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ずっとずっと幸せで

作者: 那由他

遠井moka 様 「あたたか企画」

家紋 武範様 「あやしい企画」参加作品です。

「えっ!律!お前とうとう結婚するの!?」

「俺もアラサーだし、そろそろ真剣に考えたんだ。今度湊に紹介するから」

高校時代から親友の湊との飲み会で俺はそう話した。相手が女子大生だとからかわれ、ちょっと照れくさかった。


部長に見合いを勧められ、見せてもらった写真には清楚な若い女性が写っていた。


「とてもいいお嬢さんじゃない!頑張るのよ!」

釣書を見た母親が喜ぶ。まぁ、いつまでたっても浮いた話のない息子を心配していたのだろう。


見合い当日はちょっと緊張した。アラサーのおじさんが女子大生に気に入られるだろうか?


深雪は淡いピンクのワンピースにストレートの黒髪がやはり清楚で、一見地味な小造りな目鼻立ちだが卵のむき身のような素肌が美しい。


一目で恋に落ちるという熱烈な想いではなかったが、あたたかな微笑みに心がほのぼのするような温もりを感じた。


(ヤバい!この子を逃したら、もう後がないかもしれん!)


付き合ったことならあるが、どうも今一つピンとこなかった。社会人になってからは仕事ばかりで女性と接点がなかった。このまま行くと、お一人様コースまっしぐらである。とにかく好印象を持ってもらわなきゃ!


「後はお若い二人で」

なんて早々に二人きりになったけど、女子大生に何を話したらいいんだろう?


「えーと深雪さん。ご趣味はなんですか?」

「はい。お花を少し。運動はジョギングをしています」

(ヤバい!仕事漬けのおじさんは最近運動してないよ!)


「俺は…僕は高校時代はサッカーをしていまして、最近運動不足なんですが、今度ジョギングでも始めてみます」

「じゃあ一緒に走れますね。僕じゃなくて俺で大丈夫ですよ」

クスリと笑った深雪の顔にちょっと舞い上がって、それから何を話したかあんまり覚えてない。ただ次の約束だけは取り付けた俺頑張った。


誘ったデートは深雪の好きな俳優の主演映画だ。11時くらいに待ち合わせてランチをする。女性受けするランチは何だ?やはりイタリアンか?あーでもない、こーでもないと探して予約した。待ち合わせ30分前には到着してと…。


「こんにちわ律さん」

「えっ深雪さん?」

現れた深雪は編み込んでアップにした髪と赤い小花柄の明るい茶色のワンピース。別人のような可憐さだった。

(大草原のローラ?不思議のアリス?)


ボーッとしてたのかもしれない。クスクス笑う声にハッとした。

(ヤバい!間抜け面さらしてたかもしれんっ!)


「ごめん。ちょっと印象が違うからビックリして」

「ちょっとお化粧しただけよ」

確かに明るい色の口紅と少しだけ塗ったマスカラはわかる。

(えらい可愛いんですけど!)


俺は毎朝のジョギングを始めた。

(若い嫁さんをもらう為だ。努力しなきゃ!運動に外見、後はお洒落な流行りを押さえて)


次のデートは遊園地。若草色のパンツルックがスポーティーで爽やかで。やっぱり見とれてボーッとして笑われた。


プラネタリウムでは桜色のワンピースの大和撫子。

アスレチックでは素顔にリップ、ポニーテールとジーンズで活発に笑う深雪に見とれた。


「どうして、毎回そんなに印象が違うの?」

「いつも同じじゃつまらないじゃない」

そう笑う深雪の顔にあたたかな思いが満ちあふれる。


「会うたびに貴女に恋をしてます。一生ずっと貴女に恋していたい。どうか結婚してください。」

「はい」

深雪はそっと頷いた。


なぜ俺を選んでくれたのか聞くと、素顔を好ましいと最初に思ってくれたからだと深雪は言う。自分を好いて欲しいのであって化粧を好きになって欲しいわけではないのだと。


「どんな深雪も綺麗だけど、素顔の深雪が一番綺麗だ」

俺が最初に好きになったのは深雪の笑顔だから。


俺の両親は心配していたらしく結婚の報告にそれはそれは喜んだ。


二人で指輪を選んで。二人で式場や飾る花から全て選んで。


湊に紹介した時は黒いワンピースで大人っぽい美人だと誉められた。


結婚式は神前で。向こうの親御さんの希望で深雪は白無垢に角隠し。生きてることが信じられない、精緻な日本人形のようだった。


披露宴ではウェディングドレス。胡蝶蘭を髪に飾り、華やかで艶やかな俺だけの宝物だ。


二人で宴席のキャンドルを灯すたびに、ほのかな灯りに照らされる深雪の優しい微笑みに見とれてしまう。


(こうして一生惚れて惚れなおして。ずっとずっと幸せで)


新郎友人でスピーチした湊がちょっとキョドっていて二人で笑った。


「見るたびに別人なんだけど!」

「ふふん。俺も驚いたんだ。お前も驚け!俺の嫁さん、何を着ても綺麗だろ?」

「いやいや。怪人二十面相?別人過ぎてあやしいだろ」

「古いよ、おじさん。女の顔はひとつじゃないよ?」

「何で疑問文なんだよ!それに、その言葉いつの時代だよ?」

呆れたように突っ込む湊に、俺は心底楽しくて声をあげて笑った。

「なんでそんなに違うの?」は実話です。

企画最終日に間に合ってほっとしました。

読んでいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] ごきげんよう、こちらの物語も楽しく拝読させて頂きました。 「あやしい」というより不思議な魅力を持つ、可愛らしい深雪さんですもの、律さんもそりゃあ魅力を感じずにはいられませんよね。律さんのプロ…
[良い点] こういう女性のあやしさも素敵ですね♪ 二十面相って言い方だとちょっとイメージが悪いですが^^; [一言] 企画より拝読いたしました。 一直線で幸せいっぱいで、なんだかほんわかしました。 …
[一言] 素敵な女性ですね~♪ こんな素敵な女性がいたら、いろんな服装を楽しんで貰うために、仕事に熱が入りそうです。 けれど、素顔が一番綺麗と言える主人公も素敵だなぁと思いました♪♪
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