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ぶきっちょ親子は異界の地にてクエスト手伝いで生計を立てる  作者: 広路なゆる


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24.ナバススの森3

「いるならいると言ってくださいよ、現地人……こちとらモンスターワールドに来ちゃったと思ってめっちゃサバイバルしちゃってたじゃないですか!?」


 メグが若干、不平感を滲ませるように言う。


「要するに偶然、この森に迷い混んでしまい、モンスターに襲われるから撃退していたということですね?」


 セナが確認する。


「そうですそうです。危うく、もう少しで野獣化しかけたよ」


 メグは額の汗を拭うような仕草をしながら答える。


「とりあえず人族の街を紹介しましょう。そこを拠点に活動できるように……クラクスマリナ以外だったらどこがいいかな……」


 ユシアはメグとクロに俺達とは別の街を紹介してくれるようであった。


「街!? お風呂とかあるんですか? あるんですよね? あ、でもお金がないかも……」


 メグがテンション高めに訊いた後、急激にテンションを下げる。


「お風呂は勿論、ありますよ。お金はネオカが使えます……」


「「やったぁああ!」」


 メグとクロは抱き合いながら喜ぶ。お風呂があるということへの感激の余り、ネオカが使えるという奇妙さには一切、気付いていないようだ。


「魔王にはどう伝えますか?」


 セナが確認する。


「うーん、魔王には密猟者を発見したので人族側で処罰すると伝えよっか」


 ユシアが胸の前で、左の手の平に、右手の握り拳をぽんと乗せる所作をしながら言う。


「ちょっと待て、今なんと?」


「え? 密猟者扱いすると……申し訳ないけど……」


「いや、そこじゃなくて魔王って何だよ!?」


「あ、えーと……話すと長くなるので……」


「いるんだね? 魔王が!?」


「えーと、いますけど……」


「どこに!? どこにいるんですか!?」


「……魔王城の方に」


 ここにも……


 とは、言わないでおこう。


「うおぉぉお! サバイバルゲーからの唐突なファンタジー来たー!! 俄然、やる気出てきたわ」


 メグは急激にハイになっていく。


「あ、いや、魔王は倒しちゃ――」


「魔王を倒して勇者になったるでーー!」


「えぇえ!?」


 ユシアは慌てふためくように両手を前に出し、ガオーのポーズをしている。


「俺達の世界ではそういう設定が王道なんです。ユシアさんが勇者ってことも分かってないですし、テンション上がってるみたいなので、しばらく放っておきましょう」


 父が小声でユシアに告げる。


「あ、はい……」


 ◇


「グギャアアアアア!!」


「!?」


 突然、魔獣らしき咆哮が聞こえる。


 まぁ、ここは魔獣がうようよいるという森……魔獣がいるというのはむしろ自然なことだ。


「あの鳴き声は!?」


「おいでなさったな! イノシシ丸!」


 父の疑問に、メグがイノシシ丸という固有名詞で答える。


「あれは……Bランク相当のヤヴァシシですね」


 セナが冷静に正式名称を教えてくれる。


「今日は非常に気分がいいから、ぶっ倒してあげよう」


 メグがニヤリと口元を弛めながら言う。


「え? 狩っちゃっていいんでしたっけ?」


 父が慌てて、セナに確認する。


「まぁ、相手はモンスターですし、最後の一体くらいなら、いいんじゃないですか……」


 そういう感じですか。


「皆様、手出しは無用です! 我々が狩りますので……!」


 メグが意気揚々と言う。


「大丈夫かな……」


「危険になれば私が……」


 父とセナのやり取りが聞こえる。


 なら、まぁ、大丈夫かな。


「グギャアアア!!」


「!!」


 ヤヴァシシが空気を読まずに、メグに猛進する。


「メグっ!!」


 クロが叫ぶ。


「ふっふっふ……気が早いね、イノシシ丸くん」


 空中に逃れ、宙返りするような態勢で、メグがヤヴァシシを挑発する。


 速い……! 攻撃されてから回避に移るまでの速度は並外れたものであった。

 ステルス・アーマーの性能の多くを敏捷性(アジリティ)に割いているのだろう。


