23.ナバススの森2
「……いた」
ユシアが小さな声で知らせてくれる。
森の木々の隙間から、二人の人間を確認する。
どちらかと言えば、少数派である女性二人組のペアであった。
「あ、あの人たちはメグ・クロペアだな……」
父が言う。
「知ってるの?」
「配信で見たことある。第二世代の勇と言われているな」
父、結構、配信とかも見てるのか……?
最初のゲーム説明の際に、一度見たことがあるが、二人とも小柄で女性らしく割と可愛らしい色の迷彩服に身を包んでいた。
一見、カラフルな色はカモフラージュを目的とする迷彩に合わないように思われるが、ハンミョウという昆虫は、虹色のような美しい体色をしているが、特定の条件下で非常に視認しにくくなるらしい。
そう考えると合理的と言えなくもない。しかし、あの人達がそれを理解した上で、あの服を選択しているのかどうかはわからないが、第二世代の勇と呼ばれるということは、実力が低いとは考えにくい。
「警戒してますね」
セナの言う通り、向こうも……かなり警戒しているようで、身を屈めて、見つかりにくくしつつ、背中同士で向き合いながら、すぐに動ける体制を取っている。
だが、メグ・クロペアがこちらに気付いている様子はない。
正直言って、この状況はユナイトにおいて、かなり有利な状況だ。
ユナイトは敵より早く相手に気付き、先制攻撃を叩き込むのが主流のゲーム性だからだ。
「さて、どうする?」
俺が確認すると、父は言う。
「アオイ、プロテクト、お願いしますぜ!」
「あー……はいはい」
父は彼女らの前に歩み出る。
他人任せだな! と思いつつ、保険も掛けずに勇み出るだけの阿呆ではなくてよかったとも思う。
◇
「どうもこんにちは! 少々、お話よろしいでしょうか」
「っ!?」
メグ・クロペアは身構える。
至近距離で見ることで二人それぞれの特徴がわかる。
メグは金髪のショートヘアで、元々なのかカラーコンタクトなのか、はたまた俺の知らないユナイトの装飾機能なのかは、わからないが目が緑色になっている。日本人顔なので外国人ではなさそうだ。
クロは黒髪のショートヘアだ。目の色も黒っぽいが、どちらかと言うとこちらの女性の方が西洋風の鼻が高く彫りの深い顔面をされている。
「対話っ!? とか言って、騙し討ちするんじゃないよね?」
メグが険しい表情で言う。
「……だけど、メグ、向こう、先制のチャンスを潰してるし……本当かも……」
クロは少し弱気な雰囲気だ。
「……確かに……」
メグは釈然としないながらも納得せざるを得ないといった様子だ。
「まぁ、話だけでも聞いてください」
「わかった……」
メグが了承する。
「それでは、まずこちらのメンバーの紹介から……出て来てください」
「あ……? えっ、出るの? 私達……」
「そうみたいですね」
陰で待機していたユシアとセナ、そして俺がそそくさと出ていく。
「どうも……あはは……」
ユシアは相手が女性であったからか、女性特有の気まずさがあるのか、苦笑い気味に微笑んでいる。
「四人か……って……え?」
メグとクロは数的不利で状況が芳しくないことと、プレイヤーでない二人が現れたことに困惑しているようであった。
「こちらの二人は現地の方々です」
「現地……? え……人間……っていたんだ……」




