一番楽しいという声はほとんど聞いたことがなかった。最中に身を置いているときは自分の気持ちを見つめ直すだけの余裕もないだけなのかもしれないけれど。
だからというわけではないが、今この瞬間を楽しめていない俺はきっと明日の文化祭本番も楽しむことはできないのだろうと悟ってしまった。
「島崎? それ重くね?」
そう声をかけてきたのは裏方班をまとめていた男子生徒。名前はまだ覚えていないが、もはや顔なじみと言ってもいい仲になっていた。クラスメイトを相手にその評価はどうなのかと自分自身思うところではあるが。
「いや、かさばるだけで重くはない。所詮は段ボールだし」
言いながら俺はジュリエットの立つベランダ部分――その壁となる段ボールの板を抱え直す。
重さこそそれほどないが、両手を広げてようやくという幅のため持ちにくいことこの上ない。視界も遮られるし油断すれば誰かに当たってしまいそうだ。
かといって二人以上で運ぶというのもばからしい。重さはそれほどないのだ。二人で持てばそれはそれで幅を取る。誰も彼もが忙しなく動き回る中その導線を妨げるのは心苦しかった。
などと、いろいろと理由を取ってつけてはみるが、実のところそうして浮かぶ理由など大したことなどない。
俺が今一人で大道具を運ぶ理由。一人にしてほしい理由は一つ。
昨日の出来事。突然現れた四人目の異世界人のことが頭にこびりついてしまっているから。
もはやそれ以外のことなど考えられるはずもない。いや言い切ってしまおう。他のことなどもう俺にとってはどうでもいいことだった。
文化祭も、学校も。しなければいけないあれこれも。参加したいと思っていた学校行事も今の俺にとってはどうでもいいことだった。
ついになくなってしまった残り時間を思いながら俺は奥歯をかみしめる。
わずかに残った時間も有効活用できないまま、日常の中に身を置いている自分が歯がゆくて仕方がない。




