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16 我が家へ帰宅

「わ、わかるように説明してください!」


 もう頭が混乱してなにもなにがなんだかわかりません!


「そうね。また明日──もう今日か。なら、ティアが落ち着いてからにしましょう」


 若返ったからか、痩せこけも悲壮感もナナオからなくなり、もう元気としかいいようがないくらい元気だった。


 わたしはなんと答えていいのかわからず頷くだけ。もうどうしろというのよ!


「おっと。気がつかれたようね」


 え? なにが?


「ティア。ごめんね。わたしは狙われてるから一旦消えるわ。落ち合うところ、ある?」


「え、あ、えっと、第二区のハルバッティー通りにある花*花にはよくいくわ」


「第二区のハルバッティー通りの花*花ね。わかったわ。生活基盤を整えたらいくから」


 説明を! なんていう暇なくナナオが闇へと消えていった。


 あ然としてると看護師さんたちがやってきて事情を求められたけど、あうあういうだけで精一杯。混乱するわたしに看護師さんが優しい顔で宥めてく、部屋へと連れていき、ベッドへと寝かされ、催眠魔法をかけられた。


 次に目覚めたときには、お母様とリゼン女史、あと、女性の警士さんがいた。


「ティア、大丈夫!?」


「……お母様、えーと……え? あれ?」


 わたし、なにしてたんだっけ? 

 

「大丈夫よ。落ち着いて」


 看護師さんや治癒師さんが呼ばれ、微睡みの魔法をかけられた。


「……お母様。心配かけてごめんなさい……」


 微睡みの魔法は心を落ち着かせる効果もある。心が落ち着き、微睡みの魔法の効果が切れると昨日の出来事を思い出した。


「謝らなくていいのよ。あなたは立派なことをしたんだから」


「ええ。私塾生として立派でした」


 お母様とリゼン女史からの慰めが身に染みる。冷静になって考えるとかなり、というか、絶望的に危険なことに巻き込まれたのよね。下手したら命を失っていたかもしれないわ。


「今はゆっくり休みなさい」


 私塾もしばらく休んで家で養生しろとのこと。治癒院で二日ほど休んでからミオネート伯爵様の馬車で久しぶりの我が家へと帰った。


 お父様から泣いて迎えられ、アリエとバルヘクは抱き締められて丸一日は離れてくれなかった。


 ……お願いだからトイレは一人でいかせてちょうだい……。


 くっつき虫がなんとか離れてくれてからは新しい寝巻きを作って日々を過ごしていると、ミリーが尋ねてきてくれた。


「ティア、元気そうでよかった~」


 会うなり抱きついてくるミリー。


「ありがとう。ごめんね、心配させて」


 わたしもミリーに抱き締めた。


 ひとしきりミリーと抱き合い、満足してから食堂へと案内する。


「あら、ミリー。いらっしゃい」


 食堂にはお母様がいて内職の縫い物をしていた。


「おば様。ごきげんよう。お邪魔しますね」


 右手でスカートの裾をつかんで訪問の挨拶をする。


「ふふ。綺麗な挨拶をありがとう。よく学んでいるようね」


「ありがとうございます。これも先生方の教育の賜物ですわ」


 一通りの挨拶を済ませ、ミリーに席を勧めてお茶を出す。


「これ、父からです。皆様でお召し上がりください」


 ミリーが手にしていたバスケットから干し葡萄を混ぜた焼き菓子、プレールを出した。


「まあ、花*花のプレールじゃない。ミリー、ありがとう!」


 花*花の窯は祝福持ち窯作り職人が作った特別製で、他とは違う味を出してくれる。作る毎に完売の人気商品。滅多なことでは食べられないものだ。


 大好物なお母様が席から立ち上がってミリーに抱きついた。


 密かに砂糖を横流ししているわたしは、ちょくちょくもらっているのでそんなに感動はないけど、家族が喜ぶ姿は嬉しいもの。ミリーの心遣いには感謝だわ。


 お茶を出してプレールをいただく。あ、ちゃんとアリエとバルヘクに残しておかないと。


「ティアが本当に元気でよかったわ。私塾の皆も心配してたんだから」


「ごめんね。ミリーからわたしは元気だって伝えて」


 貴族が貴族の家に訪れるのはいろいろ手間がかかる。事前に訪問の約束をとりつけて迎える用意とかしなくちゃならない。裕福な家同士なら構わないでしょうけど、貧乏男爵家ではそう簡単にはできない。お互いの負担にならないようにするのも付き合いなのよ。


「うん。伝える。皆、ティアと会えるの楽しみにしてるわ」


 わたしも。早く皆に会いたいわ~。


「ねぇ、世間では違法奴隷のこと騒がれてるの?」


 うちは新聞を購読契約してないから世間の情報は人伝なのよね。


「帝都中大騒ぎよ。結構上が関わってるとかで、騎士団総出で調べてるそうよ」


 もう帝都中に広まってるんだ……。


「わたしのことも伝わってるの?」


「新聞には載ってないけど、知ってる人は知ってるわね。だから、しばらく家から出ちゃダメだからね。リゼン女史からも私塾にはきてダメと伝言を頼まれたわ」


 あー……やっぱりか~。賊が取り返しにくるくらいだもんね~。


「この辺は警士が見回ってくれるからって油断したらダメなんだからね!」


「わ、わかってるって。出ないよ」


「それで出ちゃうのがティアだから心配だわ~」


 反論のしようもございません。自覚ありますから……。


「時間があれは遊びにくるから。ちゃんと家にいるのよ」


 はい。肝に命じますです、はい……。

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