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くろうさ  作者: 雪麗。
7/9

お出かけ (2)

母の買い物は十分程度で終わらせる事ができた。

よし!

私にとってのメインの店舗、三階にある手芸店に向かう。広い上に品揃えが良くて見ているだけでも楽しめる。


店に着いて小さなカゴを手に取る。

弾みでくろうさに当たったらしく「ふぐっ」と小さな声が漏れ聞こえた。

ご、ごめん!

言葉の代わりにポケットの上から撫でたけれど…伝わったかな?


さてと。奥から見て行こう。

ストールを編んでみたいと思っていたのもあり、カラフルな毛糸が並んでいる棚の前で足を止めた。

そこで赤い毛糸を何玉かカゴに入れ、その場を離れようとした時に明るい灰色の毛糸が目についた。

綺麗な色。

思わず手に取った。

「それがいい」

ぼそっと聞こえたくろうさの声に「これにしよう」と独り言にも聞こえる返事をし、何に使うかなどを深く考えずにその毛糸を買う事にした。


毛糸のコーナーを抜けると布のコーナーに入った。

ミシンを使って色々と作れるのなら是非とも布も欲しい所だけれど、生憎ミシンは苦手なので買ったとしても使い道がなかなかない。

柄や生地にときめきながらも通り抜ける。


その先にリボンがあった。

今の所、必要性はないけれど幼い頃は憧れたなという気持ちが湧いてきて、くろうさにも使えるかなと理由をつけて光を含んだようなオーガンジーの細いリボンを何色か1メートルずつ買う事にした。


そこでタイミングよく玲から電話があった。

玲の用は済んだらしく、こっちに来てくれるとの事。

あまり待たせてしまうのも悪いので、最後にレジ付近の棚を見る事にした。


もう、たまらない。

可愛い、綺麗、キラキラ、わくわく。

色とりどりのビーズやラインストーン。

一つ一つ見ているといつの間にか玲が隣にいた。

「ごめん、気が付かなかった。あと少しだけ見てもいい?」

「ゆっくり見ていいよ。何か作るのか?」

「カゴの中のは、うん。今見てるのはただ見たいだけ」

「なんだそれ」

ははっと笑った玲に安心して再び棚に目をやる。


一番気に入ったのがブルー系と書かれているアンティーク調のラインストーン。

様々な形や大きさのアソートで、少しくすんだような古ぼけた感じが色味を深くさせていた。

コルクで蓋をされた小さな瓶に詰められている姿がまるで砂浜に流れ着いた海からの贈り物のようで。

これも、と。

ほとんど衝動のままにカゴに入れてレジに向かった。



「沢山買ったな」

「こんなに買う予定はなかったんだけどね」

鞄に入りきらなかった荷物を車の後部座席に乗せようとした時に不意によろけてしまい、鞄を押し潰してしまう格好となってしまった。

「へぐっ」

ああ、二度もやってしまった。本当にごめんなさい。

「大丈夫か?」

玲は私から出た声と思ったよう。

「うん、ちょっとよろけて…」

くろうさにご褒美が必要だなと考えつつ、来た時と同様に喋りながら帰路に就く。


「今日はありがとう」

「おー!またな」

家の前まで送ってくれた玲に手を振り見送った。

今度、何かお礼をしなきゃな。

ごそごそと動き始めたくろうさに「もう少し待って」と声をかけて玄関に入った。


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