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くろうさ  作者: 雪麗。
4/9

テレビ

こちらに来てから(?)三日目ともなれば私の部屋に慣れてきたようで、くろうさは色んな物に興味を持ちだした。


そして今はテレビのリモコンで遊んでいる。ボタンを押すのが楽しいらしい。

くろうさが来た日からバタバタしていて自分の部屋ではテレビは観ていなかったな。

「そんなに楽しい?」

「ふんっ、ふんっ」

返事より押す事が大事なようだ。


テレビが点いた。

音量が小さく、くろうさはボタンに夢中でテレビが点いた事に気付いていない。

「あっ、くろうさちょっ…」

音量レベルがぐんと上がり、言い切る前にテレビから爆音が流れる。バラエティーのようで、拍手やざわついた音が耳をつんざく。

くろうさはビクリとして棒立ちになった後、ピャッと私にしがみついてきた。

急いで音量を元に戻すと、くろうさもホッとしたようだった。


「その黒いのってテレビだったんだね」

んんっ?テレビを知らない?

「これがテレビって知らなかった?」

「ぼくが知ってるテレビは回すやつ」

回すやつ…?

「えっ、あの画面の横に付いてる?昔の…」

「そうだよ」

まさかの昔のテレビ。くろうさって一体。

「まぁ、あんまり記憶はないんだけど。それよりこれの使い方教えてよ」


くろうさの記憶って他にどんな記憶があるのだろう?

疑問が言葉になる前に急かされたので、とりあえずくろうさにテレビとリモコンの使い方を教えた。



それからというもの、頻繁にテレビを点けて観ている。

お気に入りは教育番組と恋愛ドラマのようだ。

編みぐるみが恋愛ドラマ…。


ある時。

恋愛ドラマの一番盛り上がったシーン特集というものがあったらしく、そこで覚えたシーンを再現したがった。

「それをぼくの前まで走らせて」

携帯?

「わかった」

携帯をくろうさの前まで走らせる。まるで車のように。

…これはもしかして。

「ぼくはしにません!…違う!もう一回」

普通に言ってしまったな。

そうして二回目には成功したものの、一回どころではない回数を繰り返して私はへとへとになった。


「伊那の顔が。ぷぅークスクス」

「くろうさ」

お前がやりたがったおかげだよ!と指でくろうさの顔をつまんで楕円形や三角形にしてやった。

疲れが出やすい年頃なんです!


「伊那、お前って言葉」

そこで途切れさせるものだから、良くなかったかと反省し始めたらくろうさは続けた。

「親しい間柄だからこそ使えるんだって。先生が言ってた」

語尾に音符が付いたように、嬉しそうに言われて面食らった。


「だからさ」

「うん?」

「さっきの続きね」

はい!?

机に突っ伏して聞こえないフリをした。

くろうさはさっきの続きはできないと察知すると、私を何かが原因で倒れた恋人役に見立てて他のドラマのシーンを一人で再現し始めた。



くろうさの声を聞きながらいつの間にか眠っていた私は、夢の中までくろうさのドラマの再現に付き合わされていた―――。

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