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12 二人の騎士

 事故は周りを巻き込む大きな騒ぎとなってしまった。


 でも、そのお陰でたくさんの人が協力してくれ、すぐに警士けいしがやってきてくれたわ。


「わたしは、クレーティア・カートン男爵の娘で治療院の準院生です! ご協力をお願いします!」


 治療院で働くには若い身ではあるけど、祝福を持つ者も働いていることは世間一般になっている。それに、貧乏でも男爵の娘。警士にも貴族はいるでしょうが、町を見回る警士は平民だ。名乗りを上げて無視はできないでしょう。


「巡査長です! 怪我人をお願いします!」


 確か巡査長は班長的な立場だったはず。この場を仕切るには問題ないでしょう。


「はい! お任せください!」


 頼りになる巡査長さんでよかったわ。たまに性格のよろしくない人もいるからね。


 警士さんが続々と集まり、巡査長さんの指揮で馬車の確認や人の整理を始めた。


 わたしは、協力してくれてる人たちと一緒に怪我人の手当てをする。


「これ、違法奴隷だな」


「やっぱりか。じゃあ、首にしてるの隷属の首輪か。マジかよ」


 野次馬の誰かがそんなこもを話している。


 やっぱりそうか。いや、そうとしか思えないことばかりだけど、そういわれると恐怖で身が縮みそうになるわ。


 湧いてくる感情を必死に堪え、誰かが持ってきてくれた水と布で怪我人の体を綺麗にする。


 違法というだけあって大樽に入れられた人たちの衰弱が激しい。ただ、傷は馬車から落ちた人だけ。そして、黒髪の女の人だけは酷かった。口にするのも憚れるくらい本当に酷かった。


 ……人ってここまで酷いことできるんだ……。


 わたしはまだ無知で未熟だけど、なにも知らないほど子どもではない。世界が優しさに溢れていると思わない。悪意があることを知っているわ。


 それでもこれは酷い。悲しみより怒りが湧いてくる。近くにいたら木剣で叩いてやりたいくらいだわ!


「治療院の治癒師です! 怪我人はどこですか!」


 よかった。きてくれたわ。


「重症者はこちらです!」


 大声を出して治癒師さんを呼んだ。


 気がついてくれた女性の治癒師さんがこちらに駆けよってきてくれた。


「準院生のクレーティアです。この方が一番の重症です。外傷は中級回復薬で塞ぎましたが、衰弱が激しくて熱があります」


「わかったわ。あとは任せて。よく頑張ったわね。偉いわよ」


 こんな緊急時でも優しく声をかけてくれる治癒師さんに涙が出てしまう。わたし、本当に未熟だわ……。


「あなたは休みなさい」


「だ、大丈夫です! 手伝います!」 


 軽傷者の世話くらいはできる。


「……無理しないこと。いいわね?」


「はい!」


 気を張り詰めるのはいいけど、無理するほど張り詰めるのは未熟なせい。よくわるたもの。ここで倒れるようなこてしたら自分だけじゃなく認めてくるた治癒師さんまで裏切ることになる。それは絶対にしてならないことだわ。


 軽傷者の世話をする介護士さんたちに混ざり、気張りすぎないよう心がけながらした。


 しばらく軽傷者の世話をしていると、騎士の方々までやってきた。


 騎士様は基本、国防に関する仕事をする人たちだけど、違法奴隷となると出てくるものなのかしら?


「騎士まで出てきたか。大事件になるわね」


「違法奴隷ってそんなに大事になってるんですか?」


 わたしの耳に入るくらいだから大きい事件なんでしょうけど、どこか遠いところの話でしかない。身近なこととしては受け取ってなかったわ。


「わたしもそんなに詳しくはないんだけど、かなり大事なようね。いろいろ国を跨いだ組織が関与してるらしいわ」


 いろいろな国って、それは確かに騎士様が出てくるわよね。もしかしてわたし、とんでもないことに巻き込まれた?


「すまない。クレーティア嬢はどちらだろうか?」


 と、騎士様が現れた。


「あ、はい! わたしです!」 


 慌てて立ち上がった。な、なんでしょうか?!


「あ、そう怖がらないでくれ。事件のあらましを聞きたいだけだから」


 わたしが怖がらないように優しく微笑む騎士様。ただ、背後の騎士様の顔が怖いです。怒ってるんですか?


「あ、ああ、すまない。エド。お前はちょっと向こういってろ。お嬢さんが怖がってるだろうが」 


 エド様とやらが騎士様に蹴られた。


「この顔は生まれつきだ! いいから話を聞け!」


 どういう関係かわからないけど、喧嘩腰でも仲良さそうなのはわかった。親友同士なのしら?


「ともかく! 話を聞くなら顔をこっちに見せるな」


「あ、あの、わたしは構いませんので……」


 二人のやり取りを見たらなにか微笑ましくなった。そうするとエド様の顔も怖く感じなくなる。不思議なものよね。


「そうか、ありがとう」


 柔らかく微笑む騎士様。夢見る女の子が好きそうな方よね。


「あ、わたしはアルディーン騎士団所属、ハルシオン・ライエルと申します」


 ライエル? って確か、ライエル公爵の御子息様?!


「こっちの顔の怖いのはバーシル・ゲイナーだ」


 さらにゲイナー侯爵?!


 凄まじいまでの偉い方だった!!

 

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