 メグは、空中で、そのまま右腕をヤヴァシシに向ける。


「くっらえぇ!!」


 ユナイトにおける人気武器とも言えるアサルトライフルをモデルにした機関銃で、弾丸のシャワーをヤヴァシシに浴びせる。


 クロも地上から同様の攻撃で援護する。


「ギイャアアア」


 ヤヴァシシが喚くよう鳴き声をあげる。


「やりぃ!!」


 メグが着地の態勢に入りながら指をパチンと鳴らす。


「浅い……!」


「えっ……!」


「ギャイイイイ!!」


 ヤヴァシシは怒り狂うようにメグに突進する。


「やば……!」


 メグは攻撃を着地に合わせられて一瞬、硬直する。


「メグぅうう!!」


 クロが叫ぶ。


「[氷壁]」


 メグとヤヴァシシの間に突如、分厚い氷の壁が出現する。


「グプンっ!!」


 ヤヴァシシは分厚い氷の壁に激突し、動きを止める。


「何これ……魔法……みたい……」


 クロが呆然としながら呟く。


「魔法です」


 セナが端的に回答する。


「セナさん、ナイスです!」


 そう言う父はヤヴァシシをぶん殴る。


「ギャブァアアア!!」


「きゃあああああ!」


 ヤヴァシシの断末魔とメグ、クロが爆発に驚く絶叫が響き渡る。


 ◇


「今回は助けてもらっちゃったけど、普段だったら、あんな奴に遅れは取らないんだから!」


 メグが言う。


「そりゃ、これだけの期間、サバイバルしていれば、疲労も相当なものでしょう……むしろよくあそこまで動けたものです……」


「っ……!」


 父の労いに、メグは予想外の攻撃を受けたような顔をしている。


「だいたいなんで、あんた、あんなブレブレのデカブツを無反動で扱えんのよ……!」


 少し頬を紅潮させ、不貞腐れるように言う。


「まぁ、練習したので……」


「っ……! まぁ、いいわ……」


 メグが釈然としないのも理解できる。


 父の使う大型のミサイルは反動が大きすぎてまともに運用できるプレイヤーなんてそういない。


 当然、練習云々でどうにかできることではない。


 父……ことORUHAさんはステルス・アーマーのスペックの一部を逆噴射に割いて反動を打ち消すことに成功した。


 余力があれば相手に接近し、パンチと同時にそれを行うことで、命中率の低さもカバーしている。


 俺のように<攻撃機能や自由度を制限>したり、<自動化を利用する>といったことをせずともそれを実現するのが父のすごいところだ。


「とりあえずさ、さっさと森を出ない?」


 ユシアが言う。


「こ、この森に外の世界があるのなら、すぐにでも……」


 メグも同意し、森からの脱出を図る。


 父は転移魔法は使えないのか、使わないのかはわからないが、使用を切り出すことはなかった。


 ◇


「魔王さん、少し疑わしそうにしてたけど、最後は二度と現れないようにしてくれればそれでいいって言ってくれました」


 ユシアが報告してくれる。


「そうですか、よかったです」


 父が言う。


 俺と父は今回は同席しなかった。

 父がメグ・クロと一緒にいた方がよいと判断したからだ。


「それじゃ、帰ろっか」


「お風呂だぁああ!」


 ◇


 メグとクロをクラクスマリナから少し離れた<マヤラワ>という街に連れて来た。


 マヤラワはクラクスマリナほど栄えてはいないものの、衣食住に困ることはなさそうだ。


 和やかそうで雰囲気のいい街だ。


「今回はありがとな!」


 メグが照れくさそうに、それでいて少しほっとしたように言う。


「いえいえ」


 父が返す。


 一連の国王オーダーを終え、ようやくクラクスマリナへ帰れると思うと少しホッとした。


 あの街に愛着でも沸いてきているのだろうかと不思議な気持ちになる。



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【所持金】

 3,091,532ネオカ

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【作者の別作品】

本作よりダークな雰囲気の作品ですがおすすめです。
<部長!そのスキルをいただきます!>
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