22.ナバススの森
「二人の人って、もしかしてアオイ達の友人さん?」
ナバススの森に入ると、ユシアがそんなことを言う。
「友人って表現が適切かはわからないですが、その可能性が高いですね」
父が答える。
「きっとそうですよね……」
ユシア達からすれば迷惑な話だ。
どこの誰ともわからない不審な者達のために、人族の問題として、こんなところに駆り出されているのだから……
「ユシア……なんか……ごめんなさい」
俺は申し訳ない気持ちを素直にユシアに伝えた。
「アオイのせいじゃないじゃん。大丈夫だよ」
ユシアは本当に全然気にしていない様子でそう言う。
なるべく、この人のためになれたらと思ってしまう自分がいる。
「大丈夫ではあるんだけど……でも、どうしたものか……ナバススの森にいるったって、この森、結構広いしなー……」
「無暗に歩き回ると、モンスターに襲われてしまいますね。一体や二体狩ったところで、とやかくは言われないでしょうが、流石に二桁でもいけば、あなた達は何しに来たんですか? と言われてしまいそうです」
ユシアの言葉に、セナが続く。
確かにそうかもしれないが、だとしたら、こんな森を調査しろという獣族サイドもなかなか無茶振りをしてくれるなと思う。
だが、一つ、アイデアがあった。
「相手がプレイヤーであると仮定すれば、策がないこともないです」
「あ、アオイ、もしかしてあれを使うのか?」
父も同じ事を考えていたようだ。
「そう、索敵だ」
「索敵……ですか?」
セナの確認に、別のことを考えていたはずの父が答える。
「索敵はユナイトに備えられているアクションで、近くに敵がいれば、報せてくれます。いなければ最も近い敵の方向を教えてくれます」
「……それは便利ですね」
「ただし、一回使うとしばらく使えませんが……」
「なるほどです」
「では、早速、使ってみましょうか」
父は言葉通り、索敵を使用した。
索敵のエフェクトである自分を中心とした波紋効果が発生する。
「よかった。ちゃんと使えるみたいです」
そして空間に矢印が示される。
「こっちです!」
◇
索敵の指した方向に、ひたすら歩いてきた。
相手が移動している可能性もあるが今はひとまず唯一の指針に頼るしかない。
「そろそろ次の索敵ができそうです」
父が言う。
先ほどと同じように波紋のエフェクトが発生する。
前回と異なる結果となる。波紋が赤くなり、波が戻ってくるようなエフェクトが発生したのである。
「おっ、近くにプレイヤーがいそうです!」
父がテンション高めに言う。
よし……! と俺も思うが、しかし……
「でも見当たらないですね……すみません、近くというのが実際、どれくらいなのかはちょっとわからないです」
自分の策が不十分であったことを詫びる。
「ふっふっふ……」
ユシアがわざとらしい笑い声を口にする。
「ど、どうしたんですか?」
父が苦笑い気味に聞いてあげる。
「君達……ここにいるのは誰かね?」
ユシアが目を瞑り、口元をニヤリとさせながら、自分の胸に手の平をあてる。
少しだけ意地の悪い答えを返してみたくなる。
「……魔王さまです」
「お願い! お願いだから勇者って言って!」
予想通りというか……アセアセとした表情が返ってきて、自分で言っておいて、何だか少し申し訳ない気持ちになる。
「あ、アオイってそういうこと言うタイプなのー?」
「……」
言われてみて、自分でも少し驚いた。
「うむうむ……いいじゃないか」
父は何か感慨深そうに頷いている。
「ご、ごめん……」
「ううん、いいよ! パーティーなら冗談くらい言い合えないとね!」
「……あ、ありがとう」
パーティーと言ってくれたことが少し嬉しかったことは、いじられそうだから黙っておこう。
「話戻すけど、私、二キロくらいなら探れるよ」
例の<魔覚>という奴か。
二キロというのが、どれ程すごいことなのかはよくわかりませんが、とても便利です。
ユシアは目を瞑り、少し眉間にしわを寄せて、「んー」と小さく唸っている。
「お! ……こっちかな?」
俺達はユシアの指す方向に進む。




