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その日のはじまり
祖母が目の前にいて、私は編み物を教えてもらっていた。
私は今とは違った年齢で小学生だった。
昔の記憶が夢になるなんて。祖母が夢に出てくるのも久々だ。
「ん―――…」
怠い体を起こして目覚めとする。
ぼんやりとした頭で、もういない祖母を懐かしみながら数日前を思い出していた。
三十五歳が来ようとしているのに勤めていた会社を辞めた。
理由は【何かが違う】たったそれだけのこと。
ある時ふと感じたものは日増しに大きくなって、私を潰しにかかった。
人によれば「甘い事を」とか「その歳で会社を辞めるなんて馬鹿か」と思うだろう。
まぁ実際に陰口を言ったり直接言ってくる人もいた。
それでも私には留まる選択はできなかった。