04.ギルド
「魔力指数……15です」
「うわ、いっきに上がりましたね……」
「そうですね。レベル1の時点でこれだけの魔石を使えば、それくらい、いっちゃいますね」
俺は本当に大丈夫か? と疑心暗鬼であったが、父はそういった疑いの感情は乏しいようだ。
とりあえずやってみて、それから考えれば良いという考えのようだ。
父は魔石の半分以上を俺に使わせてくれたため、俺もレベル16まで上がってしまったようだ。
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【ハルオ】
Lv15
攻撃:55
防御:40
魔力:52
魔耐:42
敏捷:43
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【アオイ】
Lv16
攻撃:48
防御:45
魔力:56
魔耐:52
敏捷:58
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おかげで、本日、二度目のユシアとの手繋ぎが発生し、気力の方は大幅に目減りした。
しかし、不思議な感覚だ。
魔力を得ると、薄皮一枚で包まれているような、そんな気分になる。
「レベルも上がったところで一つ提案です!」
「はい!」
ユシアが場を切り替えるようにハキハキと言うため、俺もそれに釣られて珍しく元気に返事してしまう。
「お二人、もしよかったら私達と一緒にギルドでクエストに挑戦してみませんか?」
「お……?」
ユシアは続ける。
「まず簡単にギルドの仕組みを説明しますね。ギルドには個人や国、様々なところから主にモンスターの討伐依頼を受けて、それを冒険者に発注するという仕組みです」
どこぞの別ゲームみたいな仕組みだ。
「あんまり未開地を開拓とか、そういうのはないから、やっていることは冒険者というよりは、守護者って感じなんだけどね」
「なるほどです」
父は真剣に聞いている。
「そうかもですね。それで、冒険者はクエストを受注して、成功報酬で魔石などを貰い、お金に換えて生活しているというわけです」
生活するためか……
「ただお二人は、お金は十分に持っていますよね……だから、もしよかったらでいいです……正直、命懸けの仕事なので、割には合わないかもしれません……」
ユシアは眉を八の字にするような表情で言う。
「アオイ、どうする?」
父が俺に確認する。
「うーん……やろうか」
現状、他に何かやりたいことがあるわけでもないのであった。
「そうだな」
父も同意する。
この謎のフィールドでの生き方を学ぶ上では、この上ないチャンスだ。
危機に瀕したら、最悪、逃げればいいわけだし。
「よかったです! お二人がいたらとても心強いです」
「……」
目的はそれだけじゃなさそうだが、利害関係は一致しているかなと思う。
「ちなみに唐突なのですが、やはりこの世界には魔王とかがいるのでしょうか?」
父が思い付いたように尋ねる。
「ま、魔王ですか!?」
ユシアはちょっと驚いたように声を上げる。
「そ、そうですよねー、いないですよね、そんなの」
「いや、いるにはいるんですけど……」
「えっ!? いるんですか?」
父は聞き返す。
「は、はい……」
だが、ユシアは少し気まずそうにしている。
ユシアは困ったような表情で、セナの方を見る。
セナはセナで苦笑いのような微妙な表情だ。
「えーと、いるにはいるんですけど、クエストの討伐対象になるようなことはないと思います……もしそうなったら一大事というか何というか……」
「なるほど、そうなんですね……」
父はその微妙な表情を追及することはなく、一旦、納得する。
「そ、それじゃあ、明日、早速、クエストに行ってみましょうか」
「OKです!」
ユシアの提案に父が同意する。
「よかったです。お願いしますね。今日はとりあえず宿を探しますか? もしよければ適当なところを紹介しますが……」
「そうですね。お願いします。何から何まですみません」
「いえいえ、これくらいどうってことないですよ」
ユシアはニコリと微笑む。
「あ、あとできれば、服を買った方がいいです。この格好だと、この世界では目立ち過ぎるので……」
セナがそんなことを提案する。
「確かにセナの言う通りだね。宿に行く前に寄っていきましょうか」
「ありがとうございます!」
「それじゃあ、手続き等あるので、少し待っていてもらっていいですか? 後程、ロビーにて落ち合いましょう」
「了解です」
◇◇◇
不思議な少年二人が部屋を出ると、少し疲れたような様子のセナにユシアが尋ねる。
「セナ、どうしたの? なんかいつになく様子が変じゃない?」
「えっ、そ、そうですか……?」
セナは目を逸らすように言う。
「むぅ、なにか隠してるなー?」
ユシアはじとっとセナを見つめる。
「い、いや、彼らの素性が怪しいと思っただけです」
「それだけかな? でもまぁ、確かにレベル1であんなに強いなんて、これ以上、強くなったら本当に手がつけられなくなるかも……」
「そうです、それです!」
「とりあえずはさ、様子見しようよ……クエストに誘ったのはそのためでもあるんだし……」
「……そうですね」